2010/2/13 千葉国際クロスカントリー
興譲館高現役とOBが決意の独走@
ジュニア
菅は初めての試み。“一皮むける”ために
全国大会では初めて見せる走りだった。ジュニア5000mは全国高校駅伝1区区間賞で母校の優勝に貢献した菅華都紀(興譲館高2年)が優勝。スタートから前に出ると後続と競ることなく自分のリズムを刻み、2位の小崎裕里子(成田高2年)に15秒差をつけた。「先行逃げ切りのレースをしたのは初めて」だという。
「潰れることも覚悟して最初から出ました。過去に新谷(仁美)先輩がそういうレースをされていたのですが、今年1年はそういうレースをしないことには一皮むけた選手になれない。ついて行って終盤まとめるレースでは一皮むけたことにならない。先生ともそう話してレースに臨みました。後ろは気にせず自分のレースにだけ集中して、どこまでもつのかを考えていました。今日は世界クロカン選考も、優勝も、タイムも、オマケみたいなものでした」
クロスカントリーはトラックやロードに比べ、記録を気にしなくても良い。アップダウンや不整地の路面を走ることで、筋力やバランス感覚を身につけるのが目的だが、今回の菅のように1人で押していく感覚を養い、トラックやロードにつなげることに利用することもできる。
だが、菅自身は押していくペース感覚を得ようと臨んだわけではなく、「失敗覚悟」で飛び出したのだという。
「今回は後半に失速しても、次につながる失敗になったはずです。(結果的に)先行逃げ切りはこういうもの、という感覚に手応えを得られましたが、これがトラックやロードになるとまた別の感覚になると思います。その辺は学校に帰って練習したいと思います」
2011年の目標はインターハイの3000m優勝と、全国高校駅伝での2連覇だという。チームを引っ張った赤松姉妹は卒業する(妹の真弘がインターハイ1500m優勝&3000m2位、姉の弘佳が全国高校駅伝4区区間賞)。菅のこの日の独走は、新チームを引っ張っていく覚悟の表れでもあった。
興譲館高現役とOBが決意の独走A
シニア
新谷は高校以来の独走。再起へはずみ
久しぶりに新谷仁美(豊田自動織機)のすごさを見せつけられた。シニア女子8000mの新谷はスタートから飛び出し、2位の田中華絵(立命大3年)に40秒もの大差をつけた。「皆さんご存じのように(独走したのは)高3の全国高校駅伝1区以来です」と、笑顔で語った。
指導を委託されている佐倉アスリート倶楽部の小出義雄代表の指示だったというが、本人に何らかの裏付けがなければあそこまでの独走はできない。
「単純に練習ができていました。ウチのチームからマラソンに何人か出場しますが、それについて距離を走っていました。良い練習ができていたと思います」
小出代表は「練習ができたというより積極的だった。前に出ていたからね」と付け加える。独走については「最初から飛ばせるコンディショニングをしましたから。最初に出た方が勝ちかなと思って、軽めにつくってきました」と言う。
新谷にとっては再起のアピールでもあった。
昨年前半は不調が続き、自分自身を精神的に追い込んでしまった。走りたい気持ちがなくなり、7月に実家に戻った。
「3カ月間引きこもりでした。特に最初の2カ月は携帯の電源も入れませんでした」
立ち直りのきっかけは、「一番の親友」という谷奈美(ユニバーサルエンターテインメント)との交流だった。
「私のことをすごく心配してくれて、支えになってくれました。マラソンを目指すとかでなく、彼女と一緒に頑張ろうという気持ちになれた」
10月中旬に佐倉に戻ると、12月の全日本実業団対抗女子駅伝は6区(6.595km)で区間2位、1月の全国都道府県対抗女子駅伝は9区(10km)で区間3位。好走の要因を問われると「あの3カ月があったから」と明るく答えた。
「気持ちも前向きになれましたし、初心に戻ることができました。何も飾らなくていいと思うことができ、気持ちが楽になりました」
佐倉に戻った10月中旬に、体重は54kgあったという。ベスト体重は現在の43.5kg。わずか2カ月で駅伝で好走するまでに戻し、4カ月後には今回の独走である。新谷の潜在能力の高さを示している。
小出代表は「まだ5000mが遅いけど15分10秒を切ったらまだまだ伸びるよ」と太鼓判を押す。「新谷が1万mもつようになって、ハーフを走れるようになって、マラソンまで伸ばすことができたら2時間16分で走るよ」と。
新谷自身は目の前の目標を確実にクリアしていきたいと考えている。
「(4月の)織田記念の5000mで自己新を出せるようにしたい。5000mをしっかり走って次の目標に向かいたい」
最終的な目標がマラソンと考えているのは新谷も同じ。次のマラソンがいつになるかという問いに、次のような答え方をした。
「まだ気持ちが決まっていないので話せませんが、近々ご報告できるようにしたい。オリンピックの前にはきっと」
オリンピックの前、というのは五輪選考レースが始まる前という意味だろうか?
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