2010/4/3 東京六大学
MVPはトラックが110 mH1年生Vの矢澤
フィールドが棒高跳大会新の笹瀬
ジュニア新学生新に意欲

 今大会唯一の大会新が誕生したのが棒高跳。笹瀬弘樹(早大3年)が跳び始めた高さの5m00で優勝を決めると5m20も1回でクリア。5m30も2回目に成功した。気温が15℃前後という悪コンディションの影響もあり、5m40には3回とも失敗したが、同じ静岡県出身の佐野浩之(元日本記録保持者)が1990年に出した5m11の大会記録を大きく更新した。
 昨年、5m50を筆頭に5m40以上を4試合で成功させているが、ライバル不在の対校戦で、4月初旬のシーズン初戦としては上々の出だしだろう。
 しかし、笹瀬自身は「最低でも5m40は跳んでおきたかった。30では納得できません」と言う。
「技術的にもよくありません。織田記念と関東インカレまでに立て直して、次のステップに進みたいと思っています」
 オリンピックと世界選手権がない今季は、大きな試みができるシーズンと位置づけている。
 笹瀬の特徴は速い助走速度と強い踏み切りの力。日本のボウルターのなかでは一番遠い位置から踏み切ることができると言われている。
「今年は空中動作に手を加えて、3つめの強みにしたいと考えています」
 3月から早大体操部の朝練習に加わっている。
「体操の動きを棒高跳に取り入れて空中動作に役立てたい。体操的な体力と棒高跳的な体力は違いますが、上手くマッチングさせることはできると思います」
 大きな試みができるシーズンではあるが、学生新記録(5m56)は更新して当たり前という感覚だ。
「5m60の自己新を目標にします。60を跳んだら、先が見えてくるでしょう」

 110 mHは新人の矢沢航(法大1年)が2位に0.21秒差の快勝。向かい風2.4mで14秒31なら、風さえ良ければ14秒20の大会記録はおろか、自身初の13秒台も出ていたかもしれない。
「前半、風にあおられてしまった」と矢沢本人も風の影響は認めているが、だから記録が出せないという考え方はしたくないようだ。昨年のインターハイに14秒09で優勝。そのときも向かい風1.7mで、風さえよければ高校記録(13秒98)は出ていたと言われた。
 だが、秋のシーズンで記録を出すことはできなかった。
「向かい風だからという言い訳は負け犬のすること」
 激しい言葉の裏に、どんな思いが詰まっているのだろうか。
 風に対しては特別な思いがあることを伺わせたが、シーズン初戦という点では手応えも感じていた。
「今日はスピードが出ないなかで無理矢理動かしました。大会前は左脚にダメージが出ていて、どうにか治って出場することができたんです。その状況で14秒3台はよかったと思います。シーズン初めの試合で14秒3台は出したことがありません」
 今季の最大目標は7月の世界ジュニア。前回の世界ジュニアは準決勝で4位と決勝まであと一歩だった。「走高跳の戸邊(直人・筑波大)と“一緒に優勝しよう”と言っ合っている」という。
 また、「大学ではスプリントも積極的にやってみたい」と、100 m10秒59のスピードにさらに研きをかける。スプリント種目への出場チャンスは、高校時代よりも多くなるかもしれない。
 そして、記録への思いも強い。110 mYHで中学記録を、110 mHでは高1最高と高2最高を更新してきたが、前述のように高校記録は破ることができなかった。
「ジュニア日本記録は今年しか資格がありません。13秒88を破りたい」
 その先には「大学の4年間で世界選手権やオリンピックに出ておきたい」という目標も見えてきている。


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