2010/5/3 静岡国際
海老原が自己2番目の58m59
昨年のアジア選手権優勝の劉に雪辱

 女子やり投は海老原有希(スズキ浜松アスリートクラブ)が58m59で、中国の劉春花LlU Chunhuaを抑えた。
「58mは行きましたが、気温や風など条件が良かったから60mを投げたかったですね」
 専門誌に“スマイリー”という見出しを付けられたこともある海老原有希(スズキ浜松アスリートクラブ)。地元優勝に笑みは絶やさなかったが、会心の笑顔が見られたわけでもない。
「6本のなかで投げの修正ができませんでした。気持ちが先行して、上体が突っ込みすぎ。それと今日は、思ったよりも助走のスピードが出てしまっていました。自分ではわからなかったのですが、コーチからそう指摘されました」

 だが、客観的に見れば良かった点の方が多い。
 58m59は昨年出した60m84(日本歴代2位)に次ぐ自己2番目の記録で、4年前のアジア大会で銅メダルを取ったときの57m47を上回った。
 また、勝負という点でも評価できる。今回2位の劉は昨年のアジア選手権に57m93で優勝した選手。3位だった海老原にとってはアジア選手権の雪辱となり、アジア大会の前哨戦を制したことにもなる。

 海老原自身が「収穫でした」と言うのは、3回目までに57m台(2回目に57m22)を出したこと。
「昨年の世界選手権で、3投までに記録を残さないと勝負にならないと痛感しました(54m81で予選落ち)。前半の3回までに60mを投げることを今季を通しての目標としています。1回目に56m台、2回目に57m台を投げられたのは良かったと思います。ただ、“よし、もうちょっと”と思った3投目に、力んで55m台に終わったことは反省点ですね」
 それでも、5回目に58m59と記録を伸ばしたのだから、第三者からの評価は高くなる。

 昨年は60mを投げた後にケガをしたこともあり、シーズンセカンド記録が55m98にとどまっていた。元からやり投は、ベストを出したときの技術を再現するのが難しい種目。村上幸史(スズキ浜松アスリートクラブ)も80m台の技術が安定し始めたのは、29歳となった昨年からだった。海老原も昨年、ケガをする前から、シーズン序盤に出した60mのときの技術を安定して再現することが課題だと話していた。
 だが、安定してベストの技術を再現させるコツが、これだというものがあるわけではない。選手個々が経験を通じてつかむしかないのだが、海老原はまだ、それを言葉にできる段階には来ていないようだ。
 そういう状況でも自己2番目の記録でアジア選手権優勝者を破った。本人が言う以上の“収穫”があった大会だったのではないか。


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