2010/11/3 東日本実業団女子駅伝
中距離選手の特徴生かし吉川が最長区間で区間賞
「ラスト何百mの勝負となったら、誰にも負けたくありませんでした」

 1500mで日本選手権5連勝中の吉川美香(パナソニック)が、自身初の区間賞を、12.2kmの長距離区間で獲得した。中距離選手の特性を生かした区間賞だったといえる。
「2区の2位とか多く取ってきましたが、もう2位は取りたくないと思っていました。今日は挑戦者のつもりで臨みましたが、10km過ぎから区間賞も狙えると思えるくらいに体が動いてくれました」

 タスキを受けた位置がよかった。トップで中継した第一生命とは36秒と差があったが、4番手でホクレンの7秒前にスタート。赤羽有紀子(ホクレン)に間もなく追いつかれたが、「とらえられたら一緒に行くと決めていた」と言うとおり、赤羽の後ろにピタリとつけた。中距離選手が12kmを1人で引っ張るのは大変だが、前に人がいればペースをつくりやすい。
 中間点前にユニバーサルエンターテインメントとスターツに追いつくと、4人の集団のなかできっちりとレースを進めた。赤羽が引っ張るのが苦しくなってからは、堀江知佳(ユニバーサルエンターテインメント)の後ろにつけて、先頭の第一生命・尾崎好美を追い上げた。

 11km過ぎで吸収された尾崎が残り300 mを切って意地のスパートを見せたが、吉川は慌てずに追い上げて中継所手前で逆転した。
「初めての距離で不安もありましたがラスト2kmまで余裕もあった。ラスト何百mの勝負となったら、誰にも負けたくありませんでした」
 中距離選手にとってもラスト勝負は意地でも負けられなかった。
 赤羽が10km手前で集団から後れたこともあり、4区への中継で赤羽に17秒の差をつけ、吉川が39分46秒で区間賞を獲得した。

 中距離選手ではあるが、吉川は以前から長距離への進出に積極的だった。レースで成功してきたとは必ずしも言えないが、5000mやロードの10kmにも出場。今季は7月のヨーロッパ遠征で15分28秒44と4年ぶりの自己新をマークした。
「中距離チームの遠征でしたがお願いして5000mに出させてもらったので、最低でも自己新と思っていました。それで距離への苦手意識が消えたんです。今年は距離を踏む練習がすごく楽しくなっていたんです。晴れやかな気分といいますか、新しい達成感をもって練習ができました。右足首の故障も、今年は1回も出ていません。私もチーム最年長になって、“脱1区”と言いますか、1区を若手に任せて長い区間を絶対に走りたいと思っていたんです」
 長い距離に対してこれまでにない自信をもって臨んでいた吉川だった。

 しかし、11月後半にはアジア大会の1500mに出場する。12.2kmを走った後での1500mに不安はないのだろうか。
「1500m選手といっても私の練習は基本的に長距離で、最後の調整でスピードをやってきました。今回はいつもより長い距離でしたが、距離走のあとでも短い距離を思い切り走るなどして、1日1回必ずスピードを入れてきました。4年前もアジア大会と駅伝に出て、自分で調整はできると思います。国体(成年1500mに4分12秒38で優勝)で距離を踏みながらもスピードが出ることを確認できましたし」
 吉川のスタイルにブレはない。


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