2010/5/15 東日本実業団1日目
2010バージョンの塚原、一歩前進の今季日本最高
                           
10秒30
「レース中も客観視してしまっています」


 昨年は4月末の織田記念から大阪GP、東日本実業団と10秒1台を3連発していた塚原直貴(富士通)。大阪GPは9秒台の記録を持つ外国人選手を抑えたし、緊迫感が乏しい東日本実業団での10秒15も関係者を驚かせた。
 それと比べると今季は初戦の大阪GPが10秒36(±0)、2戦目の東日本実業団が10秒30(±0)にとどまっている。東日本実業団のレース後に、大きな反省点を2つ挙げた。
「1つは早く(上体が)起きてしまったこと。もう5mくらいは前傾を保ちたかった。もう1つは勝負勘、試合勘の部分です。冷静さが残っていて、レース中も客観視してしまっています。内なる情熱を発揮できませんでした」

 これは塚原自身、覚悟していたことでもある。
 2月の短期留学に続き、4月にはほぼ1カ月間、米国フロリダ州のブラウマン・コーチの下で練習を積んだ。
「(昨年挑戦したジャマイカ式など)自分のイメージでやっていましたが、今回は現場で『こうじゃない、こうだ』と指導してもらっています。自分の知識もある。もやもやしたものがなくなって、やるべきことが絞れている。9秒台への“近道”だと思う」
 ただ、2〜3カ月で結果が出る“近道”でないという。シーズンを通して近づいていくことになるという認識だ。シーズンを50歩(100 mは45歩前後だが)に見立て、確実に1歩1歩、進んで行きたいという。
 “冷静に走ってしまった”という反省点は、大阪GPでも話していた。動きを変えようとしている過程では、避けて通れない部分なのかもしれない。
「たがが外れていないんです。加速しているときに“オッ”というような押し出される動きが出てきません。“これとこれを試したい”という方に意識が行ってしまって、自分本来のクセが出ないように押さえ込んでいる。その分、推進力に変えられていません」

 だが、東日本実業団は確実に“次の一歩”になったと感じている。
 大阪GPは「10〜20mは価値があった」と話していた。外国勢に後れをとらなかったからだ。東日本実業団では比較する外国選手はいなかったため、自身の感覚が判断材料になる。
「スタートからの流れでは、大阪GPよりもしっかりと“踏めた”と思います。力を加えられました。そこからの脚の運びもよくなっている」
 だが、東日本実業団をラウンド毎に振り返ったときには、「まだ挟み込みだけ。挟み込みにプラスして踏み込む力を決勝で試したのですが、力がまだ分散している感じです」と、前述とは食い違うコメントとなっている。
 大阪GPよりも良くはなっているが、本当に望んでいるレベルとはまだ、差があるということなのだろう。

 前述のようにレース中“冷静さ”がある部分が、大阪GPと同じ課題として残った。動きを変える過程では仕方がないのかもしれないが、勝負を優先しないといけない日本選手権では“新しい動き”を意識することと“たがを外す”ことと、どちらを優先するのだろう。
「日本選手権までには完成しないと思います。途中経過の段階で出ることになりますが、その状態でも勝つレースは必要です。抑えるべきところはしっかりと抑える。今のところ力が分散してしまって、進む方向に上手く導いていませんが、それがまとまりが出てくれば…。もうワンランクレベルを上げて、予選からしっかりつくって行きます。10秒0台までは上げたいですね」
 塚原のベストは昨年の日本選手権予選で出した10秒09。そのタイムが「動きを整理しながら着実に歩を進めたい」という今季の塚原のバロメーターとなる。


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