2009/8/22 世界選手権8日目
男子4×100 mR新生チームで38秒30
世界選手権最高順位タイの4位


1走・江里口匡史
「自分の想定したレースができた。それができなかったのが100 mの1次予選、2次予選」
「今日は100 mの1次予選から4本目。ベルリンの集大成、まとめの走りでした。納得行く走りができました。悪くない走りでした。予選の前半はピッチを上げすぎて、力を使いすぎましたね。無駄な動きをして力を使ってしまいました。その点今日は、すべての区間で力を出し切るレースができたと思います。スタートから落ち着いて加速して、カーブのトップ過ぎから出口にかけて自分のなかで走りを考えてできました。(実際には違うかもしれないが)イメージとしてはそこからさらに加速して、バトン渡しまで力を使わなくても、スピードを緩めない走りができました。
 外国人選手はカーブをあまり走れていなかったのかもしれません。直線は日本人では力不足で通用しませんが、リレーになれば日本は上位に来る。バトンパスだけでなく、カーブの技術の要素も多く影響しているように思います。カーブのタイムを、直線タイムと差がないようにできれば有利になる。それを今回実感しました。
(4位という結果で1走に自信がもてたか?)色々失敗もして悔しい思いをしています。その世界選手権でつかんだもの、感じたものを持つことができました。次へ生かせると思います。今まで、ここまでの国際経験はありませんでした。ラウンド毎に力を出すため、体が自然と対応する部分を感じることができました。アベレージを上げるのが実力をつけることでもあると思いますし、世界大会にピークを合わせられる選手になりたい。
 今年は日本選手権でと思っていて、その後のユニバーシアードを踏まえて最後に世界選手権がありました。その最後で納得行く走りにまとめられたことは、自分としてはなかなかいいものを得られたと思っています。
(4位という順位は)アメリカが失敗して、4位を確保するという気持ちではなく、3位も考えたレースの結果での4位ですから悔しさも残ります。でも38秒30は冷静に考えれば大阪世界選手権以前なら日本記録ですし、個人の結果を考えたらこのリレーの結果は良いのではないかと思います。4位は悪いことだけではなく、良いこと(評価できる面)もあった。
 今年はアジア選手権もありますし、来年はアジア大会があります。2年後にはまた、世界選手権もある。そこに出られないことのないようにして、2年後には日本選手権でなく世界選手権に合わせられることを自分に求めていかないと、世界では通用しない。世界との差を思い知らされ、ボコボコにされました。次に強くなりたい気持ちが芽生えました。
 外国人選手たちは決勝のアップから、自分らのペースでやっていました。世界選手権だからではなく、そういうリズムでやっているのだと感じました。トップ選手のモチベーションの上げ方の雰囲気も感じることができた。彼らと一緒に走れた自分の映像をもう1回見て、感じるものがあると思う。まずはここで、勝負をかける走りができてよかったと思います。
(北京五輪銅メダルのプレッシャーは)そういうものも考えていましたが、走る直前は自分を前面に押し出して、こういう選手たちの中でどう自分を出せるかを考えていました。走っているときもプレッシャーは感じず、自分らしい走りができました。周りがどう来ても、自分の想定したレースができたと思います。それがまったくできなかったのが、100 mの1次予選、2次予選でした。
(予選から1日で走りが良くなったのは)最年少ですし、高平さん、塚原さんが引っ張ってくれるチームなので、気を遣うことなくやってこられたからでしょう。そう言ってもらえる場面もありましたし。自分のことに集中できる時間が、ものすごくありがたかった。気遣ってもらえなくても、こういう世界を舞台に力を安定して出せるようにしたい。ここの一歩をそのスタートにしたい」

2走・塚原直貴
「江里口の後半も、予選より良かったですね。僕も思いきり出たんで」
「アテネ五輪の4位とは違う1つの収穫です。4人がこの場の雰囲気に飲まれず、役割を果たせたレースだった。(ハイタッチは)チームが1つになる儀式のようなもの。コールルームが別々で4人一緒になって入って来られないので、レーンに入ったところでジェスチャーでお互いを確認して、安心材料にしたりします。江里口も1つ1つ、覚えていってほしいですね。
(江里口にはどんな言葉を?)走れるのか走れないのか、やれるのかやれないのか、と言いました。この2本で江里口は、すごく成長したと思います。
(自分の走りは)良かったんじゃないですかね。外側の選手にもついて行けたし、1走の江里口も、1走はレースの流れを作る意味でとても大事なんですが、それを作れたのは良かったと思いますし。
 僕自身にはまだ余力があります。北京は限界まで行ってしまっていましたが、それだけ成長したのでしょう。ただ、(何か)1本足りないな、という気はしています。
 バトンはもらう方は問題なかったのですが、渡す方は若干、詰まっていましたね。江里口の後半も、予選より良かったですね。僕も思いきり出たんで。
 一抹の不安もありましたが、決勝の舞台に立つことが1つのラインでした。選手が自覚を持っている、4人以外も。過緊張することなくやれました。といっても、直前のみんなの状況を把握できているわけではないんですが。
 そのなかでシーズンベストで走れたことは1つの収穫です。江里口も肩の荷が降りたんじゃないですか。
 チームに希望を持てる予感がしています。あとは個々の走力を伸ばしていくしかない。並大抵のことではありませんが、勝負していくしかない。
(アメリカの予選失格は)ラッキーだと思いました。チャンスを生かしたいと思いましたね。メダルも視野に入れて、外のトリニダードトバゴに食らいついて行けばいいかな、と。イギリス、フランスあたりと勝負だと思っていました。僕のなかでは3番が欲しかったですけどね」

3走・高平慎士
「あの2人が抜けての4位ですから、アテネ五輪よりも希望が持てる4位」
「新生チームでこれだけできたら価値がある。アテネ五輪と同じ4位ですが、あの2人(朝原宣治と末續慎吾)が抜けての4位ですから、アテネ五輪よりも希望が持てる4位です。あのときは僕だけが初代表で、他の人たちはメダルを狙っている雰囲気でした。
 メダルラインはアメリカがいれば37秒台が予想されました。今後はシーズンの入り方として、大阪GPで37秒台を出していくことも必要でしょう。日本でも走って、世界大会でも走って、という戦い方にしたい。
 去年みたいに転がり込んできたチャンスを生かすのでなく、自分たちでつかんでいかないと。去年の銅メダルがまた、80年ぶりとか将来言われることのないようにしたい。
 ベルリンの歴史的な表彰台に立ってみたかったですね。決勝の常連といわず、表彰台の常連になりたい。
 自分の走りとしては、昨日の方が良かったかもしれません。ボルトは意識しないで走れたんですが。
 5レーンというのはめったにもらえないレーンです。朝原さんとメールで、着順通過を意味する“デカQ”通過は気持ちが良い、という話をしました。僕らはラッキー7と言ってるんですが、為末さんの銅メダルも北京五輪も7レーンでした(為末はヘルシンキ。もしかしたらエドモントンも?)それよりも良いレーンをもらえたんですから。
 3走として、直線ではどうにもならない外国選手との差を、江里口も含めて曲線で勝負していかないといけなかったんで。3走はボルトやゲイも出てくる重要区間です。直線よりも、コーナーの良し悪しが(日本の場合は特に)結果に出る。そこでいかに冷静でいられるか。そこが自分の仕事だと思っています。
(1走からの流れは)予定通りでした。江里口は予選よりもよく、この舞台で普通に走ることは難しいですけど、それに近い走りができていたんじゃないかと思います。江里口と藤光は、今後につながる感触を得られたと思う。木村と齋藤は走れなかった悔しさを、これからにつなげてほしい。
 今年はメダルを見ながらファイナルに出るのが目標でした。(今日の結果で)チームとしてベクトルが、ファイナルでどう戦うかに向けられた。大阪世界選手権、北京五輪で盛り上がったですし、テグは時差がないのでリアルタイムで見てくれる人も多いと思う。日本全国の応援をしてもらえるように頑張りたい」

4走・藤光謙司
「朝原さんがやった大事なポジションをやれて嬉しいですし、ずっと走っていきたい」
「両脇が前に出ていたのがわかりました。無理だったかもしれませんが、抜いてやろうと思って走りました。全力を出し切りました。バトンは新生チームなんで、攻めて攻めて行くしかない。予選よりも半歩(半足長)広げました。ギリギリのラインで攻めました。
 バトンを受けたときは、行くしかないと思って、その後のことは正直、あまり覚えていないんです。前を抜けるくらいの走力が欲しいですね。目標は1チームにも抜かれないことでしたから、その点は満足できるんですが。
 頑張ればメダルも狙える位置でした。メダルが見えていたので悔しい気持ちもありますが、今の力を発揮しての4位でしたから、テグ、ロンドンにつながる良いレースだったかなと思います。
(メンバー2人が北京五輪と変わったが)誰が走っても変わらない力を出せたと思うんです。僕も北京五輪前から代表合宿に呼んでもらっていました。4走は一番自信を持っている走順です。高校でも大学でもアンカーでしたし。朝原さんがやった大事なポジションをやれて嬉しいですし、ずっと走っていきたい気持ちが芽生えてきました。
(アメリカの予選失格は)今朝、ホワイトボードに書かれていたのを見て知りました。みんなザワザワしたというか、士気が上がったように思います。
(アメリカがいれば)メダルラインは37秒台になります。その記録を自分たちで出すことが必要。38秒台は安定して出せるようになっているので、今後は個々の走力を上げてバトンにも研きをかけたい」


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