2009/9/29 加納&川越監督記者会見
世界選手権7位入賞から2カ月
加納がニューヨークシティ・マラソン出場を表明


 セカンドウィンドACの加納由理が、川越学監督とともに都内のホテルで会見。11月1日のニューヨークシティ・マラソンへの出場を発表した。会見はニューヨークシティ・マラソンを主催するニューヨークロードランナーズクラブがセッティング。同大会ディレクターのメアリー・ウィッテンバーグ女史もテレビ電話で会見に加わるなど、同マラソンの加納への期待の高さが表れた会見となった。
 記者たちとの一問一答は以下の通り。


「コースもきついので記録的な目標は言えませんが、順位は3番以内に入りたい」(加納)
Q.ニューヨ−ク出場をいつ、どういった理由で決めたのですか。そして、レースでの目標は?
加納 世界選手権の前から決めていました。大事なレースの2カ月後は難しいと思うのが普通ですが、海外のトップ選手は、昨年の北京五輪後のニューヨークにもまた集まっていましたし、当たり前にレースをしています。私もそのなかに入りたかった。コースもきついので記録的な目標は言えませんが、順位は3番以内に入りたい。
Q.世界選手権から帰国後の1カ月間は、練習も含めどう過ごしてきましたか。また、セカンドウィンドACの会員たちとは、どのような接触を持ちましたか。
加納 ベルリン後の2週間は休養し、3週目から体を慣らしながら練習に入っていきました。体を完全にオフにすると戻すのが大変なので、体を休めながらも、次の試合があると頭におきながら休養しました。今は良い感じで練習ができています。10月1日からアルバカーキで高地練習に入りますが、良い練習ができそうです。

 ここで、ウィッテンバーグ女史から国際電話が入る。

「エキサイティングなレースを期待しています」(ウィッテンバーグ女史)
ウィッテンバーグ女史 第40回を迎えるニューヨークシティ・マラソンに加納由理選手を迎えることができ、大変うれしく思います。今まで日本人の優勝者は出ていませんが、近い将来、ニューヨークシティ・マラソンにおいて日本選手が勝者になったり、トップ3に入ることもあると思っています。加納選手はニューヨーク・ロードランナーズ主催のハーフマラソンに3回、10kmロードに2回出場しています。加納選手がニューヨークに戻ってレースをすること、そして大会前の10月27日には誕生日を迎えられることを、我々は喜びたいと思います。新しい時代のニューヨークシティ・マラソンが加納選手とともにスタートいたします。
Q.どんな走りを加納選手に期待していますか。
ウィッテンバーグ女史 ニューヨークシティ・マラソンは最後の最後で、素晴らしいレース展開になることで有名です。タイムというよりも、エキサイティングなレースを期待しています。
Q.外国人選手のために、国際電話で会見に参加することは、よくあることなのですか。
ウィッテンバーグ女史 たまにあることです。我々の期待の表れでもあります。朝の4時45分でこうして答えているのですから(笑)。これから朝練習に行きますけど。
Q.決まっている招待選手を教えてください。
ウィッテンバーグ女史 2008年のボストン・マラソンのトップ2が出場します。それと、ロシアからも2人。ラドクリフはまだサインをしてもらっていませんが、可能性は高いと思っています。

 以上でウィッテンバーグ女史への質疑応答は終了。

「帰国後、どういう顔で教室に行っていいのかわからなかったんですが…」(加納)
Q.先ほどの続きで、セカンドウィンドACの会員とは、ベルリンから帰国後、どういった接触の仕方をしましたか。
加納 8月25日に帰国してすぐに教室に行ったら、すごく歓迎されました。自分の中では嬉しさもありましたが、悔しさもあったので、どういう顔をして行ったらいいのかわからないところもありました。そうしたら、会員さんたちが喜ばれて、温かく迎えてくれたんです。自分の中では納得いかないところもありましたが、周りが喜んでくれる姿を見たら、また、世界を目指して頑張ろうという気持ちになれました。
Q.川越監督は世界選手権を振り返って、どういう印象でしょうか。加納選手に対する評価が変わったところがありますか。
川越監督 選考の時期に決まるのかどうかわからず、メンタル面で少し不安定なところがありました。決まってからも体調がすぐれず、間に合うかな、という状況もありました。途中、貧血になって、最悪に近い値が出てしまっていました。そこから頑張って7位に入ったのですから、すごい集中力だと感じました。東京のように調子の良い状態でトレーニングができていたら、また違ったレース展開ができたかもしれません。順調にトレーニングをすれば、世界でも通用する。世界のレースは駆け引きが重視されて、後半の上がり方が大きい。トラックのようなペースの上げ下げへの対策を考えていかないといけないでしょう。

「月間1200kmを走ったという情報も聞きますが、我々はその半分くらいの量をスピード練習を中心にやっています」(川越監督)
Q.世界選手権から2カ月でマラソン出場が可能なのは?
川越監督 プロ的にビジネスとして頑張っている部分もありますが、セカンドウィンドACは世界の流れと同じで、量よりも質を考えたトレーニングをやっています。月間1200kmを走ったという情報も聞きますが、我々はその半分くらいの量をスピード練習を中心にやっています。ダメージも少ないですし、年間を通してマラソンのトレーニングをしていることも1つの理由です。ここはマラソン、ここはトラック、ここは駅伝と期分けをしてやっているのではありません。(マラソン・トレーニングの)レベルを少しずつ上げていこうという考え方です。人間ですからプラン通り行かないこともありますが、比較的、大きな故障もなく、継続してトレーニングができています。先ほど加納が話したように、3週間目から体を慣らし、4週間目からはしっかりとトレーニングができています。10月1日からアルバカーキで合宿して、そのままニューヨークに入ってレースに臨みます。

「(ロンドン五輪は)次の世界選手権でメダルを取るのが一番早い」(加納)
Q.世界選手権の際に募集した協賛金がたくさん集まったことについての感想は?
加納 本当に集まるのかわかりませんでしたが、“世界選手権頑張ってください”と出してくださる方が多くて、改めて自分は多くの方に助けられているのだと思いました。サッカーや野球はファンの人に支えられています。マラソンはチーム戦ではありませんが同じように支えられているのだと、今回の協賛金でわかりました。
Q.世界選手権後、長いスパンの青写真ができていれば教えてください。
加納 これまでの選考会を見ていると、次の世界選手権でメダルを取るのが一番早い。その前に、アジア大会のような勝負をするレースにも出たいし、記録を狙うレースにも出てみたい。ロンドン五輪に向けてキャリアを積み重ねていきたい。
Q.ラドクリフ選手の印象は?
加納 戦いたいというよりも、雰囲気を見たい選手です。どういう走りをするか。去年のニューヨークの走りを見ましたが、ちょっと別世界の人です。後半アップダウンがないのか、という勢いで走っていました。ああいう走りをするには日常から、マラソンだけを考えた生活をしないと無理なんじゃないかと感じました。

 会見後に行われたセカンドウィンドAC主催のパーティーでは嶋原清子が横浜国際女子マラソン(11月15日)出場を表明。嶋原も優勝した北海道マラソンから2カ月半のインターバルでマラソンに出場する。壇上のスピーチ中に司会から目標を問われ「まだ、具体的には決めていませんが、良い走りをしたいと思います」と、答えていた。


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