2009/5/9 国際グランプリ大阪
村上が自身初の2試合連続80m越え
「やりの初速が出るようになった」要因は?


 男子やり投は村上幸史(スズキ)が3投目に80m54を投げて優勝。大阪GPでの同種目実施は5回目と少ないが、大会初の日本人優勝者となった。
 村上は日本選抜和歌山大会に続く80m突破。村上の80m台は下記のように今回で4試合目だが、2試合連続は自身初めてだった。
80m59 2001/9/30
81m71 2004/4/25
80m10 2009/4/19
80m54 2009/5/9
 村上は79m台も多く投げているし、やり投は風の影響も受けやすい種目。実質的な80m台が何度あったかは特定できないのだが、村上が一段上のレベルで安定し始めたと見ていいだろう。

 村上のコメントからも、好感触を得ていることがわかる。
「やりの高さはそれほどでもありませんが、最近は練習も含め、やりに勢いが出てきました」
 昨年の北京五輪後から背中をより使った投げを目指してきた。
 昨年9月の全日本実業団の際には、
「背中でしっかりやりを引いて、構えの姿勢を作ろうとしました。日本人は体の前面だけを使って構えの姿勢を作るんですが、世界のトップ選手たちは背中なんです。オリンピックでそれを痛感させられて、自分も取り入れてみようと思いました。以前よりも右、左と着く間を長くとらないといけません。感覚としては、腰の右側に重心を乗せたまま、左に乗せていく感じ」
 と、話していた。
「それができてきたと思います。やりの初速が出るようになりました」
 それに加え今季は“つなぎの技術”を意識しているという。
「以前は上体だけ、下半身だけ、とばらばらでしたが、体幹や骨盤を意識して、力がしっかりとやりの投げる方向に伝えられるようになりました」

 もう1つ、村上の好調ぶりを示すことがあった。2投目にファウルながら80mラインを大きく越えた投てき。「82mを越えていた、と言われました」(村上)。自己記録と世界選手権A標準(81m00)を逃してしまったことになる。ファウルだったとはいえ、1試合で2回80mを越えたのも初めてだという。
「(2投目をファウルして)試合中は悔しかったですけど、3投目に持ち直して80mを越えられたことは良かったと思います。当面の目標はA標準。今年は僕だけでなく、やり投界に勢いが出てきました。荒井(謙・七十七銀行)もB標準を切っているので、一緒に世界選手権に行って、日本のやり投が世界に通用することを証明したい。決勝には今の力でも行けると思います。世界と勝負をするには予選と決勝でしっかり投げないといけません。今日の2本目はファウルになりましたが、3投目までで80mを越えました。今後の課題は、その後の試技で、どれだけ伸ばせるか、ということになってきます」
 村上は“ファウルをしない”ことで有名な選手。不本意な投てきで自らラインを出ることはあっても、「良い投てきでファウルをしたのは初めて」だという。かつてない動きができ始めていることの裏返しかもしれない。


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