2009/5/9 国際グランプリ大阪
村上がセカンド記録の3分39秒68
意識が高まった中距離選手たち
「2回目の3分30秒台ですが、そこまで嬉しくありません」


 男子1500mはペースメーカー役を務めた坂直哉(NTN)が800 mで後退すると、北京五輪3000mSC4位のジャルソ(Honda)がトップに。井野洋(富士通)が食い下がったがつききれず、代わりに1000m付近からペースアップした田子康宏(中国電力)が迫ったが、これも追いきれないうちに息切れしてしまった。そして、最後に追ったのが村上康則(富士通)だったが、村上もジャルソをとらえることはできなかった。
「展開は予想通りでした。Hondaの外国人は強いので、それに対応したいと思っていました。でも、差を空けられたところで前に詰められませんでした」
 村上の記録は3分39秒68。昨年のヨーロッパ遠征で出した3分38秒9には届かなかったが、自身2度目の3分40秒切り。

 今の中距離勢には、記録も勝つことも求められている。
 まずは記録。男子1500mはB標準突破が3分38秒11の渡辺和也(山陽特殊製鋼)を筆頭に、日本記録保持者の小林史和(NTN)、そして村上と3人いる。田子にもB標準の力はあるだろう。しかし、A標準の3分36秒20に近づいていかなければ、いつまでたっても世界とは戦えない。大阪GPのジャルソも、全力を出しきっていたとはいえないだろう。
「去年までは“3分40秒を切れれば”と考えていましたが、今は“3分40秒は切って当たり前”という意識です。今回で2回目の3分30秒台ですが、そこまで嬉しくありません」
 そして、勝たなければ世界選手権代表はない(A標準を破れば別だが)。昨年の記録でトップの渡辺は、兵庫リレーカーニバルの一般5000mで優勝したものの、その後の1500m2試合を欠場。村上が織田記念、大阪GPと田子を抑え、小林にも大阪GPで勝っている。
「去年はいつも2位や3位で、1回も優勝がありませんでした。これから日本選手権まで勝ち続けていきたい」

 好調の要因の1つに村上は「意識が上がったこと」を挙げた。前述の「3分40秒切りは当たり前」と思うこともそう。そして、合宿でも例年より積極的だった。
 この冬は例年同様陸連合宿などに参加したが、それだけでは不十分と考えた村上は、トップ選手たちに声を掛けて、シーズンイン直前の4月にも私的な合宿を行った。千葉の昭和の森などで8日間、小林、田子、井野洋(富士通)とともに追い込んだ練習を行なった。メニューも村上が叩き台を提案したという。
「個々のチームでやっていたら、レベルの高い練習相手がいません。トップ選手同士が集まって、レベルの高い練習をするのが狙いでした。競り合うメニューでは最後、引き離して終わるように頑張りました」

 大阪GPは結局、日本勢が束になってもジャルソには歯が立たなかったが、村上が1秒14差でフィニッシュしたことで、なんとか勝負の体裁にはなっていた。というより、こういうレースを続けていけば、少しずつレベルアップができるのではないかと、希望を持てたレースだった。
 何より、世界に向かう意気込みが感じられるようになった。
「ジャルソに空けられたときに前に行けませんでした。まだ壁がありますが、その壁を壊さないことには世界に行けません。ここからが勝負です。記録も日本記録(3分37秒42)だけではなく、A標準(3分36秒20)も視野に入れています」
 取材はできていないが、田子の覚悟も相当なものだと見た。5月末のゴールデンゲームズinのべおかで、ダニエル(日大)をペースメーカーに記録を狙うという。日本の中距離選手たちの意地を見られるだろうか。


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