2009/5/3 静岡国際
男子200 mは先行する安孫子を高平が逆転
高平の
セカンド記録、20秒46の意味するものは?

 高平慎士(富士通)が男子200 mに優勝。コーナーで先頭に立った安孫子充裕(筑波大)を直線の中盤で逆転した。
「ヒューストン合宿では、今日来ているアメリカ選手たちに前に行かれてばかり。慣れましたね。昨年までは100 mで勝負できていないと、という意識が強かったのですが、今年は200 mで先頭に立っていれば、と気持ちに余裕を持てています。オリンピック翌年の解放感もあるのかもしれませんが、スタートラインで余裕の表情を見せられるだけのゆとりがあるんです」
 この心境になれていることには、100 mのスピードがついたことも影響していた。

 静岡国際の優勝タイムは20秒46(+0.2)。20秒50近辺は何度か出している印象があったので意外な感じもしたが、このタイムは高平のセカンド記録だ。その前の予選では20秒56(+0.3)。
「織田記念の疲れも抜けきっていないなかで、予選、決勝とA標準(20秒59)を切れています。僕の記憶の中では予選、決勝と続けてA標準を切ったことはありません。年に2回のA標準もあったかどうか。それだけ、底上げができているということでしょう」
 高平が初めて21秒を切った2002年以降の、各年度の上位5パフォーマンスを表にした。

高平の年度別5傑(20秒台のみ)
個人順 記録 年月日 着順 大会 場所
2002
(高3)
45 20.97 ±0 2002/8/5 1 インターハイ 笠松
2003
(大1)
12 20.63 +0.2 2003/10/12 1 群馬RC 敷島
20 20.72 +1.4 2003/10/12 1 群馬RC予選2組 敷島
24 20.80 +0.6 2003/6/6 4 日本インカレ予選2組 横浜国際
42 20.93 +1.0 2003/7/6 3 日本選手権 横浜国際
44 20.95 +0.6 2003/6/7 8 日本インカレ 横浜国際
2004
(大2)
9 20.59 +1.5 2004/6/5 1 日本選手権 布勢
26 20.81 +0.7 2004/6/5 2 日本選手権予選1組 布勢
2005
(大3)
5 20.55 +1.8 2005/7/3 1 日本選手権 国立競技場
6 20.56 +0.1 2005/5/3 1 静岡国際予選2組 草薙
18 20.70 −2.4 2005/7/2 1 日本選手権予選7組 国立競技場
22 20.77 −0.7 2005/8/18 2 ユニバーシアード準決勝1組 イズミール
24 20.80 −0.6 2005/5/15 1 関東インカレ 国立競技場
2006
(大4)
1 20.35 +1.2 2006/5/21 1 関東インカレ 日産スタジアム
3 20.48 +1.4 2006/5/6 1 大阪GP 長居
14 20.64 +0.4 2006/5/20 3 関東インカレ予選3組 日産スタジアム
17 20.69 ±0 2006/7/1 2 日本選手権 神戸ユニバー記念
26 20.81 +0.7 2006/12/11 3 アジア大会 ドーハ
2007
(実1)
4 20.52 +1.2 2007/6/30 2 日本選手権 長居
10 20.60 ±0 2007/6/29 1 日本選手権予選3組 長居
22 20.77 +0.3 2007/8/28 7 世界選手権2次予選1組 長居
29 20.83 +0.2 2007/8/28 1 世界選手権1次予選1組 長居
31 20.86 −1.5 2007/9/22 1 全日本実業団 長良川
2008
(実2)
8 20.58 ±0 2008/8/18 4 北京五輪1次予選2組 北京
11 20.62 +0.6 2008/5/18 1 東日本実業団 熊谷
12 20.63 +0.2 2008/8/18 7 北京五輪2次予選2組 北京
15 20.65 −0.3 2008/5/3 1 静岡国際 袋井
16 20.68 +0.8 2008/5/18 1 東日本実業団準決勝2組 熊谷
2009
(実3)
2 20.46 +0.2 2009/5/3 1 静岡国際 袋井
6 20.56 +0.3 2009/5/3 2 静岡国際予選2組 袋井
18 20.70 +1.2 2009/4/12 1 順大記録会 順大

 大学2年でアテネ五輪に出場した2004年のA標準は、日本選手権の1回だけ。
 2005年は静岡国際と日本選手権の2度切っている(高平が覚えていなかった?)。
 2006年は20秒35と20秒48を出しているが、後述するように、本人にはそこまでの数字を出した実感はなかった。
 2007、08年のA標準は1回だけだが、07年以降は国際大会で好記録を出せるようになってきている点が、それまでにない進歩といえる。

「3年前の20秒35はプラン、イメージのない状態で出した記録」
 今回のセカンド記録には、4日前の織田記念100 mで出した10秒20(自己新)が密接に関係している。織田記念のレース直後に、高平は次のように話していた。
「後半の100 mはいつも10秒0なんです。100 mのスピードがつけば、前半を余裕を持って入ることができる。10秒2台で入れれば、20秒2台も可能になってきます。3年前に20秒35を出したときは、自分のなかでプランがない状態、イメージのない状態で出した20秒3でした」
 つまり、2006年の2度の20秒台前半の記録は、“予定外で出てしまったタイム”なのである。そのため本人には、A標準突破という意識が希薄だった。
 その点、今回の20秒46は、100 mのスピードを向上させ、想定したレース展開で出した記録だった。

「末續さんに比べたら僕は100 mが遅い。結局イーブンで勝負するしかないのですが、去年までは100 mのスピードがそこまでなかったので、少しでも前半の差を小さくするために前半から行かないといけなかった。それが今は、10秒20の最大スピードがあるので、前半を“ある程度”でよくなっている」
 それが静岡国際の後半で安孫子を逆転することにつながったし、「10秒20が出たら200 mは20秒40かな」という予想通りの記録になって表れた。
 表からもわかるように、高平は順大1年時に20秒63を出して以降、2006年の20秒35を除けば、それほど記録を伸ばしているわけではない。しかし、その間に高平はいくつものことをしている。
 20秒5台の走りは感覚として間違いなく染みついている。
 当初は国際大会で20秒台を出せなかったが、昨年の北京五輪では20秒5台で走った。
 そして、100 mのスピードを確実にアップさせた。
 しっかりとプロセスを踏んで出した20秒46は、飛躍の兆候と言っていいセカンド記録だろう。

高平の20秒70未満全パフォーマンス
個人順 記録 年月日 着順 大会 場所
1 20.35 +1.2 2006/5/21 1 関東インカレ 日産スタジアム
2 20.46 +0.2 2009/5/3 1 静岡国際 袋井
3 20.48 +1.4 2006/5/6 1 大阪GP 長居
4 20.52 +1.2 2007/6/30 2 日本選手権 長居
5 20.55 +1.8 2005/7/3 1 日本選手権 国立競技場
6 20.56 +0.1 2005/5/3 1 静岡国際予選2組 草薙
6 20.56 +0.3 2009/5/3 2 静岡国際予選2組 袋井
8 20.58 ±0 2008/8/18 4 北京五輪1次予選2組 北京
9 20.59 +1.5 2004/6/5 1 日本選手権 布勢
10 20.60 ±0 2007/6/29 1 日本選手権予選3組 長居
11 20.62 +0.6 2008/5/18 1 東日本実業団 熊谷
12 20.63 +0.2 2003/10/12 1 群馬RC 敷島
12 20.63 +0.2 2008/8/18 7 北京五輪2次予選2組 北京
14 20.64 +0.4 2006/5/20 3 関東インカレ予選3組 日産スタジアム
15 20.65 −0.3 2008/5/3 1 静岡国際 袋井
16 20.68 +0.8 2008/5/18 1 東日本実業団準決勝2組 熊谷
17 20.69 ±0 2006/7/1 2 日本選手権 神戸ユニバー記念


寺田的陸上競技WEBトップ