2009/5/3 静岡国際
“大物”たちを破った跳躍の東海大コンビ@
鈴木が
5m55、笹瀬&澤野&外国勢を抑える
自己タイ&学生歴代2位

 鈴木崇文(東海大4年)は決して、好調だったわけではない。4月の東海大・日大と四大学は、ともに記録なしの憂き目を見ている。
「助走が走れるようにはなっていますが、踏み切りに結びついていない」と、東海大・日大の試合後に話していた。
 この日跳んでみると、課題とした部分が徐々によくなっていた。最初の高さの5m25を1回でクリア。
 だが、まだ完全ではない。5m45は2回失敗。同じ静岡県出身の笹瀬弘樹(早大2年)が好調で、自己新となるその高さを1回で成功していた。
「踏み切りのポイントがずれていました。“ヤバイよ、負けるよ”と思いました。でも、いやらしく3回目で越えられましたね」

 意外にもこの高さまでに、第一人者の澤野大地(千葉陸協)や学生記録(5m55)保持者の荻田大樹(関学大)、そして外国勢のほとんどが失敗。地元出身コンビとJ・スコット(アメリカ)の3人が5m50で残っていたが、笹瀬がその高さをパス。
 それを聞いた鈴木もパスをすることを決めた。
「僕の性格が(パスをした)理由です。僕が50を跳んで、笹瀬が55を落として勝つのが嫌でしたから。若いので(同じ高さで)ガッツリ勝負したかった」
 5m50をスコットが落とした段階で地元コンビの1・2位が決定。5m55は鈴木が1回で成功したのに対し、笹瀬は3回とも失敗。鈴木の優勝が決まった。
「海外の選手にとってはアウェイなのでしょうけど、僕ら地元の選手にとっては知っている先生ばかりですし、甘い環境だったのでしょう」

 5m55は昨年の静岡県東部選手権に続き、自身2度目のクリアだが、跳躍技術は昨年とは変わっている。助走を変えているのは、新しい踏み切りに挑戦しているからだ。
「力のポイントが合わせるのが難しいですね。バットの芯に当たらないというか。身体の軸を線から点に合わせるような踏み切りなんです」と鈴木。
 父親でもある鈴木秀明コーチが説明してくれた。
「澤野選手のように強く、(低い角度で)バーンと突っ込んでいく踏み切りを目指しています。肩と腰のラインを一直線に近くして、軸を作って踏み切る。そのためには、助走のときにポールを一体感をもって運べるかどうかが、大事になってきます。上手くできればポールに負けずに押し込めるようになり、ポールの反発に乗りやすくなる。助走に関しては本人は、その感覚を『乗っていく』と言っています。東海大の上り坂を、最後まで身体を起こして走りきれるようになりました」

 そのコンセプトの跳躍が、5m55と60の2本目まではできていたという。鈴木本人はまだ、自身の感覚として完全な手応えを得られていないようで、今後、試合を重ねる中で定着させていくことになる。
「記録は最低でも5m60は跳びたい。上限はつけません。学生最後なのでインカレも頑張りますが、目標は世界選手権に出ることです。学生で出た選手は最近いませんから」
 世界選手権は前回の大阪大会から、A標準1人、B標準1人と組み合わせで出場できるようになった。この種目で学生選手の代表入りが実現すれば、1991年東京大会の竹井秀行(中京大)以来となる。


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