2009/4/26 兵庫リレーカーニバル
2週前の60m84に関する海老原コメント
「助走が走れるようになり、やりの高さが出るようになりました」
兵庫は1投目にハムストリングを負傷

 4月11日に国士大で行われた競技会で60m84と、女子やり投日本歴代2位を投げた海老原有希(スズキ)。兵庫リレーカーニバルは1投目に53m69を投げると、その後の試技を全て棄権した。11日の試合の6回目の投てきで右のハムストリングに「つった感じ」(海老原)があったが、今大会の1投目に「同じ個所に痛みが出た」ためだ。
「助走をしている間にアレ? っというのがあって、突っ込んでやりを離して、ただそれだけの投てきでした」
 表彰では脚を引きずっていた海老原。その記録でも優勝を決めるあたり、海老原の力が上がっていることの裏返しかもしれない。

 11日に投じた60m84は現行規格のやりでは2人目の60m台。日本記録に31cmと迫る快投だった。女子やり投と男子円盤投の60mは、選手にとって長い間の壁だった。60mスローワーになった気分は、やはり違うものがあったのだろうか。
海老原 みんなからおめでとうと言ってもらって、ありがとうございますと答えていますが、実感がそれほどないんです。自分の中に冷めている部分があって、もう1本60mを投げるまではなんとも言えない感じがあります。60mを投げたこと自体は自信になりますが、「もう1本、もう1本」と自分に言い聞かせています。次は日本記録を、とも言われますが、日本記録を意識しすぎるのでなく、アベレージを上げて“いつでも飛ぶよ”という状態に持っていきたいです。

 60mを投げたときは、どのような感触で、どのようなやりの軌道だったのだろう。
海老原 助走が走れている感じがありました。何をしなくても走れる、という感じでしたね。やりには高さが出ました。ケガをする前の2006年までは弾丸ライナーの軌道でしたが、60mの試合はやりが浮くようになっていました。去年も穂先だけは高くなっていましたが、今年はお尻が下がらず、やりごと一段高くなっています。

 冬期には、何をテーマに取り組んできたのだろうか。
海老原 どこかを大きく変えたわけではありませんが、助走や投げの形を意識して取り組んできました。(メニューとしては)助走練習やスナッチなど全身的なものを気合いを入れてやりました。スピードや力はついたと思います。その結果、助走の感覚はよくなりました。タイムで測っているわけではなく、走ったら走った分だけスピードが乗る感じがあります。投げの形で一番変えているのは、正面を向いたまま走って、正面を向いたまま投げること。実際はクロスで横を向きますが、自分の意識としては横を向いていません。やりも実際には引いていますが、自分からやりを引こうとはしていません。身体全体で引く感じにして、自分の意識としては引かない。やりを置いておいて、上から下に向かってたたき落とすようなイメージで投げます。その結果、やりが浮くようになったんです。

 ハムストリングを痛めたのは初めてだという海老原。昨年あたりから何度か、右足で身体を前に押し込む動きをしたいと話していた。その動きができできた証だろうか。故障の回復と今後の試合出場の見込みは、どうなりそうだと感じているのだろう。
海老原 60mを投げたあとは筋膜炎だと言われました。切れてはいないよ、と。右は身体を持っていく脚で、これまでハムを痛めることはなかったんです。静岡国際と大阪GPにエントリーしていますが、ケガの状況を見ながらになると思います。1週間では厳しいかもしれませんが、大阪までは2週間あるので、なんとか挑戦したいですね。

 昨年はオリンピックのB標準を突破したが、B標準の設定が低く、代表に入れる期待は自身でもしていなかった。今年は60m。世界でも決勝進出を狙えるレベルになってきた。
海老原 大阪GPに出場するのは初めてなんです。強い外国選手と試合をするのは、2007年のユニバーシアード以来。もう1本投げてみないと自分のものにできた感じはありませんが、60mを投げたことは多少なりとも自信になっています。あわよくば日本選手権でA標準(61m00)を越えて、「記録を投げたぞ」という自信を持って世界に出ていきたいですね。


寺田的陸上競技WEBトップ