2009/11/28 東レ上海マラソン前日
ハーフで安定した走りを見せる伊藤がスピード面も成長
「継続して練習ができ、力はついてきている」


 静かな話しぶりが、伊藤舞(大塚製薬)の手応えの大きさを示している。
「距離を踏む練習があまりできていませんが、ここまで継続して練習ができ、力はついてきていると思います。明日のハーフは自己記録の更新が目標です」
 伊藤の自己記録は2006年の京都シティハーフで出した1時間11分11秒。京産大3年の時だった。大学3年のシーズンに5000mで15分52秒8と自身初の15分台に突入。4年時には自身初の1万m32分台となる32分57秒37をマークした。
 デンソー入社後は「いいところまで来ても故障してしまっていました」という。手元のデータでは5000mの1年目の記録は見あたらず、1万mは33分16秒85。2年目の昨年は1万mは32分56秒33の自己新を出したが、5000mは16分20秒台にとどまった。

 京都・橘高出身。今年3月にデンソーをやめ、しばらく母校の京産大で練習をしていたが、4月下旬に大塚製薬に入社。秋には新潟国体5000m6位(15分55秒64)入賞。1万mで32分27秒04と大幅に自己記録を更新した。実業団女子駅伝西日本大会では3区(10.5km)に出場し区間4位。「結果的に駅伝への調整のはずだった2週間前の1万mの方が良かった」と本人は反省するが、区間賞の中里麗美(ダイハツ)とは30秒差。悪くはない結果だった。
 好調の要因を伊藤自身は「去年の夏頃から練習を継続して行うことができたことと、体幹を鍛えるトレーニングで上体のぶれがなくなってきたこと」を挙げる。また、天羽恵梨コーチによれば、タイム設定の工夫も功を奏したようだ。「与えられたメニューを絶対にこなそうとする選手。タイムに余裕を持たせて継続できることを優先しました。こういう理由だから、こういう走りをしようと話し合って進めています。タイムにこだわりすぎず、動きやリズム、感覚を考えて行なっています」

 必ずしも好調とはいえない状況でも、ハーフマラソンでは安定した成績を残してきた。デンソー時代の3月に全日本実業団ハーフマラソンで6位。1時間11分48秒と自己記録に迫った。5月の仙台ハーフで4位(1時間12分08秒)、7月の札幌ハーフで13位(1時間12分47秒)。仙台では優勝した赤羽有紀子(ホクレン)に5kmまでしかつけなかった。札幌では優勝した中村友梨香(天満屋)らの先頭集団に、最初からつけなかった。
 大塚製薬の河野匡監督は「1人のときも競ったときも淡々と走るタイプ。スピードがないのが弱点と本人は思っていましたが、アプローチの仕方を変えれば行けるとわかったと思う」と話す。
 スピード面で結果が出始めた以降で、初めて臨むハーフマラソン。不安材料を強いて挙げると、本人が言うように「距離を踏んでいない」こと。全日本実業団対抗女子駅伝出場を目標にやってきたためだ。だが、それよりも練習の継続への手応えの方が大きい。1時間10分前後のタイムが出ても不思議ではないだろう。


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