2008/6/26
日本選手権2009日付別展望
第3日・6月27日(土) 女子編
混戦予想の5000mだが赤羽がわずかに有利か
七種競技の中田が好調

●女子100 m予選

●女子400 m予選
 久保倉里美は400 mには出場せず、400 mHに絞る。青木沙弥佳は400 mにも出場予定だ。

●女子800m予選

●女子5000m決勝
 福士は昨年12月の全日本実業団女子駅伝後に休養期間に入り、自主練習をしながら3カ月で故障を完治させた。復帰戦の関西実業団の記録は良くなかったが、永山忠幸監督によれば「2カ月でかなり上がってきている」という。
 小林も故障期間を完全に休んだわけではなく「心肺機能は落ちていない感じがする」と本人も話しているという。ただ、2人とも故障明けということで、いつものように速いペースで引っ張れるかどうか。福士陣営は「A標準はいつでも切れる」(永山監督)と、日本選手権後の突破も視野に入れる。新谷仁美や中村友梨香は、できればハイペースに持ち込んでA標準を狙いたいところだ。

=陸上競技マガジン7月号記事。以下同

 優勝戦線が混沌としてきた。
 優勝者予想に挙げた福士加代子は1万mで3位。残り3000mでスパートしたが逃げ切れず、明らかに好調時とは違った(未確認だが、6月に入って故障をしたという情報もある)。
 小林祐梨子は1500mを欠場した。元から1500mは「出るとしてもスピード練習代わり」(長谷川先生)という話だった。状態が悪いと決めつけられるものではないが、万全でないのも確かだろう。
 スローペースになってラスト勝負だけという展開なら小林にも可能性はあるが、1万mのときのように赤羽有紀子がペースをくれば、赤羽が最有力候補か。
 1万mの結果から見ると、小崎まりと松岡範子の両ベテランも可能性がありそうだが、この2人は5000mでは標準記録未突破。それなりのペースにしないといけない(はまれば、それほど難しいペースではないのだが)。
 その点、B標準を突破している新谷仁美と中村友梨香は、勝てば代表に選ばれる。男子の上野裕一郎がそうだったように、今大会の暑さがアドバンテージにもなっている。

●女子400 mH決勝
 大阪GPは56秒73と調子が上がっていないが、昨年の北京五輪で準決勝に進んだ久保倉里美の優勝は動かない。唯一のA標準突破者でもある。「今年は10台をまとめるよりも前半を速く行くことに重点を置いている」という。国際舞台を意識した久保倉の前半のスピードが注目される。
 青木沙弥佳が昨秋55秒91とB標準を突破したが、セカンド記録は56秒93と開きがある。久保倉に勝つのは厳しいが、56秒55のB標準を再度上回るなど善戦すれば、代表入りの可能性が高まる。
 学生では津留加奈が静岡国際で青木に先着。津留を抑えて関東インカレに優勝した田子雅ら人材が出てきている種目。58秒を4人が切れば過去最多となる。


 予選は4組が行われ、久保倉里美、青木沙弥佳、田子雅、吉田真希子が各組の1位で全員が59秒台。1着取りなのにタイムが低調なのは前半の向かい風が原因。「300 mくらいまで向かっている」と話していた選手もいた。
 そのなかでも久保倉のタイムが59秒08と最も良い。唯一の標準記録A突破者という精神的なゆとりもあるし、青木が400 m予選と日程が重なるのに対し、久保倉は400 mHに絞ることができた。
「前半の風が強く16歩を予定していた6台目までではなく、5台目までしか行けませんでした。明日は前半の200 mから上手く後半につなげられるようにしたい。そこに注意しながら確実に優勝して代表切符を取りたいと思います」
 一方の青木は「B標準を上回る記録を出して入賞したい」と言う。
「でも、2位に甘んじていいという気持ちではありません。そのくらいでないと世界に出ても戦えない。上手くレースづくりができればイケルと思います」
 ベテランの吉田も「決勝はB標準を目指してチャレンジします」と、良かった頃の歩数で行くことを考えている。
 田子ら関東(の学生)勢が充実してきたので57秒台も続出するかと思われたが、風が悪いと難しくなる。

●女子砲丸投決勝
 昨年まで4連勝中の豊永陽子だが、今季はまだ試合に出ていない。投てきのインターハイ入賞候補を複数抱える生光学園高のコーチでもあるからだ。自身の練習について「なかなか難しいですけど、生徒と一緒に練習するなかで自分も伸ばす方向」でやっている。「出るからにはタイトルと16mが目標。それが、生徒の刺激になれば」と日本選手権を位置づけている。
 豊永が15m台前半だと勝負は面白くなる。兵庫、静岡と連勝した白井裕紀子が、関西実業団では15m17まで記録を伸ばしているのだ。2006、07年と1m以上あった豊永との日本選手権での差を、昨年は73cmに縮めている。佐藤あずさと蛭田伶菜の筑波大コンビにも、15mラインに迫る投てきを期待したい。


 豊永は6月13日の関西実業団記録会に出場して14m18。今季の記録では白井裕紀子と99cmの差があるが、最初から日本選手権に向けた調整試合と位置づけていた。棒高跳の近藤高代がそうだったように、ベテラン選手が合わせてきたときに、周囲の予想以上の結果を出すこともある。ふたを開けてみないとわからない、のが日本選手権である。

●七種競技
 アクシデントがない限り、32歳の中田有紀の8連勝は確実だ。今季も和歌山で2位に約200点差をつけて優勝。記録は5427点と中田も状態が良かったわけではないが、それ以上記録が下がることはないだろう。
 優勝記録は2003〜05年と連続で5900点台だったが、07、08年と5500点台が続いている。以前の体力がないのは隠せないが、身体の動かし方を工夫してパフォーマンスをさらに向上させようとしている。今年はどの種目にも応用が利く動きでストライドが伸びるなど、明るい材料もある。
 和歌山2位の伊藤みのりや、今季はまだ試合に出場していないが昨年2位の浅津このみが5500点に迫れば、中田を慌てさせることができるかもしれない。


 中田有紀は5月16日の中部実業団では200 mで25秒24(+0.7)、同30日の中京大土曜競技会では100 mHで14秒30(−0.7)、6月13日の中京大土曜競技会では走高跳で1m75。徐々に調子を上げている。かなりの高得点が期待できそうな雰囲気がある。
 混成の試合に出場していない浅津このみだが、6月の日本学生個人選手権には100 mHで出場。予選で14秒29(+1.1)、準決勝で14秒46(+1.1)という記録を残している。自己記録は昨年出した14秒16。判断が難しいが、上り調子にはなっているようだ。
 伊藤みのりは中部実業団の100 mHで14秒09(±0)、走幅跳で5m55(+0.8)だ。ハードルの記録を見る限り、状態は良さそうだ。


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