2009/6/28 日本選手権4日目
塚原は左大腿二頭筋腱炎、
福島は右そけい部の疲労で決勝を棄権
両コーチが事情を説明

高野進専任コーチ
「知らず知らずのうちにアキレス腱をかばって、反対の脚に来てしまった」
 予選を軽く走って10秒09。右脚のアキレス腱に多少痛みはあっても、問題ないですと本人も話していました。今日のアップでも痛みはありましたが、ネガティブにとらえず、痛みと付き合いながら記録を出していくということで、アップを終えて行かせました。
 スタートしてトップスピードに乗せるところで左大腿二頭筋腱という、左ヒザ裏の外側の筋張った部分ですが、そこに痛みが走ったということです。後半はまったく踏ん張れず、そのまま走り抜けました。
 本人は悔しがっていましたが、日本選手権の決勝を万全でないなかで強引に走らせるわけにもいきませんし、たぶん、全力で走れなかったと思います。
 ただ、ドクターによれば軽度だということです。肉離れでガチーンといってしまったわけではなく、腱の炎症ということですから。じんじん痛んでくる感じです。もう1本走ったら、かなり大きなダメージになったと思いますが。

 今年は順調に来すぎて、体も動いて、なおかつこの好条件のなかで走ったダメージが脚に来たのだと思います。本人が知らず知らずのうちにアキレス腱をかばって、元気な脚で***する。条件も良いから動きも良くなって、高速トラックの宿命でもありますが、跳ね返りが強いからダメージも来る。それにうち勝つだけのバランスの良さですとか、体の状態を準備しなければいけないわけです。
 決してトラックのせいにしているわけではなく、彼自身が***して走って、良い条件のところで片方に動きが来てしまったことが原因です。
 順調すぎる故に、こういうこともときにあると、わかってはいるんですけど止められないものです。もう一気に行け、と。今回は私もそう言っていましたし、記録は狙えるときに狙うと。それはそれで10秒09まで来ていましたが、本人はあまりネガティブなことは言わないのですが、内面ではかなりかばって走っていたのかな、と今は思います。外から見ても、そんなに崩れているように見えないように走っていた。
 9秒台を目指すには我々はまだ、少し修行が足りない、準備が足りないのだと思います。その可能性は見いだすことができましたが、コンディションを整えきれなかったことは、謙虚に反省しなければいけないという気持ちです。

 回復の見通しについてはドクターに聞かないと何とも言えませんが、肉離れなどとは違い、炎症が治まれば比較的早く回復するのではないかと思います。今日は走れませんが、今季絶望というものではありません。軽度だからこそ、(今季の出場のため)ひどくさせたくないという判断がありました。本人も今年、もっと良いレースをしたいということで、悔しいが断念すると。今日で、今シーズンを終えるつもりなら出たと思うんです。

 世界選手権の選考については、私の一存では何も言えませんが、方向性としては短距離の選考レースは全部終わっていますから、全選考競技会の結果を見て、一項、二項、三項、四項とある選考基準に照らし合わせて選考します。
 一項がオリンピック入賞者、二項がA標準の日本選手権優勝者、三項がB標準の日本選手権優勝者、三項が日本選手権その他の選考競技会の上位者の標準記録突破者、です。
 我々(陸連強化委員会)の戦略上、どういうように考えられるか、ということになります。


中村宏之専任コーチ
「未知の世界にどんどん行くということは、どこかに無理が来ている」
 そけい部にちょっと張りがあるということで、私も何回か経験があるんですが、“超”大事をとりました。やめる勇気も必要だと思って、欠場を判断しました。肉離れとか、何がどうしたというわけではなく、準決勝のときから動きがちょっと悪いと本人から申し出があり、そうしたらそけい部にちょっと張りがありまして、悪化すると回復に時間がかかるものですから、先生にご相談したところ、無理をしない方が良いとアドバイスをいただきました。
 そけい部の痛みは、彼女は初めてです。昨日の予選まではまったく問題なかったのですが、今日の準決勝のアップのときに少し動きづらいな、と感じ始めたようです。決勝も走って走れないことはなく、アップもしようとしたのですが、無理をさせない方が良いと長年指導をしている勘が働きました。
 今回は皆さんのご期待をひしひしと感じていました。本人はあくまで出ると言ったのですが、誰かが止めてあげないといけないケースでした。「それでいいんですか?」「いいんですか?」とさかんに聞いてくるので、「いい」と答えました。高野強化委員長にも報告し、「無理するな」というお言葉をいただき、甘えさせていただきました。
(200 mと100 m予選の疲労も大きかったか?)23秒0くらいで走るということは、脚への負担も相当大きかったのでしょう。織田記念から静岡国際、大阪GP、鳥取の試合、そして今大会と(レベルの高い走りを)続けて、やっぱり来たか、という思いもあります。
 高速トラックということと、リレーも含めて日本新を5連発で走っていることで、私どもが考えている以上に疲労が彼女に残っているのではないかということで、判断させてもらいました。
 日本選手権も最初は2種目ではなく、どちらか1種目にしようか、という話をしていましたが、200 mでもA標準を突破したい思いが彼女にありました。先に200 mが行われる日程でもありましたから(200 mを走って様子を見ようと)。結果的にその疲労、脚への負担が大きかったようなので、ここで無理をして走らせて、(後になって)あのとき走らせなければよかったな、という後悔はしたくなかったのでやめさせました。
(準決勝前の状態はどのくらいだったか?)11秒1くらいでは走っていたでしょうね。そうやって未知の世界にどんどん行くということは、どこかに無理が来ているということでもあろうかと思います。私どもが考えている以上に、体の方が悲鳴をあげていた。疲労を取ってあげないといけない。
(回復の見込みは?)ちょっと休ませたら、すぐに練習は開始できると思います。南部記念は今のところ出ないつもりですが、練習にさしつかえるようなことはないでしょう。


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