2009/6/27 日本選手権3日目
塚原、予選で10秒09の日本歴代4位
2004年の朝原以来、
5年ぶりの10秒0台!

 塚原直貴の予選レース後の第一声である。
「良い風が吹けば、(10秒0台は)出る記録だと思っていました」
 日本選手最後の10秒0台は、2004年の日本選手権予選で朝原宣治が出した10秒09。5年ぶりの快挙にも、いたって当然という口ぶりだった。

 前日は富士通の先輩の高平慎士が20秒22の日本歴代3位。国際舞台でも準決勝進出が可能なレベルの走りを見せた。ホテルではBS放送での中継が見られないため、近くの家電量販店に見に行った。
「あのレースを見せられたら、いてもたってもいられません」
 塚原に予選を抑えたり、流す意識はなかった。1回目のフライングも「気持ちが乗っかりすぎました」と説明した。

 高平や福島千里(北海道ハイテクAC)の走りに刺激を受けたのは事実だが、東日本実業団で10秒5台、3台、1台で3本走ったときから、世界を狙う選手として、「無駄な走りは1本もしてはいけない」「抑えた走りをすると技術的にもよくない」という意味のことを話していた。
 広島でもそれを実践した。
「1本目(予選)からしっかりと記録を狙う。それができないと、上(世界)では戦えません。世界では9秒台が当たり前ですから、そういう意識の高さでやっています」
 日本選手権という「舞台」への思いも、塚原独特のものがあった。
「自己をアピールすることが大事です。そのためには勝ち負けだけでなく、記録にも注目してほしい」

 だが、東日本実業団まで3試合連続で10秒1台で走り続けたことで、軽い痛みが体のあちこちに出た。そのため、6月第1週のスプリント挑戦記録会 in TOTTORIでは第2レースを欠場せざるを得なかった。
「鳥取のあとに何をしたかといえば、練習をしませんでした。といっても、エンジンは切っていません。走れない分、頭で(練習を)消化していました。富士通の合宿とかもあって、高平さんの走りなどを見ていましたね」
 “練習をしない”判断が、誰かのアドバイスか? と問われた塚原は、「本能的に」判断したという。
 その一方で、この日のレース中は「理性が働く範囲内でした。“(風が)すっげえ追ってるな。0台が出るんじゃないか”って感じながら走っていました」と、自身の特徴の1つだと話していた客観視する能力も発揮した。
 ただ、塚原の場合、その両者が別のものとして存在しているのではないようだ。本能的な部分と理性的な部分が同時に発揮できるのが、塚原の特徴のような気がする。

100 mの10秒0台全パフォーマンス
記録 選手 所属 年月日 成績 場所 大会
10.00 1.9 伊東 浩司 富士通 1998/12/13 1s2 バンコク アジア大会
10.02 2.0 朝原 宣治 大阪ガス 2001/7/13 4 オスロ ビスレットゲーム
10.03 1.8 末続 慎吾 ミズノ 2003/5/5 2rA 水戸 水戸国際
10.05 1.6 伊東 浩司 富士通 1998/12/14 1 バンコク アジア大会
10.05 1.9 末続 慎吾 東海大 2002/5/6 1 水戸 水戸国際
10.05 1.4 朝原 宣治 大阪ガス 2002/6/9 1 西部 日本選手権
10.06 0.4 伊東 浩司 富士通 1999/7/2 6 ローザンヌ アスレティッシマ
10.08 0.8 朝原 宣治 大阪ガス 1997/7/2 3rB ローザンヌ アスレティッシマ
10.08 1.5 伊東 浩司 富士通 1998/10/4 1 熊本 日本選手権
10.09 1.5 朝原 宣治 大阪ガス 2004/6/6 1h1 布勢 日本選手権
10.09 1.8 塚原 直貴 富士通 2009/6/27 1h1 広島広域 日本選手権


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