2009/12/19 全国高校駅伝前日
男子は世羅が頭1つ抜けた存在
包囲網から抜け出すのは??


 全国高校駅伝の区間エントリーが、13時から監督会議終了後に発表された。男子は大物選手の欠場はなく、全体的にほぼ予想されたオーダーに。3区にカロキを擁する世羅に対して、他の有力校がどの位置でレースを展開するか。

@世羅
目指すのは“普段通り”の走り
「4区終了時に1分から1分半の差が欲しい」(岩本監督)
 男子は専門誌などでも予想されているとおり、世羅が“鉄板”の優勝候補。1区に国体1万m7位の北魁道、3区に5000m13分32秒79のカロキ、4区に5000m13分59秒76の竹内一輝の3人は他の有力チームを圧倒する。
 青森山田も1区に田村優宝、3区にインターハイ1500m優勝のギチンジを配した。青森山田が世羅に先行する可能性もあるが、須磨学園、西脇工、佐久長聖、九州学院、鹿児島実という上位候補に対しては、ブレーキでもない限り世羅が3区で前に出るだろう。4区の竹内で差をさらに広げるか、他の有力チームが4区で詰められるのか。

 世羅の岩本真弥監督は「4区が終わって何分差なら安心できるか?」という問いに対し「1分半、最低でも1分は欲しい」とコメント。
「でも厳しいでしょうね。2区は調子が上がってきたが、5区と7区でかなり詰められる。(4区終了時の)理想通りに行けばいいが、厳しいと思いますよ」
 前回のアンカーで5000mの記録でチーム5番目の松井智靖が故障で起用できなかったのが誤算だが、6区の藤川拓也が「単独走に強い」(岩本監督)タイプで、踏ん張る可能性がある。「6区が終わって30〜40秒くらい欲しいですね。1分あって見えなければ、なおいいのですが、さすがにそれはないでしょう」
 当事者としては大きいタイム差が欲しいのは当然。他校の指導者たちは、もう少し小さい差でも厳しいと感じているのではないか。

 3年前の2006年に32年ぶりの優勝を果たしている世羅。その際は本命チームではなかったが、3区でトップに立つとそのまま逃げ切った。平常心で臨みやすい状況だったが、今回は優勝候補筆頭との前評判。そういった記事も選手たちの目に入る。
「今回も普段通りにやるだけですね。今から何か言って変われるものなら言いますけど」
 優勝を特に意識するのでなく、普段の力を出し切る。それが世羅のスタイルのようだ。

A佐久長聖
5000m平均タイムはトップ
「6番目7番目の選手の力が逆転に結びつけばいいのですが」(両角監督)
 前回高校最高記録(2時間02分18秒)で優勝の佐久長聖はVチームから5人が卒業。「別のチーム」(両角速監督)ということで、前回のように“なにがなんでも優勝を”という雰囲気ではない。専門誌のアンケートでの目標も「2時間04分00秒(3位)」。
 ただ、この1年間は「順位を下げるわけにはいかない」(同監督)という意識で取り組んできた。また、Vチームと佐久長聖の伝統も今のチームに生きているという。
「昨年は3年生がチームを引っ張りました。村澤(村澤明伸・東海大)も自分1人が強くなるのではなく、みんなで強くなりたいと考えていた。そういう考えが受け継がれて、全体の底上げができました」
 その結果、上位7人の5000m平均タイムは14分18秒44で、世羅の14分18秒99を抑えてトップ。伝統が5000mのスピードに表れるところが佐久長聖らしい。
「世羅さんはケニア選手や13分台の選手がいますが、それでも平均で上になったということは、6番目7番目の選手はウチの方が力があるということかな、と思っています。その部分が逆転に結びつけばいいのですが」
 と、2連勝への意欲も垣間見せた。
 しかし、そう話した直後に「先頭を走るチームの方が有利ですけどね」と、それが簡単なことではないことも認識している。
 アドバンテージは、昨年のように中心選手に故障者がいないこと。
「(今季前半で故障に苦しんだ)大迫を1区に配置できましたし、上りに強い臼田を3区に、キャプテンの宮坂を4区、競り合いに強い両角をアンカーに起用できた。2区の松下も昨年の経験者で、1・2区で上位につけて3区につなげる。理想のオーダーが組めました」
 全体に小粒になったことは否めないが、前回チャンピオンチームが力を出し切る態勢は整った。

B須磨学園&西脇工
兵庫の伝統を力に初都大路に挑む須磨学園と
須磨学園を目標とする西脇工


 兵庫代表の須磨学園が初の都大路に挑む。「1分から1分半は差し引いて考えるべき」と言われている近畿大会での記録だが、2時間03分13秒は予選最高タイム。初出場チームの持っている記録としても過去最高だ。西脇工の持つ兵庫県記録も更新した。
 1区は国体1万m優勝、28分39秒04の高2最高記録(兵庫県記録)保持者の西池和人。3区の後藤雅晴は近畿大会1区で29分39秒と好走した選手で、5000mでもチーム2番目のスピードを持つ。4区の北野大裕は単独走に強く前半からハイペースで入る走りができる選手。兵庫県大会では4区で西脇工を逆転した。
 1区で少しでも優位なポジションを築き、3区で世羅との差を最小限にとどめる。4区で後半勝負に持ち込める差にしたいところ。

 山口哲監督は「初めてなのでタイムも展開も予想できない」と話しているが、普通の初出場チームではない。報徳学園と西脇工という、全国優勝14回の2チームを破る過程を経験してきた。山口監督自身も報徳学園の出身。須磨学園の初出場で兵庫県の歴史が変わったのではないと言う。
「(報徳学園の恩師だった)鶴谷先生の教え子である自分が都大路に出て、歴史をつなぐことができたと思っています。我々にとって歴史を変えたといえるのは、悪い方に変えることを意味します。歴史を伝統を受け継げることを嬉しく思っています。報徳学園と西脇工がつくってきた“王国兵庫”の中で揉まれてきた安心感があります」

 一方の西脇工は“打倒・須磨学園”を目標に走ることで、力を発揮しようと考えている。「兵庫、近畿と負けて、さらに1回負けたくはない」と足立幸永監督。
「(近畿大会でも)本来の力を出し切れていません。近畿が終わって(須磨学園につけられた)40秒差をどうしようかと考えたとき、(実際に走る)7人で割ったら1人6秒縮めないといけませんが、部員31人で割ったら1.29秒なんです。練習の中で1人1人が3m頑張ろうと言ってやってきました」
 区間起用では2年生の新庄翔太を1区に、エースの志方文典を3区に配置した。「1・2区で1つ、3・4区で1つ、5・6・7区で1つ」という考え方だと足立監督は説明するが、実際に1・3区を決めたのは志方と新庄の2人が話し合ってのこと。
「3区の方が難しいコース。志方の方が1人で走れるタイプ」というのがその理由だが、前回、佐久長聖が3区に村澤明伸(現東海大)を起用したのと同じパターンになった。
「留学生が逃げるでしょうから、我慢して我慢して行くしかない」

 兵庫の伝統を力にする須磨学園と、須磨学園を目標にする西脇工。
「兵庫県大会や近畿大会の方が大変です。県大会は1位しかダメなわけですし、近畿も勝ち負けに一喜一憂しないといけません」(山口監督)
 兵庫の代表は、普通の代表とは違う。“兵庫勢”としての頑張ることが、全国で力を発揮することになる。


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