2009/12/31 ニューイヤー駅伝前日
区間エントリー発表
注目される1区の“流れ”と4区の“踏ん張り”
@1区編 有力選手の数が増加
区間エントリー一覧(TBS)
1区の有力選手が多くなったのが特徴だ。
区間距離が変わった前回は手探り状態でスローペースになったが、今回はそうなりそうにない。インターナショナル区間の2区で行けないチームは、1区で少しでもリードを奪うことを考えている。1位はとれなくても、全体的にばらけさせようという狙いだ。
カネボウは過去、中村悠希などついていって“ラストで勝負するタイプ”の選手を持ってきたが、今回は“先行するタイプ”の木原真佐人を起用した。東日本予選までは今ひとつだったが、11月末の八王子ロングディスタンスで28分09秒38と復調した。
飛び出すつもりか? という問い掛けに対し「はい」と即答。08年の日本選手権のように有力選手を従えて、マイペースで行く可能性が出てきた。
トヨタ自動車九州も1区に三津谷祐を持ってきた。
「スローになったら後半抜け出したい。木原が行ったら、良い流れになると思いますよ」と、余裕を感じさせるコメント。
トヨタ自動車九州は4区を今井正人に任せられるようになったことも、三津谷1区の背景にある。今井は12月6日の甲佐10マイルで北村聡(日清食品グループ)を抑えて優勝し、実業団選手としても通用する力をつけている。
旭化成は1区に大野龍二を6年連続で起用した。前回の区間賞獲得者だが、今季は大西智也の成長で他の区間に起用される予定だった。前回3区区間賞の岩井勇輝が間に合わず、大西を3区にもっていったからで積極的な理由ではない。「6割くらい」と本人がいうくらいで大野の状態も良くないが、「1区でついて行くレースなら」(宗猛監督)ということでの起用となった。
だが、得意の1区であれば負けるわけにはいかない。
「(木原が飛び出しても)最後に勝てればいい。6回連続なのでコースも知っていますし、経験もある。誰が出ても、レースの流れを読みながら対応を考えます。有力チームの近くにいることが大事。そこをしっかりやれば、(1区の)最後で勝ちたいという気持ちになる」
自身が6割の状態、岩井が欠場という状況でも、大野が焦っている素振りはない。「直前の練習などを見る限り、ここ数年でチーム状態は一番良い」からだろう。
優勝候補筆頭の日清食品グループの1区は座間紅祢。2区のゲディオンもいることで、上記3チームとは事情が異なる。東日本予選1区区間賞、甲佐10マイルでも3位と好調だが、その好調さに任せて走るわけではないようだ。
「後ろが強いチームなので、どっしり構えて行きます。ペースを見て、冷静に走ります。(途中で離されることがあっても)10秒以内では渡したい。30秒開けられてしまうと、後ろが大変なので」
ペース次第だが、上記3チームの1区走者とは違った走り方をすることになりそうだ。
Hondaの池上誠悟、東京電力の若松儀裕と今季好調の選手や、四国電力・大森輝和、大阪府警・大坪隆誠、自体学・室塚健太らのエース級の選手、山陽特殊製鋼は1500mの渡辺和也、NTNは3000mSCの梅枝裕吉とトラック種目のトップ選手も登場する。今回の1区は面白いレースになりそうだ。
A4区編 抜擢された選手たち
1区に選手が集まった影響なのかどうかはわからないが、4区に予想外ともいえる選手が多く起用された。日清食品グループに勝つにはこの区間で追い上げないといけないが、広義の意味で“踏ん張る”べき選手が多いと感じられるメンバーとなった。
2連覇を狙う富士通は、実業団駅伝初出場の堺晃一(2年目)が抜擢された。その理由を福嶋正監督は「練習で外さないし、長い距離の練習もできている。藤田(敦史)よりも量的にはやっていると思う。4区はマラソンを走るくらいでないとダメだし、本人も4区をやりたいと言っています」と話している。
堺自身はそこまで自信満々というわけではない。
「4区というのはあまり意識していないようにしています。今の実力通りの走りをすればいいと。5区に藤田さんがいてくれるので、先頭が見える範囲で渡したいです。もしも先頭で来たらそれをキープして」
堺は箱根駅伝の9区で3年時に区間4位、4年時に区間2位。4年時は篠藤淳(中央学大)が区間新を出した年で、飾磨工高OBが区間ワンツーを占めた。
「学生はスタミナがあれば長い距離の区間を走れますが、実業団は長距離区間でも2分40秒とか2分45秒で突っ込みます。自分は明らかにスピード不足でしたが、今年はトラックのスピードをつけてきました」
2年前の箱根駅伝9区では最初の5kmを14分30秒前後で入ったが、9区は2区の裏返し。最初は相当に下っている。「30秒は速くなる」とある長距離関係者は言う。
明日の4区でも堺は「14分30秒くらいで入りたい」と話す。タイムは2年前の箱根駅伝9区と同じでも、そのペースで踏ん張ることができれば優勝チームのエース区間を走る選手に成長した証を見せることになる。
日清食品グループ・北村聡、トヨタ自動車・尾田賢典、トヨタ自動車九州・今井正人らは、チーム内に他にも強い選手がいて、どちらが4区を務めるかわからない状態だった。
優勝候補筆頭の日清食品グループは3区・佐藤悠基、4区・北村という分担になった。
白水昭興監督は姿を見せなかったが、工藤一良コーチが「適性を考えてのことでしょう。3区の方がスピードが要る区間ですから」と代わりに答えてくれた。
北村自身、「準備はしてきました。試走は悠基と2人で、3区と4区の両方をしていました」と、以前から4区への準備をしていたことを明かした。
「逃げ切るイメージを描いています。実際どうなるかわかりませんが、自分が順当に走れば優勝できる。そこまで緊張していません」
1区の座間もそうだったが、日清食品グループの選手たちには余裕があるように思えた。
トヨタ自動車九州の4区は元祖“山の神”の今井正人。12月6日の甲佐10マイルでは日清食品グループの北村を破って優勝。平地では“ただの人”だったが、ありがたくないその肩書きを完全に払いのけた。前述のように1万m日本歴代4位の三津谷が1区。
その三津谷が区間配置について「外国人がいないので1区の自分で上手く流れに乗って、2区と3区で耐えて、4区の今井でまた上げていく」と、狙いを説明してくれた。
「2区と5区が新人で、5・6・7区も含め、これからに向けたメンバーが力をつけています。トヨタ自動車九州は力んでいないチームなので楽しいですよ」
トヨタ自動車は浜野健ではなく尾田賢典が4区。駅伝のエース区間は浜野の方が実績があるが、09年日本選手権1万mでは3位の尾田が先着した。
「35歳の浜野に無理はさせられないと、春から尾田か高橋(謙介)と考えて、中部予選の頃からエースはオマエだよと、尾田には言ってきました」
三島慎吾の調子が良く、中部予選を走った内田直将が外れてしまった。目標とする3位を狙う態勢はでき上がっている。
Hondaは藤原正和、コニカミノルタは黒崎拓克を抜擢。藤原は東日本予選7区区間賞。黒崎は同じ東日本予選7区で区間2位。藤原はその後も1万mの記録会で好走するなど、状態を上げてきていた。明本樹昌監督も12月中旬頃から藤原の4区起用の可能性を、口にしていた。
「ウチが戦えるのは4区と5区。距離が変更になった前回から、このコンビで行けたらと思っていましたが、これなら大丈夫だろうというところまで上がってきてくれた。前半は離されないように行き、4・5区でなんとかしたい。5区が終わって先頭集団にいれば勝負ができる」
2003年に初マラソン日本最高の2時間08分12秒で走り、5年前には当時の最長区間である2区を走っている藤原。2年前に7区の区間賞を取り、2カ月後のびわ湖マラソンに出場したが2時間12分07秒で9位。今回踏ん張ることができれば、完全復活へのステップとなるか。
一方のコニカミノルタは、松宮隆行の状態がしっかりと上がってくれば松宮だった。それでも、コニカミノルタのメンバーのなかでエース区間を任されたのだから、黒崎の状態もかなり良いと見てよさそうだ。ただ、チーム状況が悪くて本人にプレッシャーがかかると、大崩れしてしまう可能性もある。踏ん張りどころだろう。
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