2009/6/14 日本学生個人選手権3日目
山田は自己2番目タイの17m52
自身の進歩を確認できた点とは?


 男子砲丸投は織田記念で18m13を投げ、昨年の3強(畑瀬聡、村川洋平、大橋忠司)を破った山田壮太郎(法大)が注目された。日本選手5人目の18m台プッターは、この日は17m52だったが昨年までの自己記録とタイ。
「木曜日まで追い込んだ練習をしていて、今日は疲れているなかでどのくらい投げられるかを見る試合でした。身体の軸はよかったのですが、金土と疲れが出ていてよくありませんでした。ビデオを見たのですが、切り返してパワーポジションに入るところで右に乗らず、左にも乗り切っていません。そうすると右が上がってこないのです」
 織田記念ではスウィートスポットに入り力感的な手応えを感じなかったが、この日は「すっぽ抜け的な感じで、上半身の力だけで押すような投げになってしまった」(山田)と言う。

 それでも自己2番目タイ(※)の記録を出せたのは、先のコメントにもあるように“身体の軸”を上手くつくれるようになっているからだ。
「昨年までに比べ、パワーポジションに入るところで軸がしっかりとつくれるようになりました。今日はほんのちょっとのズレで乗り切れませんでしたが、悪いなりにできるようになっています。軸がしっかりできるようになったのは、グライドを意識しなくても、思うところに持ってこられるようになったからです」
 日本記録保持者の畑瀬聡(群馬綜合ガードシステム)もグライドの際に右脚で蹴り出すのでなく、左脚でリードする感覚で行なっている。
「去年はまだ蹴る感覚でしたが、今年は蹴る意識をなくすことができるようになりました。勝手に動ける身体になっています。そうなると考えるところが1つ少なくなります。いっぱい考えるとしんどいですから。その分、パワーポジションに入るところに集中できて、一瞬だけ切り返せば18〜19mは行きます」

 ある投てき指導者によれば、グライドの際に蹴る意識がなければ、いきなり投げの動作を意識できるという。「左脚のリードは投げる意識の中での動きですから」
 ただ、それが低い記録の選手でもできるのかというと、そうとも言い切れないようだ。グライドに入る前の姿勢で重心を後方に持って行く必要があるが、「ギリギリまで耐えるには、身体の裏側の筋力が必要」だという。体の小さい選手がそれに応じた筋肉を付けたとしても、砲丸の16ポンド(7.26kg)という絶対的な重量は変わらない。
 日本人には付きにくいといわれている“裏側の筋肉”だが、山田はこの冬のウエイトトレーニングで、重点的に裏側や腰回りを鍛えたと織田記念の際に話していた。

 自身の進歩を、しっかりと確認できた山田。日本選手権では再度、先輩プッターたちと激突する。
「絶対に勝とうとか、100%の力を出し切ろうとか考えると疲れます。50%から70%の力を出して、3番以内に入ればいいと思っています」
 3強と対等に戦うのは2試合目。この気負いのなさが、プラスに働きそうな予感もする。

※織田記念の2番目の記録が17m56だが、内外の慣例にしたがって1試合1記録のカウントの仕方をすると、自己2番目の記録となる。トラック種目は1試合でも複数記録を数える。これはラウンドが違うためで、フィールド種目でも予選と決勝であればカウントする。


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