2009/6/13 日本学生個人選手権2日目
前週の鳥取で学生新連発の高橋は
予選のみの出場で技術をチェック
「日本選手権では無心の走りを完成させたい」

 ユニバーシアード代表の参加は4人と少なかった今大会。走高跳の高張広海と棒高跳の鈴木崇文の東海大跳躍コンビ、女子走幅跳の佐藤芳美(福岡大)と跳躍勢が3人。高張が2m20、鈴木が5m20、佐藤が6m22で順当勝ちを収めた。
 トラック代表では高橋萌木子(平成国際大)が唯一出場。前週のスプリント挑戦記録会 in TOTTORIにも出場し、福島千里(北海道ハイテクAC)には敗れたが、第1レース11秒44、第2レース11秒32と学生新を連発したばかり。
 今大会は100 m予選(11秒62・+1.1)と200 m予選(24秒01・+1.0)だけを走り、ともに準決勝以降は棄権した。

 日本選手権まで2週間というなかで出場した意図は何だったのか。
「実戦でしかできないこともありますから、練習するよりもここで試合に出場しました。でも、本数を重ねるのは厳しい時期でしたから。そのなかで、今の力は出せたと思います」
 課題としている“ジャマイカ式スタート”だけでなく、直前の陸連合宿の“勝負脳”の講習で参考になったことも、取り入れてみたという。
「スタート前に一度、水平目線でイメージをつくることや、フィニッシュを実際の10m先だと思って走ることなのです。水平目線は走っている最中にも意識してみましたが、バランスが崩れにくくなる効果があると思います」

 この日試した“勝負脳”講義で教わった方法など、選手の力を出し切る術に関しては福島が優れていると高橋は感じている。
「そういうことが(いつでも)できているのがチー(福島の愛称)だと思います。だから彼女は、自分の走りをすればタイムがついてくる。うらやましいですね。自分はチーがいないとタイムが出せません。ですから、彼女がいる状況でどう戦うか、戦略を考えて練習するしかありません」
 高橋は5月、関東インカレに2週にわたって出場。福島のいない大会である。福島がいるときよりも、自分の動きに集中しやすい。課題とする“ジャマイカ式スタート”を、スタートから何歩下を向いたまま走るとか、“意識してできること”を多く試してみた。前述のように日本学生個人選手権も同じ位置づけだった。

 しかし、高橋が本領を発揮できるのはむしろ、勝負に集中したときだ。
「高校時代の自分は技術とかあまり考えず、ただ走っていただけ。インターハイもそうですし、高校記録の南部記念とかもとにかく、集中することだけで“後半抜く”イメージを持つことができました。今は色々と技術を勉強していますから、集中することはできてもどこかで技術を意識していました」
 そのなかでは、鳥取の第2レースが無心の走りに近かったという。「顔が上がるのはその分、少し早くなりましたが、“後半抜く”感覚は、0.01秒差だった織田記念や大阪GPよりも持つことができました」と、高橋は鳥取で話している。
「これからは技術を意識しなくてもできるようにして、日本選手権ではどこまで無心で走れるか、だと思います。その走りを完成させていきたいと思います」
 日本選手権は200 mが木・金に行われ、100 mが土・日に行われる。高橋は自分に有利になるタイムテーブルだという。
「今は200 mの方が自分に向いています。そこで勢いをつけて100 mに臨みたいですね。今やっているスタートも、200 mのカーブの方が低い姿勢を保ちやすいですし」
 動きへの意識の仕方が小さい方が、無心になりやすい。その意味でも、200 mが先に行われることでコツをつかみやすいかもしれない。


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