2009/10/17 箱根駅伝予選会
個人トップは1年生・村澤で、初20kmで59分08秒
全日本、箱根では主要区間に出場予定
15kmで外丸和輝(東農大4年)がスパートして集団を抜け出すと、それを追ったのは1年生の村澤明伸(東海大1年)だった。15.4km付近で外丸の前に出ると、高橋優太(城西大4年)を加えた3人が縦長の集団に。しかし、スピードの手綱を緩めない村澤に、先輩選手たちはついていくことができず、終盤の4kmは村澤独走の様相を呈した。
「15kmからが勝負と思っていたので、(外丸さんに)追いついたときは、そのまま勝負に出るしかないと思いました」
外丸は9月の日体大長距離競技会1万mで途中棄権、宇賀地強(駒大4年)は出雲全日本大学選抜駅伝(3区区間賞)から中4日の出場、深津卓也(駒大4年)も故障から復調して間もない。有力4年生たちが完璧な状態ではなかったが、村澤の方も初20kmということで万全な状態だったわけではない。
実際、「10km過ぎで左脚(足?)裏、15km過ぎで両ふくらはぎがつりかけた」という。全体に平坦なコースだが、15km過ぎからは小さなアップダウンも続く。7位以下の選手の大半は、最後の5kmでペースを落としている。そのラスト5kmで2位に15秒の差をつけた村澤の強さが際だった。
「高校(駅伝)では考えられない沿道の観衆の多さと、これまでにない注目のされ方で緊張しました。でも、スタートしてからは自分の走りができたと思います。タイムも満足できるものです」
佐久長聖高出身。同高OBの佐藤悠基(日清食品グループ)とは入れ替わりで東海大に入学した。高校時代のトラックの記録では佐藤や、その1学年上の上野裕一郎(エスビー食品)に及ばなかったが、昨冬の駅伝やクロスカントリーの実績では2人に匹敵する強さを感じさせた。2月の千葉国際クロスカントリー後に同高の両角速監督も、その点を認めていた。
今シーズン前半のトラックは高校時代の延長で取り組んだようだが、夏から20kmの試合を見据えてのトレーニングも取り入れ始めた。東海大・新居利広駅伝監督によれば「8月前半と9月後半に、他の選手たちと同じように25kmや30kmの距離走もやり始めました」という。しかし、「(予選会は)初20kmなので、トラックのようにレースをつくるところまで求めるのは酷。流れに乗って走ってくれれば良かった」と、タイムまでは期待していなかった。
トラックでは5000m、1万mの2種目で高校時代の自己記録を更新し、ユニバーシアードにも出場。日本インカレ1万mでは2位(日本人トップ)と、学生トップ選手の仲間入りをすでに果たしている。
「練習にもテーマを持って取り組み、それに対して、“こう走れた。ここがダメでした”と報告ができる選手。今日のレースもそうでした。こちらも、“次はこうしよう”と課題を与えやすい」と新居監督。
ユニバーシアードに遠征した長距離関係者からも、「なんでも1人でやることができる選手」という評価も出ていた。
佐藤との比較を求める質問が出たのも当然だった。
新居監督は「道路の記録はコンディションによって違うので」と、箱根駅伝で1年時から3年連続区間新を出した偉大な先輩との安易な比較に釘を刺しつつも、「トラックでは悠基と同じレベルに行ってほしい」と期待を口にした。
2週間後の全日本大学駅伝は、さすがに最長区間への起用はないようだが、前半の主要区間への出場を予定しているという。箱根の区間の適性は? という質問も出たが、「彼ならどこでも走れると思いますよ。1区でも2区でも、上りでも下りでも。目標を与えられれば、彼なら前向きに取り組むことができる」と新居監督。
チーム状況の変化に左右されるところだが、特殊区間の可能性も出てきたわけである。
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