2008/7/27 陸連短距離合宿公開練習
北京五輪直前の各選手の状態は?
主要選手コメントを抜粋して紹介

@ミズノ・トリオ編

内藤真人(ミズノ)
「過去最速の自分になれるように」
「ヨーロッパ遠征の2試合目でアキレス腱に違和感があったので、オリンピックに向けて無理のない、負担のかからないトレーニングを、3週間の期間のなかでやっています。この合宿で治療とトレーニングをしている感じでは、最悪ではありません。自己新、日本新、そして夢である決勝までたどりつけるように頑張ります」
 昨年来取り組んでいるアレン・ジョンソン(アメリカ)仕込みの技術(腰高の姿勢を維持することや、リード脚と抜き脚を降ろすタイミングの部分など)が、どこまで身についているかという質問に対し、次のように答えている。
「春先のケガでハードル練習ができませんでしたが、日本選手権2週間前から取り組んで、今、意識してやっています。今シーズンの調子なりにハードル技術はまとまってきています。僕はいつも、夏に調子が上がってきます。まずは8月18日の予選で、100%以上の力を出せるようにしたいです」
「(アテネ五輪以降の4年間で)色々な経験をして、色んな過程をたどってきました。世界舞台に対する考え方も変わってきました。2005年あたりから海外単独遠征にも取り組み、ロブレス選手や劉翔選手と一緒に走る機会もあり、精神的にも少し大人になれたと思います。北京五輪の110 mHは過去最速のレースになりますが、そのなかで自分も過去最速の自分になれるようにしたいですね」

末續慎吾(ミズノ)
「今回はパターンが違います。事前に完成させて臨むのでなく、本番で完成させる」
「(この日の練習を休んだのは)昨日の走る練習が予想よりも感覚が良くて、そう感じたところでやめましたが、一夜明けて筋肉の張りが、体の状態が追いつかないところになってしまいました。体がビックリしているんですよ。(合宿中も)春先のシーズンに比べておかしい、何をするにもレベルが違うと思って様子を見ながらやっていましたが、昨日がチェックの1回目で、最終日(の今日)になって張りが出ました。これまで試合の後でも張りが出ていなかったので、まあいいか、ということで。(今季はこれまで)小さい筋肉しか使っていなかったんでしょうね。着く位置とかも悪く、ケガとかもあって。股関節周辺に硬さがあった。それだけでもコロッと変わります」
「ここで万全にするよりも現地で万全にしたいわけです。以前はタイムも量も追って世界大会を迎えていました。でも、今回はパターンが違います。事前に完成させて臨むのでなく、本番で完成させる。大学の頃と違って長い期間でのピーキングは難しくなっています」
「オリンピックでここまで、という感じの目標の立て方はしません。自分の持っているものや経験を、どこまで引き出せるかだと思っています。プレッシャーは、(200 mではシドニー五輪準決勝で伊東浩司に敗れたのを最後に)日本選手権まで8年間勝ち続けたことで感じてしまったものに比べれば小さいものです。この先、陸上を続けていくにあたって、自分の可能性を知りたいというか、きっかけにしたいというか。それが決勝進出であればいいとは思いますが、それに対して焦ってやる必要はなくて、やることをキチッとやっていけばいい」
 末續は以前、北京五輪後は100 m中心にやりたいと話していたが。
「わからないですね。また200 mをやりたくなるかもしれません。(北京五輪でわかる)完成度とかにもよります。自分でも(200 mのことや自身の可能性を)知りたくなるかもしれないし、それを引き出せて、それが僕の能力なら自信にもなる。それにトレーニングをつけていけば、と考えられるようになるかもしれません。(その判断の)きっかけに北京五輪がなれば。あと先のことを考えていないわけではありませんが、まずは毎日を一生懸命にやることを考えています」

成迫健児(ミズノ)
「準決勝で14歩を押し通すことになるかもしれません」
 日本選手権のレース直後に、右脚のアキレス腱に痛みがあったことを明かした成迫。どのような状態で日本選手権を迎え、その後の経過はどうなのだろうか。
「4月の初め頃に痛くなって病院に行ったら、腱と筋の癒着部分に炎症があって、薬を飲みながら大阪GP(49秒00・1位)に出場しました。プレ五輪(48秒87・1位)の後も痛いのを我慢してハード・トレーニングをしていましたが、かなりの炎症があって、超音波で調べたら中の方に腫れがあったんです。プレ五輪までは走りが崩れるほどの痛みではありませんでしたが、日本選手権の2週間前に出たレース翌日に痛みが出て焦りもありました。レース前に言うことはしませんでした。自分に暗示をかけてもいましたし。でも、右脚で押せなくて1台目が届かないような状態で。そこは余裕で行けていたところで、そうなったのは初めてでした」
「日本選手権後の1週間は歩くだけで、それからジョッグから始めて、2週間を過ぎて流しを始めました。日本選手権まで体力的なトレーニングは積めていたので、あとはバランスを乗せるところをしっかり意識してやってきました。(今は)痛みは完全にとれていませんが、バランスがとれ、力も上手く伝わるようになりました。昨日初めてスパイクを履きましたが、走りの精度が上がっている感覚です。基礎的なことを我慢してやってきたので、パワーアップしている感じがあります」
 成迫のインターバルの歩数は6台目までが13で、8台目までが14、9・10台目が15だった。今シーズンに入る前、14歩を最後まで押し通すプランも持っていたが、それを実行に移す計画はあるのだろうか。
「練習の中では順調にやってきましたが、今のところレースではやっていません。本番直前(の判断に)なると思います。今の走りでは、かなり行けそうな手応えがあります。予選はいつも通りの走りで行って、準決勝で14歩を押し通すことになるかもしれません。やってみる価値はあると思っています」
 北京五輪を「集大成」とする旨の発言をしていたことがあった成迫だが、7月25日に24歳となったばかり。その真意はどこにあるのだろうか。
「そのつもりで挑みます。ロンドン五輪までの間に事故や病気など、自分に何が起こるかわかりませんし、全ての選手が目指しているのが北京五輪。北京でやめようかという選手もいらっしゃいますから、自分もそこに最高の状態で臨みたいんです」


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