2008/2/10 千葉国際クロスカントリー
村澤&森、ジュニアは男女とも2年生が優勝!
“駅伝の意識の仕方”には違いが


強さを感じさせたロングスパート
村澤は偉大な先輩達に迫れるか

 村澤明伸(佐久長聖高)が一段と強さを増した。12月の全国高校駅伝1区では区間4位で、日本人区間1位の三田裕介(豊川工高)とは2秒差。1月の全国都道府県対抗男子駅伝5区では、区間2位を31秒も引き離す韋駄天走りで優勝した長野を独走体勢に持ち込んだ。そして2月のクロスカントリーでも、勢いに乗る2年生が力を発揮した。

 先頭集団には1万m28分選手の中山卓也(須磨学園高)や、全国都道府県対抗男子駅伝の1区を制した柏原竜二(いわき総合高)らもいたが、「余裕があったら5kmくらいから出ようと思っていた」という村澤が5km過ぎでペースアップ。6km手前あたりで完全に集団から抜け出した。最後は谷川智浩(拓大)が4秒差まで迫ったが、距離を2〜3kmも残す地点で果敢にスパートし、その後を1人で走りきった村澤の強さがタイム差以上に印象に残った。

「特に変わったこと(準備)をしてきたわけではありません。ただ、トラック・駅伝と色々とありますが、全国大会という目線でやってきました。そこで戦えることは嬉しいですし、全国的な優勝は初めてなのでとても嬉しいです」

 佐久長聖高では通常の練習も、クロスカントリーを走ることが「トラックやロードよりも多い」(村澤)という。両角速先生が丹精を込めて作った1周600mのクロカンコースがある(詳細はベースボール・マガジン社刊行の「陸上競技 強豪校の(秘)練習法、教えます!」参照)。
「調整は主にクロカンコースでやりました。坂の長さは違いますが、坂の傾斜角度などは変わりません。普段の練習もそこでやっています。一日平均で15kmくらいでしょうか」

 県外組も多い佐久長聖高にあって、塩尻市出身の生粋長野県選手。中学では全国大会に出場していないが(それでも3000mは8分56秒台)、1年時には5000mで14分24秒50の高1歴代5位をマーク。両角先生は当時から「来年(2007年)には、佐久長聖歴代のエースたちの2年時と同じようなタイムを出す選手」と話していた。
 昨年は10月に14分09秒61(日体大長距離競技会)と、先輩たちと同じように14分ヒト桁台を記録。インターハイは6位(日本選手権では八木勇樹、三田裕介、中山に続いて4番目)、国体は5位(日本選手3位)。
「今年はすべての大会でトップを狙っていきます。留学生がいるのでインターハイは日本人トップということになりますが、都大路では勝ちたい。同タイムで負けた都大路の悔しさは、都大路でしか晴らせません」

 駅伝を強く意識しながらも、決してトラックをおろそかにしないのは、先輩たちが実証している。「憧れる存在」と話す上野裕一郎(中大)や佐藤悠基(東海大)ら高校記録を樹立した先輩たちに、村澤はトラックの成績でも迫っていくだろう。

スピードを生かした下りでのスパート
森が目標とする“3つのこぶ”

「3つのこぶ」と強調したのは、女子5000m優勝の森彩夏(須磨学園高)。
 “3つのこぶ”とは、2006年の世界クロカンが行われた海の中道海浜公園(福岡市)のコースのことではなく(ちょっと懐かしい)、大きな目標を3つ設定している須磨学園高のシーズン戦略のことだ。
「インターハイと駅伝と、クロスカントリーの3つに山を持っていくことを、いつも長谷川先生から言われています」
 小林祐梨子(現豊田自動織機)入学後は駅伝も、トラックのスピードをより生かす方向で臨んできた。“3つのこぶ”戦略は、発想としては、それと同じと考えてよさそうだ。

 森は昨夏のインターハイでは1500mで3位(日本人トップ)。「ラストの下りで(特徴である)スプリントを生かす」という戦術が功を奏し、竹中理沙(立命館宇治高)を振り切った。
 06年に優勝した12月の全国高校駅伝は5位。小林、高吉(現三井住友海上)ら錚々たるメンバーが2つ上の学年にいて、2007年はチームの端境期的なところもあった。今年は5位チームから5人中4人が残る。
「世界クロカンも、もちろん出ます。世界ジュニアも出してもらえたら、経験を積むのと同時にしっかりと結果を出し、インターハイでは頂点に立ちたい。そのあとも2つのコブがありますから、年間を通じてしっかり走りたいと思います」

 森は最後まで「駅伝で絶対に勝ちたいので」というニュアンスの言葉は口にしなかった(駅伝の質問が出なかったから、かもしれないが)。1つの大会だけを目標にすると、プレッシャーにつながることもある。
 男子の村澤とは違う意識の仕方だが、チームによってアプローチ法は違って当然であるし、同じだったら面白くない。来年の千葉国際クロスカントリーまで両チームがどんな1年間を過ごすのか。そこも楽しみになった。


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