2008/2/3丸亀ハーフマラソン
女子はフィレスが圧勝、2〜4位に尾崎、小崎、弘山
3人の並走の裏にあったものとは?


@フィレス、4回目のハーフで優勝3回
マラソン進出は北京五輪後?
 女子はフィレス(ホクレン)が1時間07分57秒で圧勝。日本選手をまったく寄せ付けなかった。5km毎の通過&スプリットは以下の通り。
5km     15分33秒
10km     31分24秒(15分51秒)
15km     47分38秒(16分14秒)
20km  1時間04分19秒(16分41秒)
finish 1時間07分57秒(3分38秒)

 例年ほど強くはなかったが、後半が向かい風となるのが丸亀のコース。最後の5kmは高低差約15mと、若干の上りでもある。終盤で並走していた男子選手たちが後れてしまったのも、ペースダウンの一因だったかもしれない。
「最後5kmを16分ジャストか、欲を言えば15分台で走れる力が欲しいですね。そうなれば、1万mで30分台は出せるはずです」(秋山コーチ)
 トラックではケニア代表を経験しているが、ハーフマラソンは今回が4回目。1時間11分18秒(06年松江1位)、1時間10分00秒(06年札幌3位)ときて、昨年の全日本実業団ハーフで1時間09分50秒で優勝した。そして今大会の1時間7分台。長めの距離への適応力もあるのかもしれない。
「マラソンは北京が終わってから。ハーフで1時間6分台を出したら考えます」と秋山コーチ。早急なマラソン転向はなさそうだが、将来的には怖い存在となる可能性もある。

A弘山、名古屋に向けてレース後半で“粘る”ことに成功
「心のどこかで自己記録(2時間22分56秒)を更新したいと思っています」
 日本勢では尾崎好美(第一生命)、小崎まり(ノーリツ)、弘山晴美(資生堂)の3人が集団をつくってレースを進めた。2位の尾崎の5km毎は以下の通り。
5km     16分16秒
10km     32分43秒(16分27秒)
15km     49分13秒(16分30秒)
20km  1時間05分57秒(16分44秒)
finish 1時間09分30秒(3分38秒)

 並走していた3人だが、置かれているポジションも、このレースまでの練習の流れも異なる。10km過ぎで弘山が後れ、17km付近で小崎も引き離されたが、2人とも“マイナス要素”があったわけではない。

 名古屋国際女子マラソン出場を予定している弘山晴美は「練習で走り込んできたので、入りの1km、2kmくらいでもうきつかった」と言う。「それでも10km過ぎまでついていって、後半も苦しい状態の中で粘ることはできました。タイム(1時間10分09秒)も予定通りです」
 シドニー五輪、アテネ五輪とマラソンの代表切符は逃している(トラックでは3大会連続出場中)。「トラックもマラソンも、五輪選考会に出ることはないだろうな」と思ったという。それが39歳となった今、三度(みたび)チャレンジしようとしている。
「昔ほど力んではいません。体調を第一に考え、勝負というよりも、私自身の最高のものを出したいな、と思っています」
 そうはいっても、夫の弘山勉監督が「弘山晴美が出る以上は、それなりの覚悟で出る」と言っているように、あわよくば、という程度ではない。
「目標は2時間23分か24分です。と言いつつも、心のどこかで自己記録(2時間22分56秒)を更新したいと思っています。それが、きつい練習を我慢するモチベーションにもなっています」
 弘山のマラソンが中途半端になることはない。

B小崎はラスト3kmで成長を実感
「今の状態でマラソンは無理ですが、どこかでは走りたい」
 小崎まりは昨年10月の時点ですでに、この冬のマラソン出場回避を決めていた。「オリンピック選考会だからと、いい加減な状態で出るわけにはいかない」という、小崎なりのポリシーがあってのことだが、丸亀の走りを見ると、傍目にはマラソン出場も可能ではないか、と思えてしまう。
「世界選手権の後、20kmを走ったのは1回だけで、タイム設定もしないで走りました。今日の走りでも、まだまだです。もう少し良いペースで押していけないと。ラスト6km、5kmからは気持ちの弱さ、練習でやっていない部分が出てしまいました」
 それでも、1時間9分台にまとめることに成功した。
「後半、動かないかなと思っていましたが、初めて丸亀を走ったとき(2002年:1時間09分33秒で優勝)よりもラスト3kmは動きましたね。マラソンを経験することで、力がついているとわかりました」
 練習が積めれば、マラソンも走る覚悟にはなっている。
「今の状態でマラソンは無理ですが、どこかでは走りたい。それに向けて1年間、色々なレースをやっていきたい。私の中では全国都道府県対抗女子駅伝が1戦目で、今日が2戦目。今日は形にもなって、引退していないことは示せたと思います(笑)」
 昨年1月の大阪国際女子マラソン終了時には、3月の結婚後は主婦業をメインにしながら走り続ける予定だった。世界選手権代表となって競技中心の生活を続けたが、今は主婦業優先の部分も出てきている。朝練習などはしない日もあるという。
 だが、小崎の“ちょっと本気”の競技生活は、しばらく続きそうな気配があった。

C尾崎が“自分の感覚で押した走り”で日本人1位
「どういう結果になってもマラソンが嫌いになるとは思いません。名古屋では北京五輪の選考にからみたい」
 尾崎好美も初マラソンを名古屋で予定している。だが、弘山のように走り込みの最中に出たのではない。謙遜の意味もあったのだろうが、「私だけ調整をして出場した」という。それでも、勝負やタイムを強く意識していたわけではなかった。
「1時間10分を目標にしていましたが、走り出した後はタイムを考えず、今の状態で追い込めるよう、自分の感覚で走りました。順位には満足していますが、(小崎を離した17kmで)そんなにスパートした感じではないんです」
 実業団シーズンも丸8年。日本選手権では初出場の2002年以来、必ず12位以内に入ってくるが、最高順位は06年1万mの4位。ハーフでは日の丸をつけても、トラックではなかなか代表に届かない。チーム内でも、爆発力では勝又美咲や垣見優佳に追い越されそうな雰囲気もある。
 第一生命・山下佐知子監督は尾崎のマラソン進出を次のように説明する。
「元々、性格は我慢強く、マラソン向き。最初の頃は、それがケガにつながっていました。適性もありますよ。ヘロヘロになったり、低血糖にはなりません。でも、マラソン練習に入ったのは12月の駅伝のあと。いきなり練習を変えるのもよくないので、40km走とかはやっていません。ジョグで45kmを1回やったのと、あとは距離を切って5km何本とかですね」
 山下監督は高い目標を設定することに消極的だった。「マラソンを嫌いになってほしくない」という気持ちからだが、その点については尾崎自身に別の考えがあった。
「監督にはそう言われましたが、私はどういう結果になっても、マラソンが嫌いになるとは思いません。世界で戦うことを考えたらトラックは厳しいですけど、マラソンなら少しは可能性がある。名古屋では北京五輪の選考にからみたい思いも少しあります。大阪の森本(友・天満屋)さんのタイム(2時間25分34秒)を上回りたい。ハーフまでは良いペースで押していけると思うので、今後、もう少し走り込みをして、20km以降を押していける持久力をつけたいと思います」
 ハーフは4本目で、06年の札幌こそ1時間13分03秒(16位)だったが、昨年の全日本実業団ハーフ(3位・1時間10分54秒)、世界ロード(13位・1時間09分26秒)と安定している。トラックとハーフの安定ぶりが、マラソンでは爆発力となる可能性は十分ある。


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