2008/4/13 埼玉県春季記録会
佐藤美保が久しぶりのネガティヴ・スプリット
課題の“切り換え”には手応え
女子800 m1組には日本記録保持者でアテネ五輪代表の佐藤(旧姓・杉森)美保(ナチュリル)が出場。スタートからトップに立ち、そのまま後続を引き離す一方の展開になるかと思われた。ところが、200 mを過ぎて後続との差(3〜5m)がそれほど広がらない。400 mを過ぎて再び差を広げ始め、最後はかなりのスピード感のある走りでフィニッシュした。タイムは2分07秒96だが、かなりの低温(10℃強?)だったことも考慮する必要がある。
元々、記録や勝負を意識したレースではなく、気楽に出られることもこの大会出場への選択基準だったという。
「今年は(オリンピックのある)大事な年。サーキット前にレース勘を取り戻す試合に出たかったんです。ちょうど、国体予選を兼ねたこの大会があり、初心に戻って出場しました」
200 m毎の通過&スプリット・タイムは以下の通り。
200 m 30秒3
400 m 1分04秒7(34秒4)
600 m 1分36秒3(31秒6)
800 m 2分07秒96(31秒7)
※200・600m計測はAS氏、400 mは寺田計測
佐藤には珍しく、後半の方が速いネガティヴスプリットだった。
「いつ以来でしょうか? 覚えていないくらい久しぶりです。でも、後半は余力をもって走れましたし、ゴールまで気持ちよく行けました。去年は、前半がそれほど速くなくても、そのペースでズルズル行ってしまうこともありました。切り換えができたのが、去年と違うところです」
佐藤がずっと課題としてきたのが、切り換えである。ネガティヴという言葉からはマイナスの印象を抱きがちだが、一概にそうとは決めつけられない。今の佐藤なら、課題をクリアするための手段ともとらえられる。
佐藤は4×400 mR日本代表(2001世界選手権)のスピードを生かし、前半から59秒前後のハイペースで入り、ペースダウンするものの押し切る展開が多かった。その特徴を変える必要はないが、国際レースでの勝負を考えたときも、あと0.5秒速ければ2分を切れた記録面を考えたときも、僅かでも切り換えができれば大きな武器となる。
2003〜05年に2分0秒台を3回出しているが、京セラに所属していた当時とは練習の組み立て方がまったく違う。そこの比較はできないが、短距離のトップ選手が揃う福島大での練習という部分で、手応えを感じることはできている。
「70秒走というメニューがあるんですが、一緒に走ると前半は必ず離されます。でも、400 mあたりから徐々に詰めて行けますし、抜くこともできたりします。400 mが余裕をもって通過できる。同じ練習をやっていても、去年とは違いを感じています。みんなが世界を目指しているなかでやれていることも、大きいと思います」
五輪連続出場のためには標準記録(A:2分00秒0、B:2分01秒30)が必要になるが、あくまでもピークを合わせるのは6月末の日本選手権。試合になれば記録は狙っていくが、調子を無理に上げる方法はとらない。「B標準では選ばれるかわからない、と認識しています」と佐藤。簡単な状況でないことは理解できている。
「でも、絶対にあきらめたくないんです。昨年(佐藤敦之と)結婚して、一緒にやって来られたのは、一緒に北京に行くことを目標にできたから。向かっていく気持ちでやっていきます」
佐藤夫妻の賢いところは、同じ目標を掲げながらも、それに対して力んでいないことだろう。佐藤敦之が代表を決めた福岡国際マラソン前に美保がしたことは、“普段通りに一緒にいる”ことだった。
「それは今も一緒です。私の五輪出場を、特に意識したことはしていません。向こうも普通にしてくれています」
夫婦揃っての五輪同時出場は、陸上競技では過去にないという。実現すれば一大快挙だが、佐藤夫妻は“普段通り”のスタンスでそれを目指している。
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