2008/5/3 静岡国際
男子400 mH そのA
向かい風の影響で49秒44も、“前半型”に手応えを得た成迫
「5台目を21秒を切るくらいで通過したい」


 成迫健児(ミズノ)にとって計算外だったのはバックストレートの向かい風だった。
「スタートしてカーブの間は何も感じなかったのですが、直線に入ったら向かい風。普通なら6台目まで13歩で行くのですが、今日は行けませんでした。3〜4コーナーもあおられてしまった」
 男女400 mで好記録が出た午前中は上手い具合に風が回っていたが、男女の400 mHの行われた14時台は、バックストレートが向かい風になってしまった。400 mと400 mHでは、バックストレートが追い風でリズムに乗った方が、記録が出る傾向がある。

 今季の成迫は、前半を速く入ることに重点を置いている。去年の世界選手権は0.01秒差で決勝進出を逃した。それらの国際レースの経験から、300 m地点での位置取りを目安にした。
「第4コーナーでは良くて4番目くらいの位置なんです。ラストの直線は海外の選手も僕も、同じくらいのスピードでゴールまで行きます。今日のレースでも意識したのですが、前半で海外の選手に置いて行かれないようなイメージを描いています」
 1台目のタッチダウンのタイムは、過去にないタイムが出ているという。と同時に、450mのトライアルでも、静岡国際に向けての練習で53秒28(おそらく手動計時)が出た。400 mで46秒02の自己記録を出したときは53秒8だったという。練習の300 mを目安にする選手も多いが、成迫は「300 mよりも450mの方が400 mHのリズムに近い」という理由で採用している。

成迫の08年静岡国際と主要大会のタッチダウンタイム
  08静岡国際 06大阪GP=
日本歴代2位
  05国体=
自己2番目
05日本インカレ
=自己3番目
  04国体=
初48秒台
1台目 5.97 5.97 5.86 5.86 1台目 5.91 5.91 5.95 5.95 1台目 5.87 5.87
2台目 9.74 3.77 9.59 3.73 2台目 9.55 3.64 9.69 3.74 2台目 9.62 3.75
3台目 13.56 3.82 13.30 3.71 3台目 13.34 3.79 13.47 3.78 3台目 13.34 3.72
4台目 17.45 3.89 17.15 3.85 4台目 17.17 3.83 17.34 3.87 4台目 17.13 3.79
5台目 21.33 3.88 21.02 3.87 5台目 21.12 3.95 21.22 3.88 5台目 21.07 3.94
6台目 25.50 4.17 24.98 3.96 6台目 25.18 4.06 25.38 4.16 6台目 25.18 4.11
7台目 29.86 4.36 29.25 4.27 7台目 29.44 4.26 29.71 4.33 7台目 29.44 4.26
8台目 34.44 4.58 33.61 4.36 8台目 33.72 4.28 34.07 4.36 8台目 33.82 4.38
9台目 39.08 4.64 38.01 4.40 9台目 38.15 4.43 38.63 4.56 9台目 38.41 4.59
10台目 43.81 4.73 42.58 4.57 10台目 42.73 4.58 43.15 4.52 10台目 43.12 4.71
フィニッシュ 49.44 5.63 47.93 5.35 フィニッシュ 48.09 5.36 48.35 5.20 フィニッシュ 48.54 5.42
※すべて寺田による手動計時

為末の世界選手権銅メダルのタッチダウンタイム
  01世界選手権決勝 05世界選手権決勝
1台目 5.64 5.64 5.62 5.62
2台目 9.28 3.64 9.22 3.60
3台目 13.10 3.82 13.03 3.81
4台目 16.88 3.78 16.82 3.79
5台目 20.78 3.90 20.74 3.92
6台目 24.89 4.11 24.79 4.05
7台目 28.96 4.07 28.91 4.12
8台目 33.22 4.26 33.22 4.31
9台目 37.71 4.49 37.78 4.56
10台目 42.41 4.70 42.52 4.74
フィニッシュ 47.89 5.48 48.10 5.58
01年は野口純正氏、05年は寺田による手動計時

 下の表からわかるように、過去に好タイムを出したレースの5台目のタッチダウンは、21秒0〜2というケースが多かった成迫。静岡国際は「21秒を切るくらいで入る予定だった」と言う。超がつく前半型の為末大(APF)が、銅メダルを取った2回の世界選手権は20秒8前後だったが、と話を振ると「そのくらいでは行きたいですし、オリンピックで勝負するには必要だと思います」と、きっぱりと言い切った。
 実際の静岡国際の5台目は21秒3(寺田による計時)。向かい風を考慮すれば、「20秒台で行けた手応えはあった」と言う。
 もちろん、ただやみくもに前半を突っ込むと言っているのではない。
「体力的なところだけでなく、技術的なところが伴えば、後半もそんなに落ちないはず。後半もスピードを維持できれば(五輪などでも)勝負ができる」
 成迫の前半型への変身が注目される。


寺田的陸上競技WEBトップ