2008/5/3 静岡国際
45秒21の初A標準突破&日本歴代5位
金丸“学生バージョン”確立への第一歩
久しぶりに金丸祐三(法大3年)らしい強さを見ることができた。持ち前のスピードを生かして200 mまでに数mリード。300 mまでの曲線で堀籠佳宏(富士通)に追いつかれたが、最後の直線でグングンと抜け出してきた。シニアに混じって勝ち続けた高校時代も、そこが強かった。大学入学後も日本選手権やインカレのタイトルを取ってはいるが、今回ほど圧倒的な終盤の走りは久しぶりだ。
フィニッシュ・タイムは45秒21で、2位の堀籠に1秒22もの大差をつけた。2年ぶりに自己記録(45秒41・2006年大阪GP)を更新し、男子400 mのA標準(45秒55)突破第一号となった。
「最低でもA標準をクリアするのが目標でした。動きは良いと自分で感じていましたし、出雲(300 mで32秒32のアジア新)後の調整も順調でした。今の状態からすると妥当な記録。44秒台も明確に意識できるようになりました」
レース後に「大学生初です」と金丸は口にしている。2年前の5月の自己新に、大学の練習で出した意識はないのだろう。その年は日本選手権のタイトルも取ったが、最大目標の世界ジュニアは7位。秋の国体で負傷して、アジア大会は4位と不本意な成績が続いた。
昨年6月の日本インカレで走りも生活面も“いい感じ”になってきて、日本選手権は3連勝。しかし、純地元である大阪で行われた世界選手権では、スタート直後に肉離れをしてしまった。国内は何とか勝てても、国際大会では良い所がない。それが学生競技生活の2年間だった。
「学生後半で巻き返します」と、静岡のレース後に金丸は宣言。学生2年間で苦しんできたこと、学んできたことが、結果に表れ始めた手応えがあるのだろう。
「苅部監督が自分の考え方を尊重してくれて、やりたいようにやらせてもらってきました。ただ、以前は感覚だけで判断していたところがありましたが、今は苅部監督の運動生理学の理論などで、裏付けも持てるようになっています。近くに為末(大・APF)さんがいらっしゃいますが、プランニングとか戦略の部分など、やっと理解できるようになってきました」
学生2年間の成果が現れつつある金丸だが、静岡のレースは展開的には高校時代と同じパターン。「クセで後ろの選手を待ってしまった。意地でも負けられないという意識も働いていたと思います」と言う。練習的にも「長い距離でやるタイプじゃない」(法大・苅部俊二監督)と大阪高の練習パターンをもとに行っているようだ。
「今回の45秒21を踏まえて、戦略的なメドはたっています。今日も200 mから300 mで一度落としています。(ためることで勝利には結びついているが)ロスになっているところでもあります。そこを上手く維持してラストにつなげられれば、44秒台は見えてきます。A標準を切ったことで、冷静なプランニングができると思う」
200 〜300 mを上手く走れたとき、そして日本人2人目の44秒台を出したときに、金丸祐三の“学生バージョン”が確立したことになる。
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