2008/4/20 日本選抜和歌山大会
目標はA標準ではなくB標準
“2番手”土井の意図するところは?


「とりあえず、もう1回B標準(74m00)を投げることです」
 当面の目標を聞かれた土井宏昭(ファイテン)はこう答えた。昨年は6月に74m08(日本歴代3位)を投げて世界選手権に出場したが、今年のオリンピックは室伏広治(ミズノ)がいる限り、A標準を投げないことには出られない。記者たちはA標準という答えもどこかで期待しつつ、質問しているのだが…。
「あっさりA標準とか言ったら、ハンマー投界からブーイングをされますから」
 残された時間は2〜3カ月。その間に4mの自己記録更新が可能かどうか、今年30歳になる選手がわからないわけはない。

 目下のテーマは「最近(投げ、技術が)荒れているので安定させること」と言う。第1戦の大川杯は70m99、今大会が70m34と記録的な浮き沈みはない。だが、和歌山のシリーズは64m10−69m01−70m34−69m59−F−Fと安定しなかった。
「最近、引っ張るクセが出てしまっています。(70m34は)今日の中では一番良かったのですが、姿勢も崩れ思い切り振り切れていません。すぐに左に逃げるように振り切るのでなく、左側に大きく振り切りたいのですが。それでも、体重が増えてるから(70mくらいは)飛んじゃうんです」
 体重は130kgで(試合時は異なる)、昨年のこの時期よりも5kg以上増えている。
「“投げ力”はついているのですが、そうなると技術がダメになってくる。スピードを上げようとするとダメですね」

 しかし、良い兆候もある。14ポンドのハンマーでは80mくらい投げられるようになっている。“16ポンドの記録プラス6〜7m”というのが、ハンマー投界で言われている14ポンドの適正距離。昨年まではプラス3〜4mだったという。室伏も数年前の陸上競技学会で講演した際、軽い重量で遠くに投げることを推奨していた。
「スピードが出せている、ということですから」と、土井もその点は認めている。

 ただ、そのスピードが16ポンドでは生かせていないのが、現在の土井ということだろう。生かすためには技術を安定させること。それができたとき、ずっと目標にしている室伏重信の日本歴代2位、75m96が見えてくる。
「そこまで一気に行っちゃうと、燃え尽きてしまうかもしれません。今年はあまり、考えていませんね」
 雑談中ではあるが、「ハンマー投は30歳から。38歳までやろうかな」というコメントも出た土井である。
「連れて行ってもらえるかどうかは別として、74mを投げればベルリン(09年世界選手権)のB標準です」
 土井の“もう1回”は、まだまだ頑張るという意思表示だった。


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