2008/10/6 チャレンジ! おおいた国体4日目
池田と花岡が1cm差の“好勝負”
“名勝負”にならなかった背景は?
女子走幅跳は池田久美子(静岡・スズキ)と花岡麻帆(千葉・成田国際高教)が1cm差の接戦を展開した。
1回目に花岡が6m38を跳んでトップに立ったが、池田は1回目がファウル、2、3回目が6m32と6m31で、ベスト8決定時は6m33の桝見咲智子(福岡・九電工)にもリードを許していた。ただ、花岡も2、3回目をパスしたことから、アキレス腱の状態がまだ万全ではないと推測できた。
ベスト8に入った4回目に「やっとエンジンがかかった」と池田が6m37を跳び、花岡に1cm差に迫った。花岡もピットに4回目以降はピットに立ったが6回目まで連続ファウル。池田も5回目はファウルと後がなくなった。しかし、持ち前の勝負強さを6回目に見せ、6m39と花岡を1cm逆転して優勝を飾った。
1cm差の攻防は、かつて日本選手権で何度も見せた2人の激突を思い起こさせた。下の表が2人の日本選手権成績である。2001年に日本記録と学生記録の応酬を見せたときが4cm差。2003年が1cm差で池田が、04年は3cm差で花岡が勝った。極めつけは05年で2人の最高記録が6m69で並んだだけでなく、セカンド記録の6m61も同じで、サード記録で池田が3cm差で勝利を手にした。
花岡と池田の日本選手権対戦成績
花岡麻帆 |
|
池田久美子 |
順位 |
記録 |
風 |
年 |
順位 |
記録 |
風 |
1) |
6m29 |
+0.8 |
1994 |
16) |
5m59 |
±0 |
10) |
5m76 |
+1.7 |
1995 |
4) |
6m07 |
+1.9 |
8) |
5m80 |
+1.4 |
1996 |
14) |
5m60 |
−0.8 |
4) |
6m04 |
−0.2 |
1997 |
dns |
|
|
|
|
|
1998 |
4) |
5m92 |
+0.6 |
9) |
6m00 |
+2.0 |
1999 |
17) |
5m76 |
+4.3 |
1) |
6m46 |
+2.9 |
2000 |
2) |
6m37 |
+1.9 |
1) |
6m82 |
+1.6 |
2001 |
2) |
6m78 |
+0.8 |
1) |
6m55 |
+0.2 |
2002 |
2) |
6m28 |
−0.9 |
2) |
6m63 |
+0.5 |
2003 |
1) |
6m64 |
+0.8 |
1) |
6m67 |
+2.9 |
2004 |
2) |
6m64 |
+2.3 |
2) |
6m69 |
−0.1 |
2005 |
1) |
6m69 |
+1.1 |
2) |
6m60 |
+1.1 |
2006 |
1) |
6m75 |
+0.5 |
8) |
6m02 |
±0 |
2007 |
1) |
6m59 |
±0 |
5) |
6m32 |
+0.9 |
2008 |
3) |
6m42 |
+1.0 |
「花岡さんに跳ばれて、久しぶりにドキドキワクワク。すごく楽しめました」と池田。
往時を思い起こさせる接戦ではあったが、記録のレベルは落ちている。好勝負ではあったが、名勝負とは言い難い。2人の現状がそうさせている。競技後のコメントからもその辺がうかがえる。
池田は昨年、今年と「きっちりやり過ぎていた」という反省から、「真面目すぎず、息を抜きすぎず」という練習を行い、試合もその延長上に位置づけている。
「スーパー陸上から試合が3週間続いていますが、リラックスして、赴くままに体を動かしています。練習もスーパー陸上前からそれほどしていません。何を練習していくか、自分の体と相談しているところです。日本選手権やオリンピック前は、(今から考えると)変に焦りがあり、練習をやり過ぎていたところもありました。助走練習も頭で考えすぎていたかもしれません。今は試合が練習と位置づけて、試合中に1本1本、感覚で修正しています。気楽に、くだけた感じでしばらくやってみるのもいいのでは、という判断です。それで、高いレベルでやっていけるようになるといいのですが」
考えすぎないためには? という記者からの問いには「まだわかりません。それを見つけるためなんです」と答えている。こうしていく、という結論が出ていない状態は、大学で復活した以降では初めてだろう。確実に言えるのは、以前と同じことをしていても同じパフォーマンスは得られないということ。違うアプローチで、高いレベルを維持するための方法を模索中だ
花岡は今年から高校の教員となり、校務と指導を優先する立場になっている。
「競技だけを考えていた頃より、視野は広がりました。競技の結果が全てじゃない。でも、試合に出るからには結果も出したい、という考えでやっています。しかし、この夏はとにかく忙しくて、練習ができていません。以前の半分以下でしょう。久しぶりに集中してジャンプをしました。正直、6m15を跳べたらいいかな、と思っていました。こんな練習で6m38を跳べたのは、国体だったからかもしれません。日本選手権のような勝負とは違って、千葉のためにという気持ちがあります。国体は特別なんです」
花岡は元々、勝負に対する気持ちは強い選手。上記コメントにもあるように、競技をするからには高いレベルで、という気持ちも持っている。もう一度池田と名勝負を? という問いかけに対し「私次第ですね」と答えた。
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