2008/10/25 日本選手権リレー
女子4×100 mRはナチュリル2連勝
実業団短距離チームの
理念へ確かな前進
2走・栗本は6年連続Vメンバーに

 女子4×100 mRはナチュリル(渡辺真弓・栗本佳世子・松田薫・丹野麻美)が44秒75で圧勝。1走からリードを奪い、全区間で2位との差を広げていったように見えた(4走で平成国際大・高橋萌木子が3位から2位に上がったが、“2番目の選手との差”は開いたと思われる)。前日の準決勝でマークした44秒70の大会記録には届かなかったが、まったく危なげのない完勝だった。
 2走の栗本は大学1年から4年まで、福島大で4連勝を達成。実業団入りした昨年からはナチュリルで2連勝。6年連続で優勝メンバーに名を連ねた。後述するように記録は不本意だったが、勝ったことに対しては笑顔を見せた。
「6回連続で勝てたことは嬉しいです。今年は全日本実業団も勝って、国体も(福島県チームで)勝てて、全部勝つことができたんです」

 4走の丹野は9月のアジア・オープンから体調を落としていたが、「完璧には戻っていませんが、比較的自分らしい走りはできました」と、自身の走りにはまずまずの手応えだったようだ。
 チームの走りについては次のように話した。
「バトンが若干上手くいかなかったところもありましたが、しっかりと対処できたと思います。改善すべき点はありますが、そこまで悪くありません」
 2走の栗本は、自分のところでミスがあったという。
「出るところでバランスを崩してしまいましたし、松田に渡すところでもてこずりました」
 松田が出るのが早かったのか、栗本の最後のスピードが遅かったのか、そこまではわからない。結果的に3走が走り出してすぐに、危ない位置関係になった。

 しかし、そこで松田が絶妙の微調整を見せた。通常、テイクオーバーゾーンの中間ライン直前でバトンを受け取る。
「その直前くらいで“あっ”と思って、スピードを軽く緩めました」と松田は振り返る。その直後に栗本から「遠い!」と声が掛かったという。声が掛かってから緩めると、速度の落とし方は大きくなる。
 松田は「ずっとやっていますから、気配で分かるんです」と話す。ミスを最小限に防いだ松田の好判断だった。

 栗本・松田のリレーは日本選手権でも3年前にあったし、インカレを含めると数回になるのだろう。だが、今大会のナチュリルは走順を予選・準決勝・決勝とすべて変えている。
予 選:松田・渡辺・栗本・木田=45秒41
準決勝:渡辺・丹野・松田・栗本=44秒70
決 勝:渡辺・栗本・松田・丹野=44秒75
 福島大→ナチュリル選手でも、栗本以外に優勝メンバーを続けている選手はいない。10月は時期的に疲労が出ることが多い。また、4×400 mRと2種目をこなすため、メンバーを固定しにくい面もある。どんなオーダーでも勝てるようにしておく必要がある。
 それに加え、各選手の適性を見極め、少しでもタイムを短縮する可能性を探ってもいるのだろう。

 栗本は記録に不満があるという。
「優勝はメンバー的に当たり前。それよりも記録を狙っていました。夏に東北総体で44秒40を出しているので、次は44秒台前半、できれば43秒台を出したいと思っていました。私のところでロスしていなければ、44秒台前半は出せていたと思います」
 43秒台は過去、日本チームが3回しか出していない。その記録をナチュリルが出すことの意味は大きい。
“実業団チームが学生よりも高いレベルで頑張ることで、ナショナル・チームのレベルを上げる”。ナチュリルが創部したときに掲げた理念に近づくことになるからだ。


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