2008/8/23 北京五輪メダリスト会見
4×100 mRメンバーがレース翌日に会見
レース前後の状況、心境がつまびらかに


「昨日は一睡もできず、朝も興奮冷めやらぬ状態でしたが」(塚原)
「銅メダルという結果が日本短距離陣のスタートだと思えた」(末續)
「朝原さんに気持ちよく走ってもらうために走ったというか」(高平)
「レース直後は色んな感情が渦巻いている状態で、嬉しいやら、重圧から解き放たれた感じやら」(朝原)

MC 表彰式が今晩なのでメダルは手元にありませんが、一夜明けて、現在の気持ちは?
塚原 昨日は一睡もできず、朝も興奮冷めやらぬ状態でしたが、気持ちが良い感情というのでしょうか。ああ、良かったなぁとか、すげーなぁとか。朝まで朝原さんと一緒に過ごさせていただきました。
朝原 変な**みたいやないか。(会場に笑い)
塚原 語らせていただきました。
末續 塚原に全部言われちゃったんですが。僕はちょっと寝られたんですが、メダルが首にかかるまで実感がわかないのですが。とにかく、メダルを取った瞬間からがスタートだと思って、朝がどういう気持ちになるかな、と思っていたんですが、銅メダルという結果が日本短距離陣のスタートだと思えたことが、非常にいいことだと。
高平 末續さんと一緒でちょっと眠れたのですが、起きて一瞬、夢かなと思うくらい、まだ実感がわいていませんでした。さきほど新聞を読ませていただいて、現実的にメダルが取れて、自分の中で大きいことをやれたチームなんだなという思いが、やっとここに来てわいてきたかな、と思います。本当に昨日は無我夢中というか、冷静ではあったんですが、朝原さんに気持ちよく走ってもらうために走ったというか、みんなが魂を込めて走ったレースが銅メダルという結果を生んで、それが幸せというか、満足できる部分です。
朝原 レース直後は色んな感情が渦巻いている状態で、嬉しいやら、重圧から解き放たれた感じやら、わけがわからない感じでした。今はだいぶ落ち着いてきて、新聞だったりテレビだったり、我々のレースをじっくり振り返ることもできて、すごいことをやったんだなと、感動しています。それよりも、というか今は、セレモニーが楽しみです。

「リレーに対する思いが強すぎて、そこだけにとどめておけないというか」(塚原)
「自分の置かれた状況の中で役に立つ1つの引き出しになると思いながら、僕も話していたんですが」(末續)
「その話で結束力が高まったというよりも、結束力が高いからこそできた話しが多かった」(高平)
「100のあとだったり200のあとだったり、衝撃を受けたというのが選手の正直な気持ち」(朝原)

Q.こちらに来て食事のあと、深夜まで話し合いをされていたと聞きましたが、作戦面などもあると思いますが、どのような話をして気持ちを高めて来たのですか。
塚原 100 mが終わって3日、4日あったんですが、リレーの予選の前の日とか、夜遅くまでみんなで固まって、座談会じゃないですが、していました。気持ち早かったかもしれませんが、もう次のことについて、何をしようかとか話し合ったことを覚えています。それだけリレーに対する思いが強すぎて、そこだけにとどめておけないというか。僕の場合100でセミファイナルまで残ってそこで感じたことを、表現しづらかったのですが僕なりの言葉で話しながら、先輩方に整理してもらって、特に朝原さんに“どうでしたか”と感想を聞いたりしていました。ホント次の目標というものは100の決勝の舞台だと、それを見たときに心に強く決めましたね、ハイ。
末續 毎晩というわけではなかったですけど、経験豊富な先輩や仲間と、試合前に感じたこととか、試合が終わった人間ならどう感じていたかとか、リアルタイムで話しました。それが競技を続けて行くにあたって、自分の置かれた状況の中で役に立つ1つの引き出しになると思いながら、僕も話していたんですが見ていましたね。僕もリレーに対してのモチベーションにすごくなりましたし、その後の競技人生ということにおいても、オリンピック期間中にそういう意見交換ができたことは良いことかな、と感じました。
高平 僕はほとんど聞いていたというか、外から見ているような感じで過ごしていました。みんな色々考えているなと。チームJAPANとして気持ちというか、方向性が一緒だから考えられる部分が多いんだなと。真面目な話もありましたし、ふざけ合った話もありましたが、窓を開けていないのにコウモリが入ってきたのに気づかないくらいに集中して話していました。その話で結束力が高まったというよりも、結束力が高いからこそできた話しが多かったと思います。銅メダルを取ったところから、何かスタートさせないといけないという話もしていました。
朝原 リレーこそ念願のメダルを取れましたが、100のあとだったり200のあとだったり、衝撃を受けたというのが選手の正直な気持ちです。アテネでも感じた世界との差が、4年経ってみても縮まっていませんでした。これからファイナルを狙う選手、セミファイナルを狙う選手が、どうやっていけば世界に通じるか真剣に話し合いました。なんとなく練習して、戦略とかなく、単にハードな練習をすれば勝てるっていうものでもないわけです。次のオリンピックに向けて短距離陣が、どうすれば頑張れるかを話し合ったことに意義があります。

「土江コーチに数字をしっかり言われたことで、4人とも目標を明確に定めることができ、練習しやすかった」(朝原)
Q.バトンパスをより正確に行うため、どのような練習をしてきたのでしょうか。それが今回の結果にどうつながったのでしょうか。
朝原 土江コーチが。
(会場に笑い)
朝原 土江の名前を出しただけなんですが…。土江コーチが編み出した練習法が、バトンゾーンのそこを目指して走れっていうのがありまして、前の走者と次の走者がスムーズな形で、スピードロスなく渡るポイントを指摘されて、練習をしてきました。これまではなんとなく呼吸が合えばいいという感じで、何mとかいうキッチリしたものではありませんでした。例えば(バトンゾーンの前後10mを加えて)40mで考えて、そこを3秒75で走れば37秒台が出せるという。数字をしっかり言われたことで、4人とも目標を明確に定めることができ、練習しやすかったというのが(他のメンバーを見ながら)…ありますよねー。
MC 何か補足することがあれば、末續さん。
末續 ……(笑)。僕らはずっとやってきているメンバーなんで、雰囲気でやってきていました。それを客観的に、この辺で渡したら一番いい速度で渡ると指摘してもらいました。指標ですね。それを僕らがちょっとずつ取り込んでいった、という感じですね。

「僕は実は(反響の大きさが)逆ビックリなんです」(末續)
「去年の世界選手権ようなアクシデント的な選手が出なかった」(朝原)

Q.(朝原、末續選手に)トラック種目では80年ぶりのメダル獲得という快挙でしたが、メールとか電話とかの反響はどうだったでしょうか。そのなかでも、びっくりしたり印象に残ったりしたものはありますか。
末續 僕は実は(反響の大きさが)逆ビックリなんです。何年もメダル、メダルと思ってやってきましたし、やっとというか、今年というタイミングでメダルが取れたわけです。そういうことをやったんだという気持ちもありますが、どうだった、ああだったとオモチャをいじるような気持ちで4×100 mRの話をしていました。たどり着いたというか、出るべくして出たというか。反響の大きさはもう、皆さんの******。メールの数も異常でした。あとはとにかく、リレー種目、短距離を予想以上にピーアールできたことが嬉しいですね。
朝原 昨日はなかなか寝付けなくて、塚原が外に出ていく音を聞いて、あいつも眠れないんだなと思って、2人で下に降りてインターネットを見始めました。“リレー”“銅メダル”で検索したらものすごい数の記事がヒットして、それにまず驚きました。ただ、僕が思うには、銅メダルもすごいことですが、前回のアテネ五輪の4位も僕たちにとって衝撃的でした。しかし、これだけの報道の扱いに違いがあるということは、メダルを取るか取らないか、3位と4位は雲泥の差あるんだと驚いています。
Q.朝原選手に陸上競技の男子キャプテンとしてお答えいただきたいのですが、ここまでの陸上競技の成績をどう見ていますか。そして、明日の男子マラソンにエールがあれば、お願いします。
朝原 全体的に入賞とかメダルが少ない大会になってしまいましたが、去年の世界選手権ようなアクシデント的な選手が出なかったのは、いいことというか、順調に仕上げてきたのだと思います。ただ、世界もオリンピックに向けて強化をすごくしてきていると感じました。メダルや入賞は簡単にはいかないな、という実感です。明日のマラソンは最後の種目。僕たちのメダルの勢いが少しでも、マラソンの追い風になればいいと思います。

「(足長は)塚原とは28歩。このメンバーでは結構やっていて、直前の練習で縮めたりプラスしたりしても一足長くらい」(末續)
「末續さんからはレース前に、『あとはオマエに任せるよ』と言われたので、任された分は0.5歩かな、と」(高平)
「決勝のウォーミングアップでは24歩にして空振りしてしまって」(朝原)

Q.塚原選手、以外の3人にお聞きします(塚原ガクっとなる)。スタートのマークは何足長に置きましたか。そして、どうしてその足長にしたのか、戦術的な意味や、チーム状態を表す部分がそこにあれば、一緒にお教えください。
末續 待ってました。僕は塚原とは28歩かな。高平とは29.5歩くらいです。グラウンド状態とか予選の感じとかで変わってきますが、このメンバーでは結構やっていて、直前の練習で縮めたりプラスしたりしても一足長くらい。いつもと同じでしたし、予選とも変えずに行きました。
高平 末續さんとは29.5歩にしました。鳥の巣の風はサブトラとは吹き方が全然違います。サブでは30歩でやっていて、追い風もかなり吹いていて、そのくらいでという感じで出てみました。サブトラでは僕の出が遅れてしまって、詰まってしまう状態でした。でも、鳥の巣の中に入ったらそういうことは関係なくなってしまう。0.5歩詰めて思い切り出ました。末續さんが良い流れで渡してくれると信じて、確信を持った歩数にしたいなと。1歩減らしたら詰まってしまうと判断して。末續さんからはレース前に、『あとはオマエに任せるよ』と言われたので、任された分は0.5歩かな、という感じで。バトン練習ではいつも、1・2と3・4を先にするので、2・3があとから練習する形になります。回数的には少なくなりますが、なぜか本番では上手くんです(と言って末續の顔をのぞき込む。会場から笑い)。そんなに心配要らないというか、そこまでつめすぎてやる区間ではないというか。自信をもって出られました。
朝原 高平君とは予選のウォーミングアップでは25歩でやって、ものすごいピタリで渡ったので、これは危ないなと思って、予選レースでは24歩にして、ちょっと安全めに出ました。少し詰まり気味のバトンでした。昨日の決勝のウォーミングアップでは同じく24歩にして、練習から思い切り出ましたがなんと空振りしてしまって、バトンが渡りませんでした。でも距離は良かったので、それでやり直しをせず、本番では合うだろうということで、決勝レースもそのまま24歩で行きました。もう思い切り、躊躇なく走れました。

「このリレーメンバー4人でガチンコで、みんな一緒に走りたい」(朝原)
「昨日は一番気持ちよく渡ったバトンかなと思う」(高平)
「必ず悔いのないレースができることが伝統だと思う」(末續)
「一歩一歩が最後だなと噛みしめて向かえたことが嬉しかった」(塚原)

Q.朝原選手は残りの試合を、どういう思いを込めて走りますか。他の3人は次の世界選手権・オリンピックに向けて、どういう形で朝原選手のサポートを希望しますか。
朝原 スーパー陸上には出る予定でいます。全日本実業団は未定です。スーパー陸上は最後になるかもしれないので、キッチリと調整して、できればこのリレーメンバー4人でガチンコで、みんな一緒に走りたいと思います。
高平 こういう結果を残して次と言われても、今の段階ではなかなか…。アテネから4年間リレーメンバーに入れてもらって、朝原さんにバトンをつないで来ました。昨日は一番気持ちよく渡ったバトンかなと思うので、そういう思いとか、魂とかが詰まったリレーが、今後のメンバーでも、残った3人も(補欠の)斉藤(仁志)も、またメンバーが入れ替わるなかで、伝統という形で残していけたらと思っています。
末續 朝原さんが入ってやるレースはもうないと思います。今回も悔いのないレースでした。これからまたでき上がるチームがどんなチームになるのかわかりませんが、必ず悔いのないレースができることが伝統だと思うので、また作っていきたいなと。朝原さんにはプライベートでも色々、相談をしたいと思っています。
塚原 僕には4年越しの想いとか、4年分の歳月はありません。初めてのオリンピックで一番年下で、出る杭になって叩かれたり、時にはドーンと構えて強心臓だということをアピールしたりして、競技場とかでは極力負担をかけまいとして、我が道をずっと来させてもらってきました。朝原さんと走るのがこれが最後と思うと、寂しい思いもあります。去年から1年間同じチームでやらせてもらって感無量というか、嬉しい思いなどいっぱいだったというのもありまして、昨日コールルーム(にorから)向かう一歩一歩が最後だなと噛みしめて向かえたことが嬉しかったです。さきほど(スーパー陸上で)ガチンコでというお話しがありましたが、この4人で雌雄を決してみたい思いはあります。そのなかでも負けたくありません。思い切りスーパー陸上で走りたい。

「スランプだと思っていましたが、そうじゃないかもしれない」(末續)
Q.末續選手は今回のスランプから、どんなことを模索して昨日の走りにつなげたのですか。今後、オリンピックなどで個人種目のメダルを狙うにあたって、どんなことを考えていますか。
末續 うーん…。スランプだと思っていましたが、そうじゃないかもしれないですね。このオリンピックが終わって自分がどう変わるか、どう思うかというのがあったんですが、僕らは走ることで満たされるし、走らないと満たされませんから。とにかく、自分がこの脚で走れないと思うそのときまで、どんな自分になるかわからないですが、思いっきりまた走ろうかなと思っています。メダルその他、目標もありますが、今の自分の現状と、それをどう高めていくかをまず考えて、軌道に乗ったらまたメダルと、しっかりですね。この4年は僕にとって成長だと思っています。絶対に無駄にしたくありません。何かの結果を出すことでまた、ちゃんと走りたいと思っています。


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