2007/10/13 神戸女子選抜長距離
5000m高校最高を狙った絹川は競技生活初の途中棄権
高校駅伝宮城県予選出場は微妙


 絹川愛(仙台育英高)が突然、インフィールドに倒れ込んだ。女子5000mAの最終4組目、2600mを30mほど過ぎた地点でのこと。スタート直後に先頭に立ち(写真)、ワルグル(九電工)とのマッチレースを展開していただけに、一瞬、何が起きたのかわからなかった。起き上がることができず担架が持ち出されてきたが、それには乗らず、渡辺高夫先生に支えられて医務室に向かった(写真)。その間、約5分。レースは残り2周を残していた。

 絹川は世界選手権後に2試合に出場。9月22日に鴻巣ナイターの5000mで15分27秒98の高校歴代2位、10月8日の国体3000mで9分07秒30(2位)で走っていたが、コンディションは今大会に合わせてきた(レース前に渡辺先生に取材をして判明)。藤永佳子(資生堂、当時諫早高)の持つ5000mの高校最高記録、15分22秒68の更新が目標だった。「世界選手権前よりも状態は良い。風と相手次第では出せる」と、渡辺先生は手応えを感じていた。風は若干強めではあったが、状態が良いはずのレースで起こったアクシデントだった。

 症状は左足外側のくるぶしから7〜8cm上の腓骨筋の痛み。「周回を重ねるごとに痛みが増してきました」と絹川。最後は激痛になったと、渡辺先生には話したという。
 400 m毎の通過タイムは以下の通り。1600mを過ぎて1周1分15秒に落ちてしまっていた。
距離 通過 400m毎
400 01:12.8 01:12.8
800 02:26.2 01:13.4
1000 03:02.3  
1200 03:39.0 01:12.8
1600 04:53.6 01:14.6
2000 06:08.8 01:15.2
2400 07:24.4 01:15.6

「これから重要な大会も控えているので、大事をとりました。(レース前に)違和感がなかったこともありませんが、疲れから来たものだと思っていました。今も、少し痛みはあります」と絹川。渡辺先生によれば、絹川が途中棄権をしたのは、ロードレース、練習を含めても初めてだという。
「本人は先のことを考えてやめたと言っていますが、よっぽどのことだったと思う。動きが良すぎるとこういうこともある。国体もやってきましたし、負担が大きかったのかもしれません。4〜5日経っても痛みが残ったら、仙台で精密検査をします」

 このあとは駅伝。10月20日には宮城県予選があるが、出場は微妙なところ。絹川は「走りたいですけど、団体戦ですから今日みたいになるわけにはいきません。監督と相談をして決めます。涙が出そう」と、悲痛な面持ちで語った。
 渡辺監督は「他の選手が県予選を走って京都で脚光を浴びるのは自分、という状況は許せないタイプ。しかし、今回は本人の意向を無視して、脚の状態を見て決めたいと思います」と、指導者側の判断を優先させることを明言した。

 4月の兵庫リレーカーニバル1万mでジュニア日本新を記録した絹川。同じユニバー記念競技場を舞台とした今大会の5000m高校最高でトラックシーズンを締めくくろうとしたが、残念な結果に終わった。自身の状態を正確に把握できなかったのが原因だが、誰しも一度は経験しないとわからない部分でもある。今回のアクシデントが故障予防の判断力を身につけるきっかけとなれば、お釣りが来る。残りの競技人生は長いのだから。


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