2007/6/29 日本選手権1日目
全種目の簡単な記事と個人的な懺悔だけど外したのは1種目だけ
1日目

<優勝者>
男子5000m 松宮隆行(コニカミノルタ) 13分52秒64 ※2連勝
〃 走幅跳 荒川大輔(大阪陸協) 7m90(+0.7)※初優勝
〃 やり投 村上幸史(スズキ) 79m85 ※8連勝
女子10000m 福士加代子(ワコール) 32分13秒58 ※6連勝
〃 3000mSC 早狩実紀(京都光華AC) 9分46秒59 ※2連勝、大会新
〃 走高跳 青山 幸(大阪陸協) 1m81 ※2連勝
〃 棒高跳 近藤高代(長谷川体育施設) 4m30 ※2年ぶり5回目、大会タイ
〃 ハンマー投 綾 真澄(丸善工業) 63m43 ※2年連続5回目


男子5000m
 松宮隆行(コニカミノルタ)が3100mからロングスパート。松岡佑起(順大)だけが食い下がったが、3800m付近で振り切られた。松宮の3100mから3200mは14秒2、3300mまでは14秒9というスピード。スパートした時点とずれるが、3200m以降の周回は63秒台、62秒台、62秒台、64秒台という押し方で、以前のようにスパートしてから一度落ちることがなかった。
 レース序盤で先頭に立った上野裕一郎(中大)は、松宮のスパート後も集団の前方と好位置に付けていたが、終盤で力つき8位に。松宮についた松岡は、実業団勢にかわされたが6位に踏みとどまった。
 レース前半で先頭を引っ張った三津谷祐(トヨタ自動車九州)は、松宮スパート後も集団後方で苦しい展開だったが、最後の200 mを27秒1と鋭いスパートを見せ、直線で3人を抜いて2位に。5月にA標準を突破済みで、世界選手権代表を確実にした。松宮隆行も今後チャンスがあれば、標準記録突破を狙いに行くという(まずは日本選手権1万m)。
 優勝者予想は三津谷だったが、松宮が強かった。前述のようにスパート後にスピードをゆるめずに押し切った。三津谷もゴールデンゲームズのときほどの体調ではなかったようだ。

男子走幅跳
 優勝者に予想した荒川大輔(大阪陸協)が優勝。大阪GPで見た外国人選手の助走を参考に、跳ねる走りからピッチを強調した助走に変更。助走距離が短くなったという。それでも、踏み切り技術が狂うことはなく、今大会参加者中、最もハイレベルで安定していた。「1回目に7m90が出て、その後の試技を全部狙いに行った」のが失敗だったという。6回目は8m20付近に着地したが、明らかにファウル。実測では8m10くらいだったかもしれないが、本人は「そんな簡単なものではありません」と、安易な考え方はしていない。
 学生選手が2〜4位を占めたが、3位の小森大輔(鹿屋体大・日本インカレ3位)の健闘が光った。品田直宏(筑波大)がベスト8に入れなかったのは、何か故障でもあったのか?

男子やり投
 優勝者予想の村上幸史(スズキ)が8連勝を達成したが、薄氷の勝利だった。4回目までは72m83で4番目。5投目に79m85と一気に記録を伸ばした。5回目のB標準突破。他に突破者がいない現状なので、世界選手権代表は確実だろう。
 前半の投てきは明らかに“思い切り”がなかった。左脚がついても、踏ん張らずに小さな動きで投げている感じだった。その原因は、「2週間半前に左脇腹を肉離れ」(村上)したことだった。5投目だけ、ものすごい気合いで動きを本来のものに戻した。
 今季、「一瞬にしてしっかりした軸を作れるようになった」、と和歌山で話していた村上だが、それには左脇腹が重要だった。そこでしっかりとブロックし、タメをつくれるようになっていた。その新しい動きが、負担を掛けたのかもしれない。
 前半は60m台ともたついた荒井謙(七十七銀行)が、4回目に74m台を投げると、6回目に75m67と記録を伸ばして2位に。

女子1万m
 予想通りに福士加代子(ワコール)が6連覇を達成。
 湿度が高すぎ記録が狙えるコンディションではなかったが、渋井陽子が「私は標準記録(A標準)を破っていない」と引っ張った。しかし、5000m通過は16分20秒と記録は絶望的に。
 7000mで福士がスパートすると、渋井と絹川の2人が追走。8400m付近で絹川が、8800m付近で渋井が振りきられた。渋井はA標準こそ切れなかったが、B標準は突破済み。標準記録はAABの組み合わせでも3人まで出場できるので、代表入りの可能性はある。本人も「世界選手権にはすごく出たい」と意欲的だ。まずは「明後日の5000m」と、福士の連勝阻止に燃えている。
 絹川は東北インターハイの疲れもあり、最後は大きくペースダウン。同じA標準突破者の脇田茜(豊田自動織機)に激しく追い込まれたが、0.12秒差で逃げ切った。フィニッシュ直後にトラックに倒れ込んだが、テレビインタビューでは「トラックの女王の福士さんと、マラソンの女王の渋井さんに続くことができ、プリンセスになったみたい」と、聞いていて楽しくなるコメントは発してくれた。ただ、その後は体調が悪くて医務室に。救急車で病院に運ばれた。

女子3000mSC
 早狩実紀が予想通りに2連勝。
 6月のビスレットゲームではA標準を再度突破していたが、4月の織田記念では日本選手に初めて迫られていた。どういうレース展開をするかが注目されたが、スタート直後からハイペースに。1000mは3分04秒の通過。2000mは6分27秒とペースダウンしたが、最後は踏ん張って3回目のA標準突破を果たし、世界選手権代表に内定した(今大会第1号)。第一人者の貫禄を見せたレースぶりだった。
 特筆すべきは2位の辰巳悦加(和光アスリートクラブ)。9分57秒02とB標準を突破し、代表入りに近づいた。今春、スターツから離れた上野敬裕監督が設立した和光アスリートクラブだが、現在選手は2人、スタッフも2人だけで、スポンサーを探しながら活動している状況。上野監督の目から大粒の涙がこぼれていた。

女子走高跳
 優勝者予想の青山幸(大阪陸協)が1m81で2連勝。先週の大阪府選手権で1m90を跳んでいる。そのときも今回も待ち時間が長かったが、その間の緊張の仕方が今回の方が大きく、疲れが違ってしまった。1m86はジャンプの頂点がずれていて踏み切り位置の問題かとも思ったが、しっかりと踏み切れず、ジャンプ自体が小さくなっていたためだと言う。
 世界選手権代表は地元枠が適用されるかどうか。先週の“大台”(1m90)は好材料だが、日本選手権の優勝記録がどう判断されるか。
 同じく地元枠候補の男子走幅跳の荒川大輔は、日本選手権の優勝記録はまずまずだったが、“大台”(8m)がない。地元枠とはいえすべての種目に適用されるわけではない。全体の枠もないわけではない。判断は全て、陸連に委ねられる。

女子棒高跳
 当日朝に優勝者予想に変更した近藤高代(長谷川体育施設)が2年ぶり5回目の優勝。有効期間の昨年1月1日以降では初めてB標準(4m30)を突破した。世界選手権代表入りに大きく前進。
 昨年、2度B標準を突破している錦織育子(三慶サービスAC)が4m10で2位。今後、A標準(4m45)に成功すれば、代表入りは可能となる。

女子ハンマー投
 優勝者予想の綾真澄(丸善工業)が63m43で2年連続5回目の優勝。1投目に53m台で本人も動揺したというが、後半でなんとか立て直した。室伏由佳の欠場にも、「だったら“自分が、自分が”と変に動揺してしまった」という。
 湿度によってサークルの感触が変わることにも手こずったが、世界選手権までにどういった条件になっても「こだわらないようになりたい」という。そのくらい自信を持てるような練習を積んでいきたい、ということだろう。


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