2007日本選手権種目毎展望
ハードル・障害編

男子110 mH
 内藤真人が東日本実業団で13秒43の日本歴代2位。冬期にアレン・ジョンソン(アメリカ)と一緒に練習したが、その点はまだ生かしきれていず、ハードル練習を多くした成果だという。完全な状態ではない中での記録。13秒3台を出せる力はついている。
 だが、その内藤に3年ぶりに勝ったのが田野中輔。大阪GPで自己2番目の13秒59をマークした。その田野中に東日本実業団で先着したのが八幡賢司で、13秒58と大幅に自己記録を更新。内藤とて絶対とは言い切れないほど、他の選手たちも力を付けている。


 陸マガに書いた3人による優勝争いになりそうだが、東日本実業団4位の大橋祐二(ミズノ)が、東京選手権、栃木県選手権、埼玉県選手権と都県選手権3連勝。13秒74まで記録を伸ばしてきた。3人の一角を崩すかもしれない。吉岡康典にも、そろそろ光が当たってもいい頃だが。


女子100 mH
 織田記念で池田久美子が13秒02の日本歴代2位をマークしたが、昨年に続いて走幅跳に専念する。そうなると、石野真美の2連勝が濃厚だ。昨年すでに13秒08とB標準を突破済み。今季は13秒35にとどまっているが、日本リスト3位との差は0.28秒。東日本実業団でも2位に約0.5秒差をつけた。脅かす存在は見あたらない。
「走りとハードルが噛み合いませんでしたが、徐々に良くなっています」と石野。練習で10本のうち何本かは、13秒08の頃の感覚で走れているという。13秒0台の記録も可能性がある。

 陸マガでは石野のことにしか触れなかった。ライバル誌も同様。それだけ、2位予想の決め手がないということ。裏を返せば、誰にでもチャンスがある。山崎、佐藤、熊谷、一木。高校生・寺田と、30歳・中田が出場してくれれば面白い存在だが。


男子400 mH
 為末大の新走法は、14歩のインターバルを2台伸ばすこと。従来は7台目までだったが、9台目までとする。それを試すことができるのは、スタジアムと気象条件に恵まれる必要があるという。その最初の試合が日本選手権の決勝になる予定だ。対する成迫健児も、前半のスピードが上がった結果、14歩に切り換える7台目の踏み切り位置が近くなってしまった。それの修正を試みている最中で、もしも上手くいけば前半で為末をリードする可能性もある。従来とは逆に、最後の直線で為末が追い上げるシーンが見られるかもしれない。

 最新の記事では、為末が予選から新歩数に挑戦するというが、予選でそこまでテンションを上げられるかどうか。風などの気象コンディションが良ければ、という意味だと思われる。千葉佳裕、吉形政衡、河北尚広の3番目の代表争いも熾烈。これも予想する決め手はない。小池崇之にも加わってほしいのだが。


女子400 mH
 静岡国際で55秒71の日本新をマークした久保倉里美が優位に立っている。6月の台湾国際は56秒16のセカンド記録で優勝。静岡では9台目で歩数が乱れたものの、スプリント能力のアップでカバーして新記録。台湾は軟らかいサーフェスだったが、新しい歩数を試したという。久保倉のA標準突破が焦点だ。
 2位争いは熾烈。静岡では前日本記録保持者の吉田真希子に、青木沙弥佳が先着。その2人を関東インカレ優勝の片岡弥生が、記録的には上回っている(6月7日時点)。2位がB標準を突破すれば理想的だ。


 久保倉里美は5月の台湾国際で、スタートの前脚を逆脚にして、1台目を利き脚で踏み切る変更をした。前半でスピードに乗ることで16歩が7台目まで伸び、残りが18歩という予定だったが、10台目が18歩になってしまったという。55秒台前半も可能性は十分だ。
 青木沙弥佳も日本インカレで初めて、16歩を5台目まで伸ばした。それ以前は3台目までだった。400 mでも日本インカレで53秒40の自己新。久保倉の持つ学生記録、56秒73の更新が狙えそうだ。


男子3000mSC
 昨年はラスト勝負で篠藤淳に苦杯を喫した岩水嘉孝が、覇権奪回に燃えている。今季は兵庫リレーカーニバルで菊池昌寿に約3秒差をつけて優勝。内冨恭則(中国電力)の引退もあり、自らレースを引っ張る積極性も目立った。5月以降は準高地の菅平、高地のボルダーで合宿。覇権奪回というよりも3000mSC自体に対して情熱を燃やしている。その成果が6月のアメリカ遠征での8分23秒31、A標準突破に表れた。昨年優勝の篠藤は故障の影響で調子が上向いていない。菊池以下、梅枝裕吉、駒野亮太、篠浦辰徳、菊池敦郎、中川智博らが2位候補。

 岩水がA標準を突破したことで、レース展開の選択肢が多くなった。最初から独走するのか、中盤から行くのか、ラスト勝負を試験的に行うのか。兵庫リレーカーニバルで岩水に食い下がった菊池昌寿(亜大)、日本インカレ優勝の菊池敦郎(順大)による“菊池決戦”も注目だ。


女子3000mSC
 一昨年から早狩実紀の独壇場だった種目だが、今季は様相が変わってきた。早狩は織田記念で優勝したものの前半は辰巳悦加に食い下がられ、後半は森春菜に0.28秒差まで追い上げられた。東京選手権では森が10分03秒11、辰巳が10分09秒31をマーク。今季日本リストでは早狩の上に位置している。
 しかし、早狩も織田記念では踏み切り位置を正確に調整でき、上下動の少ないハードリングができたという。昨年すでに早狩がA標準を突破済み。森か辰巳がB標準を突破すれば2人の代表を出すこともできる。


 早狩実紀がビスレットゲームで9分44秒07の好走。A標準突破が1人で、B標準突破者がゼロという状況。失敗してもいいのだから記録を狙って……と考えるのは、第三者的な発想。ただ、昨年の日本選手権で出した9分49秒88の国内日本人最高は破る可能性十分。


日本選手権を10倍楽しむページ2007
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