2007日本選手権種目毎展望
跳躍編

男子走高跳
 昨年の日本選手権で2m33の日本新、今年の大阪GPで2m30を跳んでいる醍醐直幸の3連勝は確実。長居競技場で2度目の2m30越えに成功すれば、世界選手権本番に向けて大きな自信となりそうだ。2位争いは土屋光が有力で、今季もつねに国内2番手をキープ。2m24の自己記録更新と、B標準への挑戦が期待できる。土屋にとって要注意なのが31歳の野村智宏で、今季は2m15〜16を3試合でクリアしている。ベテランの調整力を発揮して2m20を跳んでくる可能性も。久保田聡、江戸祥彦、高張広海らにも2m20台を期待したい。

 東京選手権で野村智宏が2m16。20台こそ逃したが、野村の状態が良くなっていることは確か。長居は11年前の日本選手権で、アトランタ五輪代表を決めた場所でもある。だが、B標準の2m27となると、土屋光に期待すべきだろう。


女子走高跳
 昨年から国内で負け知らずの青山幸の2連勝が濃厚。今季は1m85がベストだが、そのレベルの高さでも腰は十分に上がっていた。目指すのは1m90以上を安定して跳ぶこと。クリアランスの姿勢を意識するよりも、高さを上げる跳躍を心がけた。練習の5歩助走でも1m80が跳べて、手応えは感じている。地元・大阪の先生だけに、教え子たちの声援も腰を押し上げるだろう。
 2位候補は1m80を越えた選手となるのだろうが、ハニカット陽子、藤沢潔香、米津毎らが有力。室内で1m80を越えた三村有希が面白い存在。


 青山幸が大阪府選手権で1m90に成功した。B標準の1m92を跳んで、すっきりと代表入りを決めたい。


男子棒高跳
 2年前のように最初の高さを失敗しない限り、澤野大地の優勝は動かないだろう。問題は5m80以上に上がったときに起きる痙攣だろう。しかし、大阪GPで呼吸法を工夫して出なかったという。痙攣さえ出なければ、自身の持つ5m83の日本記録更新は難しくない。
 昨年から5m20以上、5m30以上を跳ぶ人数は増えているが、肝心の日本選手権で5m30以上の人数は2004年以降3人・2人・0人と下降気。浅野喜洋、川口直哉、今野匠と学生の5m30ジャンパーも増えている。高校生の笹瀬弘樹を加え、抜け出てきてほしい選手たちである。


 澤野大地が日本新を跳んでくれるだろう。有木の2位が有力だが、前回2位で大阪GP5m30の小野寺、ここ3試合連続5m20以上を跳んでいる森部の東北コンビも2位候補。川口、鈴木、笹瀬の静岡トリオで抜け出す選手も、2位になる資格がある。


女子棒高跳
 織田記念は近藤高代が4m20で優勝し、錦織育子が4m10の2位。大阪GPは反対に、錦織が4m20で近藤が4m10。早大の先輩後輩対決が白熱しそうだ。近藤は昨年の休養期間を経て、今季は良い状態に仕上げてきた。一方の錦織は助走1歩目の変更に苦しんだが、記録なしが続いた室内に比べると、屋外ではかなり良くなっているという。B標準を錦織1人が越えているが、優勝記録は4m30は越えるはず。日本選手権優勝者が代表に決まる可能性が高い。昨年の覇者・中野真実は、その試合で負傷してブランクが生じたが、3m90と復調してきた。

 大阪GP後の錦織育子と近藤高代の戦績を見ると、錦織は東京選手権の4m00だけなのに対し、近藤は海外で記録なしが1試合あるものの、4m15・4m15・4m10と安定している。直前ではあるが、優勝者予想を近藤に変更した。関西実業団で3m90だった中野真実がどこまで復調してくるか。我孫子智美、南野弥生の学生勢よりは上に来そうな気がする。若手に伸びてほしい気もするが……。


男子走幅跳
 本命は荒川大輔で、大阪GPに7m88(+1.8)で日本人トップの3位。6月の台湾遠征でも7m75(−0.2)で優勝。100 mも4月に10秒45の自己新。5年ぶりの8mジャンプが実現しそうな雰囲気がある。対抗は菅井洋平で静岡国際に7m87(+3.1)優勝し、関東インカレも7m62(+1.1)で制した。昨年優勝者の藤川健司はケガの影響で出遅れ6月7日時点では7m55がベスト。だが、昨年も日本選手権に上手くピークを合わせているだけに、侮れない存在だ。品田直宏、鈴木秀明の若手に期待する一方、ベテランの森長正樹も楽しみな存在。

 陸マガ記事は鈴木秀明(順大)が日本インカレで8mを跳んだことを付け加えている。だが、優勝者予想は荒川で変えないことにした。100 mの自己新というのもあるが、静岡国際を間近で見ていての印象である。
 ただ、日本インカレで鈴木よりも安定していたのが品田直宏。話を聞くと、シザースに変えたからというよりも、昨秋から「柔よく剛を制す」という考えで、助走の流れから改良してきた。それがシザースの動きとマッチしたのが日本インカレだった。それ以前に、3年間をスプリント力向上に徹してきた背景もある。8mを越えそうな雰囲気は十二分に感じられた。


女子走幅跳
 池田久美子の3連勝はほぼ間違いない。6m82の大会記録だけでなく、6m86の日本記録更新も十分可能。6m90の大台も期待できるし、今季の助走スピード向上を考えると、7mも夢ではない。そのためには、助走スピードに負けない踏み切りができるかどうか。花岡麻帆が静岡国際で足首を痛めてしまった。B標準突破済みの代表有力候補だが、日本選手権で力のあるところを示したい。岡山沙英子、桝見咲智子もB標準を跳んで2位に入れば、代表への道が開ける。6月に6m44を出した中野瞳が出場するようだと、岡山・桝見にも火がつくはず。

 池田久美子の7mジャンプが出るかどうかが最大の注目点。次に花岡麻帆の復調ぶりが気になる。そして岡山、桝見のB標準突破が焦点になる……と思っていたが、中野瞳の評価が高い。今のところスプリント力がすごいということで、高校時代の品田と同じようなイメージだ。


男子三段跳
 杉林孝法が織田記念で16m36をマークし、今季日本リスト1位にいる。大学の教員となったことで技術を丁寧に見直し、体力とのバランスも良くなったという。その結果、「10年ぶりくらい」(杉林)にテーピングなしで試合に臨めるようになった。目標は「A標準を跳んで世界選手権代表になる」ことだ。石川和義はアキレス腱の故障から復帰して昨秋の全日本実業団に優勝。しかし、再度同じ箇所を痛めて出遅れている。「痛みのでない走り方がわかってきた」という状態で、あとは跳躍ができるかどうか。「日本選手権は必ず出る」と決めている。

 という陸マガ記事。

女子三段跳
 吉田文代が織田記念で13m50と、自身の日本歴代2位に並ぶ記録で優勝した。4年前の13m50は「1本だけはまった」(吉田)記録だったが、今回はまだ「余力がある」と言う。「感覚的には13m70〜80は跳んだつもりになっているので、14mも狙っていけると思います」と、B標準に意欲を見せる。走幅跳でも6m07と8年ぶりに自己記録を更新。それが、ホップでタメをつくる技術に結びつく好感触を得ている。三沢涼子、藤田弥生、佐藤友香が2位候補。佐藤の自己ベストは04年の13m39。復調すれば吉田と競り合う力がある。

 という陸マガ記事。


日本選手権を10倍楽しむページ2007
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