2007/12/31 ニューイヤー駅伝前日
自信を見せるコニカミノルタと日清食品
追う中国電力、Honda、トヨタ自動車九州
13時から前橋市内のホテルで行われた監督会議後、区間エントリーが公表された。関西実業団連盟サイトの一覧表
●日清食品
「30秒以内の差で3区につなげば、ウチの後半は強いので行ける」(徳本主将)
区間エントリーが発表され、日清食品とコニカミノルタの下馬評が高い。
日清食品は2区に徳本一善、3区に前回区間新のゲディオン、5区に新人の保科光作、7区に諏訪利成という布陣。
1区はコニカミノルタの太田崇が2年前と同じように、外国人選手について行くと多くのチーム関係者が予想している。白水監督もそれを認めた上で「2区の徳本次第でしょう」と言う。だが、コニカミノルタの2区は5000m日本記録保持者の松宮隆行だ。徳本にその点を聞くと、慎重な話し方で答えてくれた。
「隆行なので追えるかどうか。できれば、一緒に行った方がリズムはつくりやすいと思います。(コニカミノルタから遅れても)30秒以内の差で3区につなげば、ウチの後半は強いので行けると思います」
白水昭興監督は「後半はコニカミノルタと同じくらいの力。3区終了時点でリードした方が優位に立てる」と分析する。5区の保科を未知数と考えず、実業団駅伝でも通用すると信頼を置いている。キャプテンの徳本も「ウチのチームであいつが一番強い。今、28分ちょうどくらいの力がある。敦之さんと並んでも後れをとらないのでは」と言うほどだ。
結論的には、どの区間がポイントと特定することはできない。1区の板山が太田との差を僅差にとどめれば、2区以降の展開が変わってくるし、同じことが2区の徳本にもいえる。ただし、3区のゲディオンは、関係者のコメントを総合するとコニカミノルタのアレックスに勝つ必要がある。
客観的に見て未知数なのは5区の保科である。日清食品関係者が言うような強さを見せることができるかどうか。強いていえば、そこが一番の見どころとなる。
●コニカミノルタ
「今回は磐石。4区終了時に30秒〜1分リードがあれば逃げ切れる」(酒井監督)
酒井勝充監督が自信を見せた。
「今回は盤石だと思う。ポカさえしなければ、行けると思います」
4区の山田紘之が成長し、秋からは絶好調。1区に起用する案もあったほどだという。入社3年目でニューイヤー駅伝は初出場。実質的には新人に近い感覚だろう。
「強いといっても初めて。緊張もあるだろうし、調子が良すぎると何か起こることもあり得る。大事に使っていきたい。太田の調子も良い。外国人につける状態です。そうでなければ1区に置きません」
2区の松宮隆行は、05年の世界ハーフマラソンを最後に、トラックでも駅伝でも、日本選手に負けていない。その点が、最後の競り合いになったときのモチベーションになるかもしれない。
3区のアレックスがニューイヤー駅伝は初出場。日清食品のゲディオンも前回ほど調子が良くないが、アレックスも未知数の部分が大きい。1万mを独走で27分12秒42で走っているが、東日本実業団駅伝は故障気味で、区間賞のアセファ(Honda)に54秒も後れをとった。強いて言えば、コニカミノルタの未知数部分だろう。
4区の山田は「3区がダメでも4区で抜け出せる」と酒井監督が自信を見せる仕上がり。
5区は坪田智夫で、佐藤敦之(中国電力)ほどではないが、区間2位は十二分に期待できそう。6区に2年目の池永和樹が入り、7区は松宮祐行で福岡国際マラソン後も1万mでシーズンベストを練習で上回るなど好調だ。10日前に行う恒例の1万mタイムトライアルでは、28分38秒で走った磯松大輔がメンバーから漏れる充実ぶり。
「(4区終了時に)30秒〜1分リードがあれば逃げ切れる」
ただし、これは中国電力以外のチームを想定したタイム。
「中国電力には2分あれば安心できる」
と、佐藤敦之の追い上げを警戒している。取材中、近くに中国電力・坂口泰監督がいたため、控えめな数字を言った可能性もある。
●中国電力
「4区を終わったところで1分差なら可能性はある」(坂口監督)
6年ぶりの2区となる尾方剛は世界選手権以来4カ月ぶりのレースとなるが、本人は余裕の表情。
「夏の疲れは完全にとれて、12月にけっこう練習ができました。今はその疲労もとれて、調子が上がってきています」
レースに出なくても、練習の状態からレースをイメージして出場できるところが、ベテランの強みだ。5区の佐藤敦之も福岡国際マラソン後、ポイント練習を2〜3回こなしただけだが、「まったく問題ない」(尾方)という状態だ。
ただ、坂口泰監督は「ウチとしては良い仕上がりなのですが…」という慎重な言い方だ。どんなに良い状態をつくっても、相手が強かったらどうしようもない。尾方も「チームの目標は一応優勝ですが、外国選手がいないので厳しいですね。最低でも3位以内には入りたい」と、背伸びはしていない。
対コニカミノルタということなら、1区で離されるのは覚悟している。
「1・2区は向こうが強いし、3区はもっと強い」(坂口監督)
ただ、中国電力の3区の岡本直己も、新人ながら「今、佐藤の次に強いでしょう」(同監督)という成長株。チームとしてはできるだけのところに持ってきた。
「4区を終わったところで1分差なら可能性はあるでしょう。2分あったら無理」
中国電力としては、無理をするつもりはない。前回の日清食品のように相手にミスが出たときに、戦える体勢を整えておこうというスタンスだ。
●Honda
「藤原の7区は向かい風を考えてのこと。後半を重視しないと順位はとれません」(明本監督)
1区に池上誠悟、2区に秋山羊一郎、3区にアセファ、5区に堀口貴史、7区に藤原正和という配置できた。
「秋山は流れに乗せてくれる走りはできる選手ですし、(秋山、堀口貴史、藤原の3人の中で藤原を7区に起用したのは)向かい風を考えたら藤原がいいと判断しました。後半を重視しないと順位はとれません。目標は3位以内です」と明本樹昌監督。
しかし、東日本予選2区区間賞の池上が絶好調。「27分台の力もある」と明本樹昌監督(「練習の1万mで27分台を出した」という情報が開会式会場で流れたが、それはないとのこと)。「本人に任せている」ということだが、太田崇(コニカミノルタ)が外国人選手に着いた場合、一緒に行く可能性もありそうだ。後半型の布陣でも、池上次第では前半も先頭集団に位置する可能性はある。
とはいえ、メンバーを見る限りコニカミノルタ、日清食品、トヨタ自動車九州が3区終了時点の上位候補。コニカミノルタと日清食品は後半も豪華メンバーで、逃げ切るというだけでなく、差を広げる可能性もある。
Hondaと中国電力が勝つとすれば、後半で追い上げた場合だろう。
●トヨタ自動車九州
「向かい風でもしっかりと腰をぶつけていきたい」(今井)
1区に植木大道、2区に三津谷祐、3区にワンジル、5区に新人の今井正人という布陣。2区の三津谷、3区のワンジルと、日本と世界をを代表するスピードランナーでリードを奪いたい。
「基本的にはサムでトップに立てるような位置で、タスキを渡したい。理想は僕のところでトップに立って、サムと2人で貯金を作れれば」と三津谷。
あとは、箱根駅伝の3年連続山登り(5区)区間賞の今井が、実業団勢の中でどこまで粘れるか。開会式後、今井は次のように抱負を話した。
「いつも通りに走ることだけを考えています。自分はまだ、実業団では九州の大会だけしか走っていません。どれだけ全日本でやれるのか、しっかり試したい」
注目されるのは、予想される向かい風の中での走り。箱根の山登りは、普通の選手がするような前傾をせず、平地と同じ動きで登っていった。強い向かい風でも、同じような感覚で行くのだろうか。
「そうですね。(下手な)前傾をしたら腰が引けてしまって良くないので、しっかりと腰をぶつけて行きたい。気持ちで向かって行きたいですね」
「目標は区間3位以内」だと今井。リードしている局面も、競っている局面も、追い上げないといけない局面も、すべてイメージしているという。個人的に興味深いのは、今井が佐藤敦之(中国電力)や坪田智夫(コニカミノルタ)が追いつかれたとき。そこでどんな走りができるかで、トヨタ自動車九州初優勝のパーセンテージも変わってくる。もちろん、今井個人の今後の展望も変わってくる。
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