2006/11/4 全日本大学駅伝前日
“4強”の区間エントリーを検証
日大&日体大が1・2区でリードか?


日大
 箱根駅伝に比べると、前半に力のある選手を配するのが全日本大学駅伝の特徴。特に1・2区にスピードランナー、トラックを得意とするランナーが多くなる。
 前回優勝の日大が1区に出雲4区&全日本前回7区区間賞の阿久津、2区にダニエル。2区でトップに立ちたい、という意図の布陣であることをスタッフも認めている。さらに4区に土橋を配している。前半の4区間でトップに立つ可能性は高い。
 それでも5区に成長株の松藤(5000mで13分56秒12、出雲2区で1秒差の区間2位)、8区には箱根駅伝3区区間2位の福井と主力が待っている。優勝候補筆頭の呼び声が高い。

日体大
 1、2区で対抗できるのは日体大。1区・鷲見、2区・北村の布陣。日本インカレ1万m優勝をはじめ、今季の北村は安定した強さを見せている。日本選手権5000m2位など、スピードにも進境を示した。2区でギタウとともに、3位グループを引き離す展開も十分。
 それでも、別府監督は「それは周囲が言うこと。それに躍らされないようにしたい」と慎重だ。「2区の北村と8区の保科(光作)に、どこまでいい流れでつなげるか」をポイントとして挙げた。いい位置で渡せば、エース2人が力を発揮するという自信だろう。
 そうなると、出雲の1区で区間15位と失敗した鷲見の出来がレースを左右する。
「出雲の失敗は力み、脱水症状、疲労の取れ具合など、原因は色々考えられます。調整過程への過信もあった」と、別府監督。調整の部分では、対策も講じてきたようだ。
 中盤では4区の新人・森賢大が日大・土橋啓太との対決になる。九州出身同士で、高校時代にタイトルを取っている点も同じ。だが、持ちタイムや経験では土橋が勝る。ここをどう、切り抜けるか。

駒大
「目標はこれまでと同じ3位だが、以前は“最低でも3位”だった。今年は“確実に3位”という違いです」
 大八木弘明監督が控えめだ。確かに人材が豊富だった昨年の4年生が抜けたが、個々の顔触れを見ると早くもチームとして整いつつある。5000mが13分台の1年生トリオは、2・5・7区。そのうち2区が、トラックでは駒大のエースに成長した宇賀地、5区がご当地の高林で、7区が深津と起用された。
 話題的には1年生が注目されがちだが、上級生の頑張りも見逃せない。出雲は補欠だったが、1万mで28分台に入った池田が3区、出雲1区区間賞の安西が4区。6区が前回区間賞の平野で、8区が箱根駅伝8区区間2位の堺。実績のある選手と、新人がバランスよく配された布陣だ。

順大
 1区に中村を抜擢。1週間前に1万mで自己新を出したばかり。粘り強さが身上の選手だという。そして2区が今季成長著しい小野。日本インカレで入賞したときのような走りができれば、上位の流れを作ることができる選手。
「(1・2区は)日大と日体大には置いていかれるかもしれないが、展開次第では…」と仲村監督。
 1週間前の記録会では中村だけでなく、3区の井野、4区松瀬、5区山崎、6区関戸と29分20秒前後が続出した。自己新の選手も多い。4年生の長門や清野が外れたのは、「下級生に外す理由がなくなった」からだと仲村監督。山崎、関戸らに単独走になったときの不安はあるが、1万mでしっかり走った選手を試していく方針だ。
 トラックのエース松岡佑起を故障で欠く。「パンチ力はなくなった。確実に結果を残したいが、負けに来たわけじゃない。つけいる隙があれば、勝負していきたい」と、攻める姿勢は崩していない。

亜大
 スピードというより、“スタミナで速く走る”選手が多いのが亜大。暑さが予想される明日は、亜大にプラスに働くとも言われる。岡田監督はそういう要素を認めつつも、14〜15kmでは「最後の4〜5kmの勝負所が来る前に終わってしまう」と、自分たち向きではない駅伝であることを認めている。
 しかし、亜大のなかでもスピード的な選手もいるはず。昨年でいうなら、木許、板倉という全日本でも箱根でも1・2区を務めた選手。そのあたりを質問すると、「1区の吉川は結構行きますよ」と岡田監督。さらに、2区の岡田晃、3区の菊池の名前も挙げていた。スピードレースが予想される明日の序盤で、これらの選手が食い下がれば、箱根の序盤も同じ顔触れで行く手応えとなる。

山梨学大
「明日はゴムのようなレースをしたい」
 20回連続出場の山梨学大。上田誠仁監督の話は相変わらず例え方が絶妙である。ゴムとは「伸びても、ギリギリのところで耐えていく」展開のことを指す。7区まで切れずに耐えられれば、モグスで“バチーン”と前に弾け出る。
「モグスでないとダメだ、とはなりたくないのですが」とも言うが、現時点ではそういう展開を想定して、粘り抜くしかない。注目すべきは、7区までの粘り具合だ。

最後に
 ここまで、実績ある選手の有無で展望してきたが、むしろ“今大会で実績を作る選手”が多くなるのではないか。そういった選手がより多く現れたチームが、上位に進出していく大会となりそうだ。


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