2006/10/22 実業団・学生対抗
男子800 mは好調の口野が鈴木に競り勝つ
学生
2強(下平&横田)に「割って入りたい」

 男子800 mは口野武史(日体大)が、追い上げてきた鈴木尚人(自体学)に逆転されそうになったが(一度は鈴木が前に出たかもしれない)、そこから粘った。口野1分50秒01、鈴木1分50秒03と僅かに先着。9月の群馬リレーカーニバルで1分48秒88(3位)、2週間前の川崎陸上フェスティバルでは1分48秒82(1位)と自己新を連発して絶好調だったはいえ、全日本実業団優勝の鈴木に勝ってしまうのだから、口野が記録だけのタイプではないことを示した。
 普通なら、鈴木に勝ったことに喜んでもいいところだが、「今日は1周目が速くなかったので(口野のいた集団は54秒8)、ラスト100 mが出せたのだと思います」と冷静に振り返る。さらに、こう付け加えた。「“あの2人”はハイペースでも、最後の50mでもう1回行けますから」

 あの2人とはもちろん、下平芳弘(早大)と横田真人(慶大)のこと。下平が3年で横田が1年。2年生の口野は「狭間の学年」と笑いながら言う。ベスト記録は下平が1分47秒92で、横田が1分48秒42だが、2人の特徴は記録に加えて勝負強い点にある。下平は昨年の日本選手権優勝者で、横田は今年の優勝者。ともに、その時点での自己新記録で日本一のタイトルを取った。
「2人ともラストが強くて、残り200 m地点で前にいられたら厳しいです。そこまで、どのくらい楽について、対応する力を残せるか。まだ2人が断然上なので、挑戦するつもり、2人の争いに割って入るつもりで頑張ります」

 口野のもう1つの目標は、「石井(隆士)先生の持つ1分48秒4の日体大記録を破ること」だという。日体大には現在、以下のように4人の1分40秒台ランナーが在籍する。
口野武史・2年 1分48秒82=川崎陸上競技フェスティバル(10/9)
宮崎 輝・2年 1分49秒22=川崎陸上競技フェスティバル(10/9)
堤 大樹・4年 1分49秒22=日体大長距離競技会(第181回・9/24)
越塚康成・3年 1分49秒73=日体大長距離競技会(第178回・4/29)

 昨年は1分49秒96の口野1人だけだったが、今年一気に増えたのだ。6月の日本インカレは口野が2位、7月の日本選手権は堤が5位(口野は予選、宮崎と越塚は準決勝止まり)と、力はそれほど大きな差はない。口野にはインターハイ4位と高校時代の実績があるが、残りの3人は全国大会上位入賞の経験はない。いわゆる“叩き上げ”だ。
「越塚さんは400 m班ですが、他の3人は一緒に練習します。1人が記録を出せば自分もと頑張る。切磋琢磨ができています。日体大で“2人”に挑んでいきたいですね」

 話をしていて伝わってきたのは、口野が冷静に周囲を見ていること。下平と横田の力を冷静に分析し、この日のレース結果にも浮かれない。しかし、冷静に見たら鈴木に勝ったことは自身でも評価できた。
「ぎりぎりで勝つのは大事なこと。今日は鈴木さんをはじめ、実力のある人が多かった。その中で勝つことは意味があることだと、石井先生にも言われていました。勝ててよかったです」
 実学の勝利が、日体大カルテットに勢いをつけそうだ。


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