2006/8/4 大阪インターハイ3日目
男子走幅跳で1年生・小西が6位入賞
同級生・皆川との来年以降のワンツーに意欲


 男子走幅跳は東海大望洋の櫻井憲幸と藤田勝也が、同種目ではインターハイ史上初の1・2位独占をやってのけた(7m47と7m37)。そこに至る第一歩は2年前、1年生の櫻井が8位(7m17)に入賞したことだった。今回、1年生で6位(7m14)に入賞したのが小西康道(白樺学園)である。同級生には、7m40の今季高校2位、高1歴代3位で北海道地区大会を制した皆川澄人がいる。来年、2年後と、チャンスが残されている。

 小西は最後の6回目の跳躍で、スタンドに拍手を求めた。1回目の7m10で7位につけていたが、最終跳躍で第一跳躍者の林武彦(東京学館)が7m13を跳んだことで、8位に落ちていた。167cm・54kgという華奢な体つきの1年生。だが、試合度胸は上級生並みだった
「記録が伸びていなかったので、会場の人の力を借りたいと思って」
 そして、7m14に記録を伸ばし、7m13の2選手を抜いて6位に上がったのである。選手層の厚い走幅跳では難しいと言われる1年生入賞を果たした。

 同じ1年生でも注目度は皆川の方が上だった。7m40の高1歴代3位で北海道大会を制した。地区大会優勝者の肩書きと今季高校2位の記録は、優勝候補の一角に挙げられてもおかしくない。ベスト記録も7m25の小西とは、15cmの差があった。
 ところが、その皆川は7m09で予選落ちしてしまっていた。
「皆川も調子は良かった。昨日の練習ではいい感じだったんですよ。ただ、スピードが速くなりすぎて、踏み切りが上手くいかなかったようです。今日はスタンドからアドバイスをしてくれました。1年生なんだから3本ファウルでもいいから、思い切って行けと」
 身近なライバルを気遣うような話し方を、小西はした。

 皆川は昨年、6m93で中学リスト3位の選手。全日中では6位だったが、国体少年Bでは前述の記録で高校1年生に混じって6位に入っている(中学生最上位)。小西は6m67がベストで記録的には差を開けられていたし、直接対決でも「1回しか勝ったことがない」という。そもそも小西は、走高跳でジュニアオリンピック(Aクラス)3位、記録もその時に出した1m89を持つ選手だった。
 そんな2人が同じ高校に入ったら、別の種目を選択するケースが多いのに、小西は走高跳ではなく走幅跳をメインにした。「好きなのは走幅跳ですから」とこともなげに言う。ちなみに、今年7月には2m00をクリアし、インターハイには三段跳を加えた跳躍3種目で出場している。

 2人のタイプの違いは明確のようだ。先ほどの小西のコメントからもわかるように、皆川の方が助走スピードがある。
「自分はバネだけ。100 mでは11秒台も出ないかもしれません。スピード練習とかしたら、皆川には全然勝てません」と小西。
 それは、中学の頃から気づいていたことだろう。2人のタイプが違えば、同じ練習をしても得手不得手のメニューが違ってくる。だから一緒の学校に行けたのではないか、と思った。だが、そうではないと小西。
「タイプは関係ありません。どっちにしろ、勝負をしたかった相手です。ライバルが身近にいるからこそ、お互いが伸びるのだと思っています」
 どうやら、どの種目だったらトップに立てる、という小賢しい計算はしていないようだ。純粋に走幅跳をやりたい、近くに強い選手がいたら勝ちたい。長く陸上界に浸かっている関係者が忘れかけていた感覚を、高校1年生が指摘してくれたような気がした。

 それに2人の勝敗は、中学の時ほど一方的ではなくなっている。十勝サーキット、十勝選手権、北海道選手権と小西が勝ち、今回の結果で4勝3敗と小西が1つ勝ち越した。皆川の“肩書き”に目を奪われてしまいがちだが、2人の力の差は走幅跳ではなくなっていたのだ。
 小西に、どうして力が伸びたのか、自己分析をしてもらった。
「助走が安定して走れるようになったと思います。その結果、ファウルが少なくなって、以前は後半に記録を伸ばすことができなかったのが、少しずつ改善されてきています」
 インターハイの6回の試技は、
7m10(+0.0) 7m09(+0.0) 7m04(-0.9) × 7m05(-0.8) 7m14(+0.3)
 と、確かに安定し、最後に記録も伸ばしている。

 前述したように、純粋に陸上競技の勝負に挑む姿勢がある。周囲への感謝の言葉も、自然と口に出るキャラクターである。
「6位に入れたのは、皆川をはじめとする色んな人のアドバイスのお陰です。先生や北海道東海大の広川先生、そして中学の先生も。先輩たちの応援も、力になりました」
 その一方で、皆川との比較もズバッと公言できる。
「あいつはスピードがありますが、踏み切りが下手なんです。自分の方が踏み切りは上手いと思います。着地は向こうの方が上なので、練習中に見て学ばせてもらっています」
 小西の話だけしか聞いていないが、東海大望洋の櫻井・藤田のような、お互いにプラスとなるコンビになっていく予感がする。
「ワンツー、やりたいですね。来年、狙っていきますよ」
 インターハイでは向こう2年間、2人の成長ぶりを楽しみにできそうだ。
 国体にどちらが出るのかも、注目しないではいられない状況になった。


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