2006/5/20・21 東日本実業団
富士通3選手が優勝
記録は“普通”でも日本選手権に手応え


 富士通勢は男子3種目に優勝。400 mの堀籠佳宏が46秒57、800 mの笹野浩志が1分50秒15、走高跳の醍醐直幸が2m22。記録はとりたてて良いわけではないが、春季サーキットと日本選手権の間隔が大きくなった今季は特に、この時期に練習で追い込む選手が多い。それを考えると、富士通3選手の結果は日本選手権に向けて期待できるものだった。
 選手自身も、それなりの手応えを感じていたようで、自信も見せていた。


@堀籠佳宏
“質”の練習で試合の“スタミナ”を強化

 同じ45秒ランナーの冨樫英雄(エスポート)に0.30秒をつけ、堀籠佳宏が男子400 mに46秒57で優勝。今春、日体大大学院から富士通に入社。“実業団の試合”第一戦を勝利で飾った。大学の専攻科に1年、大学院に2年在籍していたため、25歳での入社。学年で言えば末續慎吾(ミズノ)と同じ代ということになる。

 堀籠は最近、練習をより実戦に近い形で行うようにした。自身の成長ぶりや体力の変化、トレーニングの大きな流れなどを考慮してのこと。
「400 mのトライアルで楽に46秒台を出せるようになりました。これまでは量をこなそうと、500m10本とか、100 m100本なんていうメニューもこなしました。根性練でしたね。基礎体力もついてきましたし、そろそろ質の練習に変えていくことも必要だと判断しました。今は400 mを1〜2本というメニューの日もあります。リカバリーには20〜30分をとりますけど」

 その成果が東日本実業団でも表れた。1日目の男子400 mは、予選と決勝の間が2時間05分しかなかったのだが、堀籠は予選が46秒87で決勝が46秒57。1日2本、46秒台で走ったのは「初めてだと思います」と言う。
 昨年の日本選手権予選で初めて45秒台を記録(45秒95)。予選突破に全力を傾注した。翌日の準決勝がなくなって、中1日おいて決勝というスケジュールが幸いして決勝は4位(46秒50)。「予選の翌日はきつくて寝ていた」という状態で、連戦には弱かった。その弱点を克服しつつある。試合用のスタミナを付けるのは、練習の“量”だけではないということだろう。

 今年の日本選手権は1日1本ずつだった昨年とは異なり、2日目に予選・準決勝の2本を行い、3日目に決勝というスケジュール。準決勝がなくなる可能性もあるが、もしも1日2本の強行軍になっても、今年の堀籠は動じないだろう。
「金丸君みたいなスピードはない。ちょっとまだ勝てない」と、正直に話す堀籠。だが、後半の粘りが自身の身上。レーススタイルは「前半はある程度でついて行って、みんなが気を抜く200〜300mで粘り、最後の直線で行く」というもの。
 注目はホームストレートだ。

A笹野浩志
“アジアでの戦い”を見据えてスピード重視

 男子800 mは笹野浩志(富士通)が得意のラスト勝負を制し、2位の鈴木尚人(自体学)に0.73秒差をつける強さを見せた。ただ、優勝記録は1分50秒15と今ひとつ。笹野自身、同じ週に行われた関東インカレのタイムを気にしていた。
 だが、若手選手が記録を伸ばしていることを、前向きにとらえている。
「これまで、海外に行かないと記録は出せないと思っていましたが、今は日本でも出せる」
 実際、1週間後のゴールデンゲームズinのべおかでは下平芳弘(早大)の1分47秒92を筆頭に、2位の鈴木、3位の笹野と3人が1分48秒50以内で走った。

 笹野の持ち味はどちらかというとスピード。調子が良ければ最後まで保つが、最後まで“走りきれない”レースも散見された。その対策はこれまでもやってきたが、最近は「短距離的な練習」(笹野)で、アプローチしている。それに変更した理由は、国内での争いを見てのことではない。アラブ勢が1分45秒を当たり前のように切ってくる現状を踏まえてのこと。
「アジアのレベルが高くなりすぎました。スピードがないと、どうしようもない」
 それが結果的に、国内のハイレベルの争いも勝ち抜くことになる。

 記録を求めるときは、51秒台で400 mを通過したいという。
「600mを1分18秒で通過すれば、ぶっちぎれるでしょう。もしも、それで負けたのなら仕方ありません。仮にスローな展開になったら、元々の持ち味がラスト勝負ですから、絶対に負けたくありません」
 日本選手権がどちらの展開になっても、V奪回の準備はできている。

B醍醐直幸 につづく


寺田的陸上競技WEBトップ