2006/5/13 中部実業団対抗
向井と山本がシーズン第一戦

@向井裕紀弘
腰痛の影響でシーズンインに遅れ
試行錯誤をしつつも、結果も求める2006年


 3月に腰を痛めた関係で出遅れていた向井裕紀弘(岐阜ES事業団)は、今大会がシーズン第一戦。初日の200 mを21秒55(±0・雨)、2日目の400 mを47秒91で制した。
「走るまで調子がわかりませんでしたが、200 mで現在の状態がつかめました。もっと悪いことも考えていたので、少し視界が開けましたね。400 mも風が強くてあの記録になりましたが、動き自体は47秒台前半の走りでした」

 03年に45秒台に入り、04年はアテネ五輪代表に(本番では控え)。昨年は日本選手権予選で46秒35をマークしたが、決勝では最下位。シーズン後半は「47秒台をだらだらと続けてしまった」という。
 早めにオフのトレーニングに入り、1月まではいい流れで進んでいた。その後、雪が多く練習が思うように積めない時期があり、3月上旬には腰の痛みで1日だけだが入院もした(詳細は向井のサイト参照)。春季サーキット出場は見送り、今大会で感触を探りながらのスタートとなった。

 動きについても、現在「頭の中が整理しきれていない」という。
「勉強をしているところで、色々な理論が知識として多く入ってきています。それが自分にヒットするかどうか。まったく違う動きを目指しているのではなく、今まで自分の中にあった感覚が、この理論のここに当てはまるな、と確認して、そこから発展させようと試行錯誤をしています」

 だからといって、今季を試行錯誤のシーズンだけで終わらせるつもりはない。
「昨年、結果を残していないので、狙っていきます。今年はオリンピックも世界選手権もありませんけど、来年の世界選手権を見据えてやっていく必要がある。日本選手権はやっぱり、(去年の)世界選手権メンバーが強いと思います。でも、やる以上はそこに割って入りたい。あと2カ月で、できる限りのことをやります」
 ヘルシンキ組が注目されている日本選手権400 mだが、アテネ組も目を離してはいけないようだ。

A山本晴美
ボブスレー五輪代表落ちのショックが長引き
記録は昨年より5m以上低下
しかし、ベテランらしさは健在


 32歳の山本晴美(電算)が今年も中部実業団でシーズンインした。昨年もそうだった。記録は40m台といまひとつだったが、日本選手権にはしっかり合わせて2連勝を達成した。
 日本記録保持者の三宅貴子とは同学年(大学も同じ中京大)、今年の兵庫リレーカーニバル優勝の小島裕子(白梅高教)は1学年上と、ベテランが頑張っている種目。昨年は中野美沙(筑波大院)をはじめとする若手が好調だったこともあり、日本選手権の展望記事に今年は世代交替が有望、と書いたが、見事に覆された。
 今年も中部実業団は40m台だが、山本を日本選手権の優勝候補から外すわけにはいかない。

 だが、昨年との違いもある。例年、冬期はボブスレーに取り組んでいる山本。この冬はトリノ五輪を狙っていた。しかし、利あらず代表漏れ。それが尾を引き、練習再会がずれ込んでしまった。それだけ、ボブスレーにも真剣に取り組んでいるし、オリンピックへの思いが強かったということ。
「年末の選考会で落ちて、3月の初めまで、ショックを抱えてしまいました。まあ、無理してやることもないか、と思って。3月末にやっと体を動かし始めました。エアロビクスなど有酸素系の運動です。やりを持ったのは今日で3回目、助走付きで投げたのは今日が初めてです」
 記録も違う。昨年の中部実業団は49m33だったが今年は43m90。5m以上も落ちている。
「実際に投げてみないとわからない状態でしたが、45mは行くつもりでいました。思った以上に体が動きませんでした」

 ただ、今年の中部実業団1日目は雨。悪コンディションだった点を考慮する必要はある。そして、試技内容から推測できることもある。
41m79
42m62
41m47
43m77
43m19
43m90
 1投目を投げてみて、2回目で修正して記録を伸ばし、次の3回目は欲張って失敗して記録を落とし、4回目はまた修正して2回目よりも遠くに投げる。5回目は再度失敗して、最後の6回目にまとめて最高記録を出す。山本に確認したわけではないが、そういったベテランらしい作業をしたのではないか。

 昨年との違いが有利になる点もある。日本選手権が1カ月後ろにずれていることだ。山本も「それを考慮して」スロースタートにしているという。もう1試合「練習代わりに軽く出られる試合」に出て日本選手権に合わせていくという。

 今年も山本、小島のベテラン組と、3月末に56m57の学生記録を投げた海老原有希(国士大)ら若手との対決構図となる。しかし、それは見る側の注目ポイント。だからといって、選手側が特別なことをやるわけではない。
「彼女たちをライバル視することはまったくないですね。この歳になると、ケガを抱えていない選手はいません。どれだけ痛みと戦えて、勝つ気でいられるか。まずは自分に勝たないといけません。去年の日本選手権は52m台でしたから、納得できていません。2連覇はオマケみたいなもの。今年も3連勝がかかっているね、と言われますが、それよりも、もう一度55mを投げたい。若い子にもどんどん投げてもらって、競い合って盛り上げたいですね。その中に私がいられたらいい」
 新旧対決も面白いが、こういったベテランの心意気を聞くと、日本選手権がまた面白くなる。


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