2005/8/4 世界選手権直前
日本5選手が記者会見
末續「今回は200 mに専念することに決めました」
為末「グランプリ転戦中に出ることで、400 mHに体が向いていく」
福士「(30分10秒のペースでも)どうなっても付いていきます」
14時から選手村近くのHANA SAARI(研修センター風のホテル)において、日本選手団の共同会見が行われた。列席したのは朝原宣治(大阪ガス)、末續慎吾(ミズノ)、為末大(大阪ガス)、成迫健児(筑波大)、福士加代子(ワコール)の5選手と、澤木啓祐選手団監督と高野進コーチ。
5選手のコメントを抜粋して紹介する。
Q.現状と、本番に向けた抱負を。
朝原 ヨーロッパで3試合をこなし、結果だけ見たら良くありませんが、3大会で色んなパターンを試すことができました。フランクフルトに入って修正し、だいぶよくなりました。明後日、ギリギリまで調整して、思い切ってぶつかるだけ。自分でも楽しみにしています。
末續 今年はケガの影響もあって、本格的に仕上げたのが南部記念からということになって、それからの経過や現地入り後のコンディションと練習内容を見て、今回は200 mに専念することに決めました。ヘルシンキでは200 mで、持っている力を出し切りたい。あと、追求している走りを、得意の200 mで、自分自身、納得できるようにしてみたい。
為末 6月24日からヨーロッパを7戦して、フランクフルトで日本選手団と合流。ヘルシンキに入りました。日本選手は直前まで合宿して、調整して本番に臨みますが、世界のトップ選手はヨーロッパを回りながら本番に合わせる。世界標準のやり方を一度、やってみたかったんです。グランプリに出ていて世界選手権に出る、世界選手権からグランプリにすぐ戻る。去年はオリンピックがあってできませんでしたが、今季は余裕がある。決勝を争う力はあると感じています。上位2〜3人以外は横一線。トレーニングの調整もそうですが、日頃の行いなど、くじ引きのような感じで順位が決まると思います。
成迫 ここに来るまで、長野県でずっとトレーニングをしてきました。来る前に日本で1試合をしてそれなりのタイム(400 mH・49秒54)が出ました。こっちに来て調子が上がっていますし、シニアの世界大会は初めてですから、守るべきものは何もありません。ガンガンぶつかって行きます。
福士 1万mと5000mに出場します。今の調子はいいので、6日のレースは迷いなく走りたい。
高野コーチ 昨年は90日間の合宿をして、その成果がリレーに出ました。今年はオリンピック翌年ということで、思い切りフリーにして、合宿も直前だけ。どういう選手が残るかと思っていたら、4×100 mRは3人が残り、4×400 mRは佐藤1人だけでした。4年のスパンで考えたとき、今回は転換期。安定した力や、結果を出せる見込みという点ではわかりませんが、合宿のタイムを見たとき戦力ダウンは感じられません。あとは、チームの士気とかを高めていけば、アテネ五輪に劣らないレースが期待できます。やってみないとわからないけれど、ケガや体調に不安のある選手はいないのがいい。
Q.(末續に)200 mに絞った理由と、決めた時期は?
末續 決めたのは昨日です。練習の流れと、気持ちの盛り上がり方とを考えました。春先には9秒台、19秒台、ファイナルと色々と言っていましたが、それらが削がれてきました。自分の求めている走りを北京で実現するために、技術やスキルが世界を舞台にどれだけ発揮できるか、得意の200 mで納得のできる走りをしたい。
Q.(為末に)初めての世界標準のやり方で、得たものは何で、それをどう生かしたいと考えていますか。
為末 メリットは400 mHに体が向いてくること。いつもだったら400 mを走れるようにして、そこにハードルを付け足す組み立て方。それを、いきなり400 mHに組み立てられる。デメリットは、大きな試合に波を作りにくいこと。どうなるか、本番までわからない。
Q.(末續に)納得できる走りというのは?
末續 それは、終わってみないと、どういうものだったのか、わかりません。どう転んでいるか、さっぱりわかりません。こればかりは、試してみないと。守りの意識を捨て、アテネとはまた違った走りをしたい。
Q.(朝原に)納得できる走りとは、どんな走りですか。
朝原 納得できる走り、自分の追いかけている走りのイメージは、つねに変わっています。終わってスカッとしたレースはあまりありません。力を出し切れたというレースをしたい。
Q.(成迫に)ジュニアの試合との違い、国内の試合との違いは?
成迫 日本には為末さんという世界に近い存在がいらっしゃいますから、こっちに来て動じることはありません。落ち着いて出られそうです。
Q.日本インカレのタイムなら、世界でも戦うイメージを持てると思いますが。
成迫 世界は常に描いていますが、走ってみないとわからないところもある。予選を通じて自分の位置を確認したい。とりあえずは予選通過が目標ですが、予選通過ができれば、準決勝もしっかり走れると思います。
Q.(福士に)30分30秒のペースの集団に付いていきますか?
福士 行きます。
Q.30分10秒なら?
福士 えー、もう、どうなっても付いていくと思います。
Q.(朝原に)エドモントンの2次予選は納得のできる走りだった?
朝原 数少ないうちの1つですね。
Q.(末續に)筋力の走りと技術の走りの融合は、やってみないとわからないということ?
末續 200 mは4本あります。その中で1本でも、その走りができればいいですね。できれば早い段階で何かをつかめれば、自信になっていくと思う。
Q.(為末に)エドモントンのときもグランプリを転戦して臨んだと思いますが、今回の違いは?
為末 エドモントンのときも世界選手権前に連戦しましたが、グランプリから世界選手権まで1カ月は期間があり、小さなスパンでトレーニングと調整ができました。ここまで詰めて来て本番に臨むのは競技人生で初めてです。
Q.(成迫に)経験がないことを、プラスにできると考えていますか。
成迫 プレッシャーも何もないので、本番がすごく楽しみで仕方がありません。
◎高野進コーチ
「今回の走法と200 mの感覚が、末續本人の中で合っている。アテネ五輪のあと、純粋な100 mランナーでなく、200 mランナーとして100 mに挑戦するスタンスになった。仮に両方出ていても、200 m狙いになっていたと思う。アテネ五輪後のスタート。あまり欲張らずに、1歩1歩、200 mで積み上げていきたい。新走法はまだ、自動化できるところまで行っていません。アッと言う間に終わる100 mよりも、200 mの方が確認する時間がある」
◎永山忠幸コーチ(ワコール監督)
「ローマで5000mの自己新記録を出したことで、本人の焦りも軽減されたと思う。福士ともつねに、自己記録の更新をして行きたいと話しています。本番では、最低でも自己記録を更新してもらいたい。こちらの気象は昆明や日本と比べたら走りやすい。入賞も不可能じゃないと思っていますし、そのとき、記録が一緒でなかったら寂しい。(30分00秒のハイペースでも)付いていくと思いますよ。そのペースで行って、後半うち上がるかといったら、うち上がらないと思います」
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