2005/2/12 東京国際マラソン前日
レースの焦点

@レース展開
異なるペースの2つの集団

 ハイペース組と通常ペース組、2グループに分かれてレースが進行しそうだ。
 ハイペース組は最初の5km通過が14分40秒の設定。高岡寿成(カネボウ)陣営の要望に応え、主催者が2人の外国人ペーサーを用意した。ナンバー52のチプ(南アフリカ。自己ベスト2時間12分45秒)と53のベガ(メキシコ。同2時間21分11秒)。これに付いていくのは日本選手では高岡と澁谷明憲のカネボウ勢。2時間8分台の記録を持つバヨ(タンザニア)とラモス(ブラジル)がつくかどうか。福岡国際マラソンの前半を先頭集団で走った萩野智久(重川材木店)が、今回も食い下がるかもしれない。
 序盤の下りが終わった時点で、1km毎が2分57秒〜3分00秒に落ち着く予定。そのペースで30kmまでペーサーが引っ張る。20kmを59分30秒、30kmを1時間29分30秒前後で通過する予定だという。
 カネボウの伊藤国光監督は、「それが普通のペース」だと強調する。

 不安要素として、30kmまでペーサーが引っ張れるかどうか、そして折り返し後の向かい風を指摘する関係者もいた。
 昨年のシカゴの時のようにペーサーのスピードが乱高下したり、予定より遅いことも考えられる。
「(ペースが遅いからと)先頭に出て引っ張ることはしません。そのときはじっと、集団で勝機を待つことになります。ペースメーカーもそれが仕事ですから、キチッと引っ張ってくれるでしょう」(伊藤監督)

 その他の有力日本選手は、5km通過が15分05秒の設定。記者会見で選手たちがコメントした目標タイムや、指導陣の話を聞く限り、カネボウ勢以外はこちらのペーサーに付きそうだ(絶対にそうだと言い切れるわけではないが)。注目のエリック・ワイナイナ(コニカミノルタ)はハイペース組の後方に付けたい気持ちもあるようだが、最終的には15分05秒組でレースをすることになりそうだ。

コース記録とコース日本人最高の5km毎(ともに1999年)
選手名 所属 5km 10km 15km 20km 中間点 25km 30km 35km 40km finish
タイス 南アフリカ 14.38. 29.39. 44.56. 1.00.00. 1.03.23. 1.15.02. 1.30.04. 1.44.57. 2.00.06. 2.06.33.
    14.38. 15.01. 15.17. 15.04.   15.02. 15.02. 14.53. 15.09. 6.27.
三木 弘 旭化成 14.38. 29.39. 44.56. 1.00.00. 1.03.21. 1.15.03. 1.30.04. 1.45.26. 2.01.19. 2.08.05.
    14.38. 15.01. 15.17. 15.04.   15.03. 15.01. 15.22. 15.53. 6.46.

高岡の04年シカゴ5km毎(これが参考になるかも)
選手名 所属 5km 10km 15km 20km 中間点 25km 30km 35km 40km finish
高岡寿成 カネボウ 14:25 29:18 44:15 59:06   1:13:55 1:29:09 1:44:43 2:00:40 2:07:50
    14:25 14:53 14:57 14:51   14:49 15:14 15:34 15:57 7:10


A高岡寿成
勝つためのハイペース

 序盤、7kmまで下り坂が続くことから、5km通過は14分40秒を希望した。
 高岡の過去4回のマラソンを振り返ると、3位が4回と勝てていないこと、しかし、記録的にはハイレベルのレースを続けていることが、特徴として挙げられる。2回目から3レース連続で2時間8分を切っているが、2時間8分を2回切っていることさえ、日本選手では高岡以外にできていない芸当なのだ。これは、高岡が常に「強い選手たちの集まるレース」にチャレンジしているからだと伊藤監督は分析している。
 しかし今回は、過去のレースと比べると顔触れが落ちる。伊藤監督など「逆に、勝たないといけないと、プレッシャーが大きくなったのではないか」と言う。1週間前の別大で、カネボウの後輩の入船敏が優勝したことも、プレッシャーを大きくしているのかもしれない。

 だが、周囲の心配をよそに高岡は、「新たな挑戦がしやすい」と言う。「確かに、(勝つことに)慎重になっていますが、思いっきり勝負ができます」。それが、14分40秒と速い入りのレースにチャレンジすることにもつながった。高岡の場合、「勝負をすること=速いペースにすること」だと伊藤監督。下りのある序盤をハイペースで入ることが、高岡にとっては勝負を有利に展開することになる。
 30kmが予定通り1時間29分30秒で通過でき、残りの12.195kmを日本人コース最高の三木弘(旭化成)より少しでも粘ることができたら、伊藤監督の言うようにトータルで「3分平均」になり、2時間6分台も期待できる。

 元々、プレッシャーは「これまでのレースの中で最も小さい」と話していた。だからといって、モチベーションが下がって走りに影響する選手でないことは、過去の実績が証明している。練習も、夏場に走り込んだこれまでのマラソンよりも、駅伝をこなしながら走り込んだ今回の方が、動きは最もいいと伊藤監督は評価している。上り坂に関しても「刻む走りができるようになった」と。もしかすると、最も記録の出やすい状況が整ったのかもしれない。

高岡のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 記 録
1 2001 12.02 福岡 3 2.09.41.
2 2002 10.13 シカゴ 3 2.06.16.
3 2003 12.07 福岡 3 2.07.59.
4 2004 10.10 シカゴ 3 2.07.50.


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