2005/10/16 新潟ビッグ陸上フェスタ
トラック編@
単独チーム学生新と混成チーム高校新
男女リレーの新記録と話題
●1年が経過した新潟県中越大震災からの復興機運を高め、中越地区へのチャリティー支援
●4年後の新潟国体へ向けた陸上競技の振興と競技力向上
●昨年まで開催されていた環日本海駅伝に代わる全国規模の陸上イベント
などを開催趣旨に、標記大会が新潟スタジアムビッグスワンにおいて行われた。
招待種目は14時からの女子4×100 mRで幕を開け、男子4×100 mRと続いて行われたが、記録も単独チーム学生新、混成チーム高校新と続いた。女子の1位は日本Aチームでオーダーは世界選手権と同じ石田智子(長谷川体育施設)、鈴木亜弓(スズキ)、佐藤友香(七十七銀行)、信岡沙希重(ミズノ)。1走の石田からリードを奪い、危なげない勝利だった。タイムは44秒53にとどまったが、鈴木と信岡の2人が後の100
mを棄権したことから、万全の体調でなかったと推測できる。2位は日本代表Bで0.41秒差。そして、3位の福島大(長島夏子・栗本佳世子・松田薫・渡辺真弓)が45秒19と、日本インカレでマークした45秒21を0.02秒更新した。
女子4×100 mRで学生新をマークした福島大。左から走順に長島・栗・松田・渡辺
男子では3位の日本ジュニア代表が40秒09と、従来の混成チーム高校記録の40秒14を0.03秒上回った。後藤乃毅(春日部高)、木村慎太郎(添上高)、熊本貴史(早稲田実高)、黒川哲雄(新潟明訓高)のメンバー。99年の前高校記録は日本ユースチーム(田原陽介・北村和也・金子敬孝・大前祐介)が出しているが、今回も木村を除く3人は2年生。もしも木村が早生まれなら、今回もユースチームということになる。
2つの新記録もさることながら、特筆すべきは女子2位の日本代表Bが44秒94と、45秒を切ったこと。オーダーは1走から北風沙織(浅井学園大)、藤巻理奈(日体大)、植竹万理絵(筑波大)、高橋萌木子(埼玉栄高)と、学生3人と高校生1人。フル代表以外のチームが44秒台を出したことが、ないわけではない。95年の福岡ユニバーシアードで44秒80、92年のソウル世界ジュニアで44秒90がマークされている。しかし、福岡ユニバーには北田敏恵や吉田香織、ソウル世界ジュニアには柿沼和恵や伊藤佳奈恵と、その前後の年でフル代表に入った選手が加わっていた。今回のように、まったく別のチームが44秒台を出したのは初めてと言っていい。川本和久陸連女子短距離部長も
「バトンパスをやったのは昨日1回だけ、という急造チーム。バトンでロスをしたなかでの44秒台は、女子短距離の層が厚くなった証拠」
と評価した。
男子の4×100 mRでも、U23日本代表が39秒46の同タイムで、日本代表に競り勝った。U23は1走から品田直宏(筑波大2年)、相川誠也(早大3年)、野田浩之(早大3年)、仁井有介(順大3年)とオール学生での編成。日本代表は1走に川畑伸吾(群馬綜合ガードシステム)、2走に高平慎士(順大3年)と五輪経験選手を並べたが、3走は400 m選手の堀籠佳宏(日体大院)。そして4走は100 m日本選手権優勝者だが、故障上がりの佐分慎弥(日体大)。
佐分は日本選手権リレーに続く復帰2戦目だが「まだ完璧ではありません。ケガを再発させないで走りきること」が目標と前日に話していた。堀籠と佐分がリレー後の個人種目を欠場したことから、女子の鈴木・信岡同様、万全の状態でなかったことがわかる。
2走で対決した高平(左)と相川の同学年コンビ
トラック編A
ユニバーシアード組が快勝
山口の“静かな”意欲
リレーに続くトラック種目は女子5000m。佐藤由美(資生堂)と早狩実紀(京都光華AC)の日本代表2選手が欠場したが、佐藤絵里(名城大)が15分58秒55で優勝。地元・長岡大手高出身の佐藤にとって、ユニバーシアード1万m金メダルからの凱旋レースとなった。タイムは自己新ではなかったが、五輪代表の肩書きを持つ市川良子(テレビ朝日)を相手に臆せず、堂々としたレース展開。自身のレースパターンが確立されているのだろう。
その次の女子400 mも、ユニバーシアード組の丹野麻美(福島大)が52秒84と、昨年までの日本記録を上回るタイムで優勝。国体の800
mで、どんなタイムを出すだろうか。久保倉里美(新潟アルビレックスRC)が53秒80、青木沙弥佳(福島大)が54秒28と、2・3位の2選手も昨年までの自己記録を上回った。
4位に吉田真希子(福島大TC)、5位に木田真有(サトウスポーツプラザ)と、福島大関係選手が5位までを占め、6位には地元の渡辺なつみ(長岡高)が55秒24で入り、19年ぶりに新潟県高校記録を0.12秒更新した。同高の顧問は志田哲也先生。筑波大OBで9年前に走幅跳で7m95を跳んでいるジャンパーだ。
男子400 mは堀籠佳宏(日体大院)と井上洋佑(筑波大)の世界選手権代表コンビが欠場。03年世界選手権、04年アテネ五輪代表だった山口有希(東海大)が46秒42で圧勝した。今季は春先の故障を考慮して日本選手権を欠場したが、山口も8月のユニバーシアード組。銅メダルを獲得してシーズン序盤の遅れを取り戻した。だが、9月は教育実習で練習が中断。シーズン後半で44秒台を狙う、という態勢ではない。
「10月3日に大学に戻って、10日間ほど走ってこの大会。国体で頑張れと言われているので、今日は調整なしで46秒台中盤を考えていました。(タイム的には予定通りだが)走りは微妙ですね。国体はシーズンの締めくくりですから、シーズンベスト(ユニバーの46秒15)を出したい。最後に何でもいいから感じて、冬期練習や来年につながるようにしたいですね」
今季、金丸祐三(大阪高)との直接対決はなかったが、その活躍には刺激を受けている。今シーズンの男子400 mの印象を次のように話している。
「金丸君が速くて、今まで400 mを引っ張ってきた人たちが後れています。そういった選手たちには、来年に向けての準備期間という印象ですが、来年、金丸君がどのくらい速くなるか。彼を見ていて、すごいなあと感じましたが、悔しい気持ちもありました。来年、負けないようにしたい」
強烈なライバル意識をぶつけるというよりも、淡々とした話しぶりである。それが、山口のキャラクターなのだろう。決して、思いが小さいというわけではなさそうだ。
ちなみに、今大会が東海大のユニフォームで走る最後の大会。自己記録は大学2年時にマークした45秒18でジュニア日本記録であるが、国体だったため京都のユニフォーム。東海大のユニフォームでは、昨年8月に富士北麓で出した45秒20。標高1000m以下では昨年5月の国際グランプリ大阪で45秒31。ユニフォームはともかく、大学4年間で45秒台を最も多くマークした選手だろう。
フィールド編
走高跳は今季最高レベル
江戸が東海大ユニフォームでのラストジャンプ
フィールドは4種目が行われた。男子やり投は全日本実業団で74m48を投げ、村上幸史(スズキ)に13cm差と迫った室永豊文(相模原クラブ)が注目されたが、68m76にとどまった。女子棒高跳の錦織育子(三慶サービスAC)と中野真実(三観陸協)も4m05と、期待を下回る結果に(錦織が1位)。
良かったのは女子円盤投。室伏由佳(ミズノ)が4投目に55m26をマークした。アジア選手権で出した56m23には届かなかったが、円盤投では腰痛の影響を最小限に抑え、自己の日本記録(56m84)更新も期待できる投てきを見せている。
そして、シーズンベストを出したのが男子走高跳優勝の江戸祥彦(東海大4年)である。2m20を1回目に成功し、3回目のクリアだった醍醐直幸(東京陸協)を抑えた。実は今季、2m20をクリアしていたのは世界選手権代表だった醍醐だけ。つまり、2m20は今季日本2位の記録であり、2m20を2人が越えた試合は今季初めてということになる。久保田聡(順大ク)と内田剛弘(大社高陸紫会)も2m15をクリアし、今季では最もハイレベルの試合となった(この4人が日本選手権の1〜4位)。
昨年、2m20を3試合でマークした江戸だが、今季は6月の日本選手権が2m18で、優勝と同記録の3位。7月の日本インカレは優勝したが2m15の記録。
「踏切脚の踵の痛みをかばうような動きになっていました」
と、シーズン前半に2m20をクリアできなかった理由を説明する。
「日本インカレ後は大きな試合がなかったので、思い切って休養しました。その間に踵も治り、いい具合に絞れてきました。ハイジャンをやるのにバランスのいい筋肉と体重になったのだと思います」
思い切って休んだ期間には、山口有希と同様に教育実習もこなしている。東アジア大会に合わせているが、これも山口と同じで今大会が東海大のユニフォームを着ての最後の試合。しかし、世界選手権・オリンピック代表の山口が実業団で競技を続けるのが確定しているのに対し、江戸は就職先が未定。
「(実業団のような)環境を欲張れる立場ではありません。仕事をしながらでも、陸上を続けたいですね」
結果を出せば、東海大の先輩である醍醐のように、陸連の奨学金を受けることも可能となる。
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