2005/6/3 日本選手権
全種目三行記事と懺悔・2日目

小林と金丸が高校新!!
女子1500m4分14秒55
男子400 m45秒69

連勝選手は記録的に低調

 9種目の決勝が行われ、優勝者のうち今季A標準を突破している男子200 mの高平慎士(順大)が世界選手権代表に内定した
 1日目に続き連勝記録を伸ばした選手が多かった(決勝9種目中6種目)。男子200 mの高平、走幅跳の寺野伸一(奥アンツーカ)、十種競技の田中宏昌(モンテローザ)、女子では200 mの信岡沙希重(ミズノ)、棒高跳の近藤高代(長谷川体育施設)、ハンマー投の室伏由佳(ミズノ)。しかし記録的には、自己記録を7458点と19点更新(日本歴代10位は変わらず)した田中以外はいまひとつの種目が続いた。
 むしろ、初優勝の選手の方が記録的には収穫だった。男子800 mは下平芳弘(早大)が1分48秒54の自己新(学生歴代9位)、女子1500mは小林祐梨子(須磨学園高)が4分14秒55と高校新(日本歴代14位)をマークした。また、男子400 mでは予選1組1位の金丸祐三(大阪高)が45秒69と、自己の高校記録を更新した。
 優勝記録が7m78と低調だった走幅跳の寺野が「言い訳はしません。ダメだっただけです」と言葉少な。コーチの井上悟氏は「オリンピック後で休みたかった時期。練習がそれほどできていないのに、試合が近づくと負けたくなくて、詰め込んだ練習をしてケガをしてしまった」と説明した。まったく同じではないだろうが、似たようなケースで低調となる種目も多いように感じた。


男子200 m
 高平慎士(順大)が前半でコーナリングでリード。吉野達郎(RaSport)も食い下がっていたが、最後の20〜30mで力つきた。前半は宮崎久(ビケンテクノ)も2人を追っていたが、終盤で大前祐介(富士通)が3位争いを制した。末續慎吾(ミズノ)が欠場。「ほとんど優勝候補」に単独で予想したのが高平だったので、予想通りの結果に。
 高平は今季A標準を切っているため、この優勝で世界選手権代表に内定。2位の吉野と3位の大前の同学年コンビは「どこかでA標準を切りたい」と、異口同音に話した。

男子800 m
 優勝予想した笹野浩志(富士通)が、東日本実業団同様に1周目をリードした梁田昭夫(AS千葉)を上手くフォローし、500mでトップに。バックストレートで下平芳弘(早大)も上手くポジションを上げる。残り200 mを過ぎて森祥紀(自体学)が外側から笹野に並びかけたが前に出られれず、直線でスパートした下平が最後は圧倒的な強さを見せた。中距離選手には珍しい足の運び(切り返しが速い)が印象的。
 笹野は東日本実業団での負傷が影響し、レース後もなかなか立ち上がれない状態。こちらは負傷のことを知らなかったとはいえ、レース前に下平の優勢を予想していた中距離コーチ陣はさすが。

男子5000m
 4000mを過ぎても集団から誰も遅れないというスローペース。残り300mでスパートした前田貴史(トヨタ紡織)を瀬戸智弘(カネボウ)が残り150mでトップに。そこで瀬戸に差を広げられた中村悠希(カネボウ)が、直線で瀬戸を追い込み、同タイムでフィニッシュ。優勝者予想した瀬戸が、必死で胸を突き出して先着した。
「もう意地でしたね。中村が上手く胸を出していたら、どうだったかわかりません。5000mは1万mへの刺激として出場しましたが、1万mも勝って力を見せつけたい。高岡(寿成・カネボウ)さんもやったことのない2冠を達成したいですね」

男子走幅跳
 優勝予想した寺野伸一(奥アンツーカ)が4連勝を達成したが、記録は7m78(+0.8)と低調。2位の森長正樹(ゴールドウイン)から8位の志鎌秀昭(筑波大)までが、10cm差という大混戦だった。「日本選手権優勝にしては低い記録になってしまいました。失敗というか、つねに違うジャンプになってしまった」と寺野。

男子十種競技
 優勝予想した田中宏昌(モンテローザ)が7477点と、自己記録を19点更新して2連勝。大島雄治(筑波大)が7326点と自己記録の健闘で、7種目目の円盤投終了時点まではリードしていた。田中が得意の8種目目の棒高跳で4m90を跳んで逆転したが、苦戦の原因は大島の健闘とともに、田中が走高跳で1m69と失敗した点にあった。
「走高跳で150点ロスしてしまいました。負けなくてよかった、というのが一番感じていることです」

女子200 m
 優勝予想した信岡沙希重(ミズノ)が23秒64(+0.5)で2連勝。自己の日本記録から0.31秒差なので悪くはないが、本人はB標準の23秒13、さらには22秒台も狙っていただけに、落胆した様子。「スピードが200 mに生かせなかった」と信岡。
 2位から5位までを学生勢が占め、昨年のインターハイは準決勝落ちした和田麻希(龍谷大)が4位に入り、昨年のインターハイ1年生優勝の河野千波(東京学館浦安高)は6位に。地区インカレが5月にある学生の方が有利かもしれないが。

女子1500m
 小林祐梨子(須磨学園高)が残り1周のホームストレートからトップを行く桑城奈苗(アコム)に並びかけ、1200mで強烈なペースアップ。バックストレートは宗由香利(旭化成)も追走できたが、残り200 mから徐々に引き離されてしまった。4分14秒55は自身の高校記録4分16秒61だけでなく、高体連非登録だった市川良子の4分14秒69も上回った。
 優勝予想した宗は2位。宗の出来が悪かったのではなく、小林が強かった。高校生が一般の試合に出た場合、経験不足が影響すると考えていたが、この日の小林や金丸のように、強い選手は強い。経験がない方が、思い切って行ける場合もあるのだろうか(特にペース配分など)。
 3位には早狩実紀(京都光華AC)が入り、3000mSCでの世界選手権代表入りにアピールした形に。
400 m 桑城1分06秒2(1分06秒2)
800 m 桑城2分17秒2(1分11秒0)
1000m 桑城2分54秒2
    ※1010mラインでの計測から推定
1100m 小林3分12秒3       残り400 m1分02秒3
1200m 小林3分28秒3(1分11秒1)
1300m 小林3分43秒3       残り200 m31秒3
1500m 小林4分14秒55

小林コメント
「卒業までには破りたいと思っていた記録。今日の経験を大切にしたいと思える大会になりました。ラスト1周のスピードには自信がありましたし、いつも以上の確信を持って前に出られました。いつもは1位、1位と言われるレースでプレッシャーがありましたが、今日は挑戦者で勝っても負けてもいい。走りやすかったです。残り400 m地点でのタイムは見ませんでした。楽しみにとっておいたかっこうです」

女子棒高跳
 近藤高代(長谷川体育施設)、錦織育子(三慶サービスAC)とも4m00から跳び始めたが、2人とも2回失敗。どうなることかとハラハラさせたが、2人とも3回目に成功。4m10を1回目にクリアした近藤が2連勝を達成。シーズン前半の好調さから優勝者予想した錦織は2位。日本選手権に強い(今回で4回目の優勝)近藤の集中力を読み切れなかった。

女子ハンマー投
 優勝予想した室伏由佳(ミズノ)が2連勝。しかし、腰痛と戦いながらの試技で、記録は61m61にとどまった。大橋千里(SP−HOPE)が60m40と、日本人4人目の60mスローワーに。
「最後(61m61)は強引に振り切りましたが、“腰抜け”の投げでした。お腹や腰に力を入れにくい状態です。(転倒した4回目は)本来は腕を使わない方がいいのですが、腹部と腰に力が入らないのでその分、腕を使ったのですが、脚がついていかなくて、気づいたら空を見ていました」


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