2005/10/26 国体4日目
大橋がシーズン後半の不調を“強引に”克服
「勝負弱いと言われていましたから、勝てたことがよかった」

 大橋祐二(埼玉・筑波大)は1台目のハードルを激しく蹴り倒してしまった。成年男子110 mH決勝でのこと。世界選手権代表を狙って、13秒55のA標準に挑戦した7月の日本インカレと同じだった。
「(当たった部分は)足の裏だったのか、ハムストリングだったのかよくわかりませんが、ぶつけ方はひどかったかもしれません。でも、バランスの崩れ方が今日の方がよかった。上手く踏み切れてスピードに乗れていたからだと思います。日本インカレでは踵から接地することになり、ブレーキがかかってしまいました。それで、3台目もぶつけてしまった。前半で2台ぶつけたらアウトです。その点、今日は1台だけ。中盤でトップに並んだのですから、他のみんなもミスが多かったのでしょう。一番最初にミスをした僕が、立て直しも早くにやり終えたということだと思います」

 4月の織田記念で谷川聡(チームミズノアスレティック)と内藤真人(ミズノ)の2強を破ったが、2人が世界選手権A標準を突破していたのに対し、大橋はB標準のみ。日本選手権では2強の後塵を拝した。6月末に13秒57とA標準に0.02秒と迫り、自信を持って臨んだ7月の日本インカレ。記録を狙うため1台目を積極的に低く入ったが、前述のように致命的なミスを犯してしまった。記録を出せなかった上に4位と敗れ、世界選手権だけでなくユニバーシアード代表の座も逃した。
「日本インカレの失敗ですべてが狂っていきました。凹まなかった、と言ったら嘘になります」
 世界選手権とユニバーシアードを逃したのだからと、動きの変更に取り組もうとしたこともあった。だが、体調自体の上がり方が不十分で、完成させることはできなかった。今大会に臨む調子もいまひとつで、予選は14秒04(−0.4)で野元秀樹(鹿児島・福岡大)に後れをとった。
「感覚的なところですが、予選は上向きのハードリングでした。決勝ではそれを、下向きに修正することを意識したんです。本当は倒れ込んで、ボールが弾むような動きをしたかったのですが、それができる体調ではなく、無理やり押し潰すようなイメージで修正しました。邪道ともいえるやり方ですが、即席の効果は出たということです」
 決勝は中盤で並んで終盤で抜け出た。14秒00(−1.3)で、5位の谷川までが0.06秒差という混戦を制することに成功した。
「勝負弱いと言われていましたから、勝てたことがよかった。日本インカレからすべてが狂いだしていたので、きっかけが欲しかったんです。来年につながります」
 スタンドの応援団に満面の笑顔を向けた大橋だった。

 内藤と日本選手権3位の田野中輔(富士通)が出場しなかった大会。関係者間では日本記録保持者である谷川の優勝が予想されていた。予選2組では13秒95(−0.8)で2位の合戸隆(早大)に0.45秒差。予選全体で最高タイムだったし、風も最も悪い組だった(110 mHの風の影響は微妙な部分があるが)。決勝は正面からレースを見ていたので断定はできないが、1台目はリードしたように見えた。
「4・6・8台目をぶつけました。すごい追い風が吹いたら別ですが、今は“勝てるくらい”の走りしかできない状態です」
 これまで、谷川がハードルに接触したのは抜き脚の踝が多かったが、この日はリード脚の踵だったという。具体的には明かさないが、何か新しいことに取り組んでいるのは確かのようだ。


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