2005/10/24 国体2日目
成迫が48秒09!!
為末の48秒10を上回る
今季世界6位日本最高
パフォーマンス日本歴代2位にも
「出ませんでしたぁ」

 レースから引き揚げてきた成迫健児(筑波大)の第一声は、「出ませんでしたぁ」だった。成年男子400 mHで48秒09と大幅に自己ベストを更新し、今季世界6位のタイムで走ったにもかかわらず、満足できなかったのだ。
「日本記録を狙っていました。昨日の予選のタイム(49秒19)から1.2〜1.3秒は上げられる手応えがあったんです。予選はラスト150mを抜いたので、そこで1秒くらい上げて、前半でも0.2〜0.3秒を上げられたらと、考えていました」
 予選と決勝のタッチダウンタイムの比較は以下の通り。
1台目 5.91 5.91 6.03 6.03 5.95 5.95 5.83 5.83
2台目 9.55 3.64 9.84 3.81 9.69 3.74 9.51 3.68
3台目 13.34 3.79 13.69 3.85 13.47 3.78 13.28 3.77
4台目 17.17 3.83 17.47 3.78 17.34 3.87 17.14 3.86
5台目 21.12 3.95 21.31 3.84 21.22 3.88 21.10 3.96
6台目 25.18 4.06 25.35 4.04 25.38 4.16 25.15 4.05
7台目 29.44 4.26 29.91 4.56 29.71 4.33 29.61 4.46
8台目 33.72 4.28 34.33 4.42 34.07 4.36 34.07 4.46
9台目 38.15 4.43 38.96 4.63 38.63 4.56 38.58 4.51
10台目 42.73 4.58 43.76 4.80 43.15 4.52 43.26 4.68
フィニッシュ 48.09 5.36 49.19 5.43 48.35 5.20 48.71 5.45
05国体決勝 05国体予選 05日本インカレ 05大阪GP
すべて寺田による手動計時
 6台目(220m)で区切ると予選は25秒35と23秒84。決勝は25秒18と22秒91(すべて手動計時)。前半は0.17秒、後半は0.93秒アップしている。ほんのちょっとずつ、想定を下回ったわけである。
「前半のストライドがちょっと、間延びしてしまいました。もっと、ピッチで刻む感じで行かないといけません」

 しかし、タイムが世界選手権で為末大(APF)が出した48秒10を上回った話題になると、表情が少し緩んだ。苅部俊二と山崎一彦という、一時代を築いた2人の大先輩の記録を上回り、日本歴代2位でもある。
「為末さんのシーズンベストを抜いたのは正直、嬉しいですね。今季日本1位というのは。でも、記録を出した条件が違いますから」
 世界選手権の決勝という舞台と、負ける心配の少ない国内レースでは、プレッシャーのかかり方が違う。まして、世界選手権は大雨という劣悪な条件で行われていたのだ。

 とはいえ、今季の成迫の活躍は素晴らしい。国内では48秒35(7月の日本インカレ)、48秒40(9月のスーパー陸上)、そして48秒09と48秒台前半を出し、5月の国際グランプリ大阪では為末を3年ぶりに破った日本選手となった。国際大会も、初の“世界一”を決める舞台となった世界選手権で準決勝に進み、ユニバーシアードでは48秒台で金メダルを獲得した。「さすがに(試合が続き)国体は精神的にも体力的にもきつかった」と言うが、7月の日本インカレの際にも同様のことを言っていた。どうやら今は、多少の疲れを上回る成長段階にあるということだろう。
「宮下(憲)先生とは今季の課題をに、47秒台に入るきっかけをつかむことだと話していました。48秒台中盤を安定して出していけば、かかったときに47秒台は出ると。世界と戦うには47秒台が必要です。5本の指に入れますから」
 そのための技術的な課題は次のように考えている。
「ハードリングでこう(と両肩を触る)ブレたり、着地でブレーキをかけたり、バランスを崩したりします。その対策として、体幹づくりを心掛けています。去年とか、サーキットトレーニングなどをよくやるようになりました」

 ただ、決勝のタッチダウンタイムから1つ、明るい材料が読みとれる。
「(これまでの傾向で)14歩に切り換える7台目で、休むっていうわけじゃありませんが、大きく減速していました。そこで休んで、ラストを粘る癖がついている感じです。世界的に見た場合も、そこで後れをとるんです」
 国体の予選は多少極端だが、全力を出すレースでもその傾向があった。そこを、今回は6台目の4秒06から7台目の4秒26と、それほど落とさずに行けたのである。それでもなお、成迫はそこの改善に意欲を見せる。
「来年は8台目まで13歩で行くことを考えています。今も14歩の2台がすごく詰まってしまっているんです。7・8台目と13歩で行けば、0.1〜0.2秒は縮められる。はまれば47秒5とかも」
 予選終了後に成迫が47秒台を口にしたとき、さすがにそこまでは苦しいのではないか、48秒3くらいではないかと予想した。だが、成迫はこちらの予想を上回った。47秒5というのは世界のトップレベル。簡単に出せるタイムではないが、そういった意識面の常識が足かせとなることもある。大きな目標にどんどん挑んで欲しい選手である。


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