2005/12/18 全日本実業団対抗女子駅伝
三井住友海上が2度目の挑戦で3連覇達成
選手個々に3連勝への“思い”
地区予選終了時点では故障者が多かったこともあり、劣勢が予想されていた三井住友海上。だが、本大会までの1カ月半の間にきっちりと立て直し(地区予選前から立て直しへの準備は始まっていたと思われるが)、レース前は五分五分と言われていた。
そして、蓋を開けてみれば、ライバル京セラの1区での出遅れもあり、レースの主導権はつねに三井住友海上が握っていた。昨年は2区の石山しおりでトップに立って逃げ切ったが、今回も2区の橋本歩で2位に進出。前日、鈴木秀夫監督は「去年と同じ感じでレースを進められるのでは」と話していたが、その予想に近い展開に。4区の石山が、前年同様トップに立った。
指揮官が青写真を描いた通りのレースができたことの背景には、まずは、トレーニングが上手く進められたことが挙げられる。鈴木監督の前述のコメントには「練習でやってきたことを出せれば」という前置きがあった。そして、練習でやって来たことを本番できっちり出せたのは、選手たちの3連覇への強い思いがあったから。
レース後のコメントに、各選手の勝利への思いが垣間見られた。
1区・高山典子
入社2年目の高山は昨年、東日本予選も全国大会本番も、出番がなかった。今年の東日本予選で初めて実業団駅伝に出場したが、1区で区間9位。5区までホクレンにリードを許す一因をつくってしまった。
「(強い選手の多い三井住友海上で)選手として走ることができ、優勝ができて嬉しいです。東日本は後ろの選手が、楽に走れない状況をつくってしまいました。今日は少しでも楽に走ってもらえればと、最初から積極的に行きましたし、粘ることもできました」
2区・橋本歩
3年前の02年大会も、三井住友海上は3連覇がかかっていた。しかし、1区の橋本が区間16位と出遅れ、第一生命に敗れる一因となった。橋本は当時、入社1年目。東日本予選の1区では周囲の予想を上回る独走劇で、区間1位の快走を見せた。だが、東日本予選後に左足アキレス腱を故障したのが響いた。
翌03年大会は1区で区間賞と名誉挽回したが、昨年は2連勝のメンバーに入れなかった。
「去年、走れなかったので、今年は3連勝のメンバーになれてよかったです。前回の3連勝がかかっていたとき、自分のところで迷惑をかけて優勝ができませんでした。ですから、今回の3連勝はすごく嬉しいんです」
4区・石山しおり
石山の入社1年目が3連勝への最初の年だったが、当時はまだ5000mが16分10秒9と、メンバー入りにはほど遠い選手だった。しかし、2年目の昨年は15分34秒52と急成長。駅伝では2区で、区間新の走りでトップに立った。しかし、今年の東日本予選は出場できなかった。
「東日本は故障で間に合わなかったので、全日本は絶対に走るんだという気持ちが強かった。3連勝のメンバーにもなれて、すごく嬉しいです。でも、狙っていた区間新が出せずに残念です」
もしも目標通りの区間新が出せていたら、出場2回とはいえ、区間新率100%という快挙だった。しかし今回も、区間賞率100%とともに、“トップに立つ率”100%は継続している。今後は、大平美樹のように出場区間のグレードをアップできるかどうか。
6区・大山美樹
入社4年目で4回連続のアンカー。1年目は区間タイ記録の好走も、30秒先に中継所を出た第一生命・安藤美由紀に1秒負け、連勝ストップの瞬間の“当事者”となってしまった。2・3年目は連続で京セラとのアンカー勝負の当事者に。ともに競り勝ったが、特に昨年は、13秒差を詰められて並走に持ち込まれる際どい展開。アンカーの役目を十二分にまっとうした2年間だった。
それに対して今回は2位に1分28秒差と、初めてセーフティーリードといえる状況でタスキを受け取った。
「アンカー勝負は今年も覚悟していましたが、ダントツにリードしている最高の形でタスキを受けました。みんなにありがとう、と思って走りました」
過去3年間に背負ったものの重さを思えば、誰も大山に「1人だけ楽をしていいなぁ」とは言わないだろう。その分、次回のマラソンなどで頑張るだろうし。
2時間13分55秒は優勝タイムとしては3番目(2位以下も含めると4番目)だが、今回の悪コンディションを考えると、大会新に匹敵する価値がある。鈴木監督はタイムについて、次のように話した。
「(総合)タイムはあまり気にしていません。各区間で練習の結果を出してくれれば、それなりのタイムにはなる。今回のように各選手が優勝したいという気持ちを持ってくれれば、記録もまだまだ出る。2時間12分台も出せるように頑張りたい」
先ほど、“3連覇への強い思い”と書いたが、“強い思い”なら他のチームにもあった。言葉で表現するのは難しいが、“しっかりした思い”とでも言うべきものが、三井住友海上の選手たちにはあったように感じられた。
※渋井、大平2選手については別記事にする予定。
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