2005/12/4 福岡国際マラソン
国近と野田は中盤で失速
“力不足”を強調する2人だが、後れたあとの走りに小さな手応えも


 2年前の福岡で自己最高を出していた国近友昭(エスビー食品)と野田道胤(ホンダ)の2人は、「そのときと同じ」(国近)と「そのとき以上」(野田)の練習ができていたとレース前に話していた。最後まで集団に残った日本人となり、今大会の日本人選手のなかでは力のあったことを示したが、野田は19km手前で、国近も21km手前で集団から後れた。
 野田は後れた数km後に「寒さがこたえた」と言う。E・ワイナイナ(コニカミノルタ)も、寒さで動かなくなったと話している。集団のペースが15kmから20kmまで、14分37秒と速かったのも、明らかに影響した。国近は「風もあったしペースメイクもちゃんとしていなかった」と言う。後れなかった藤田も「20km付近がきつかった」と。

 国近と野田の2人は、別に言い訳をしたわけではない。しきりに、優勝争いのできなかった自身の非力を反省していた。2時間13分49秒で6位(日本人2位)という成績に対し「微妙な結果だが?」という記者の問いかけがあったが、国近は即座に否定した。
「微妙どころか、悪い結果です。残念というか、力がないですね。練習も調整も2年前と同じくらいにできて、体調も良かった。(予定外のペース変化にも)着けない僕が力不足なんです。あのくらい対応できないようでは、どうしようもありません。対応できる練習もしていたつもりです。練習ができていなかったら納得するしかありませんが、今回はある程度練習ができていたので、結果が出るだろうと思っていました。それなのに、まったく勝負ができなくて。ダメなときは、本当にダメですね。呼吸よりも、脚が重かった。練習ではもっと追い込んで、きつい中でやっているんですけど。速いペースは得意のはずなんです。対応が下手なのか、力がないのか」

 自身で「力がない」を繰り返しているうちに、ネガティブ一方に考えるのはよくないと、気づいたようだ。
「力がないことは、ないと思うんです。2年前は結果を出しています。マラソンはマグレじゃ走れないですから。今回ダメで、全てを否定するのではなく、2年前に走れたことを踏まえ、考えを進めないと。20kmで離れても、6番で帰って来られたのは収穫でした。この気候だと棄権したり、2時間20分とか、かかってしまいそうな条件でした。悪いなりに2時間13分台で走れました。野田君に抜かれたときも、そのままズルズル行くのでなく、ペースダウンし続けないよう我慢できました。土台ができているんだな、と判断できます。それが唯一の収穫ですね」

 2時間20分30秒で14位の野田の方も、途中棄権の昨年のベルリンや、2時間28分台だった今年のびわ湖よりは、ペースダウンの仕方がよかったという。ただ、国近を一度抜き去ったとき、調子に乗って行き過ぎた部分があったと反省する。「あそこで一緒に行っていれば違っていたかもしれない」と。
 しかし、国近に引き離された後の走りには、「収穫が多くあった」と言う。
「これまでは、後れたあとはただ帰ってくるだけ。切れっぱなしというか、抜かれても“どうぞ行ってくれ”という走りしかできませんでした。それが今回は、後れたあとも冷静に自分を見られて、目的が最後まで薄れなかった。新たな面をはっきりと意識でき、次はあれをしよう、これをしようと、次への意欲になりました」

 まれに見る悪天候に加え、日本のトップ選手の参加があまりに少なかった。比較する対象が少なすぎるので、評価が難しいところ。確かに惨敗だった2人だが、本人たちの感覚に次につながるものがあったのが救いだった。


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