2005/10/9 シカゴ・マラソン
2時間8分台を狙いにくかった今年のシカゴ
現状打破に試行錯誤の渡辺

 2時間13分28秒で13位。渡辺真一(山陽特殊製鋼)のシカゴは、現在、彼が置かれている状況を端的に表していた。それはまず、第1集団につけなかったことだ。

 1位から10位まではすべてケニア選手で、第1集団でレースを進めた選手たち。中間点を1時間2分台で通過する予定だったが(実際は1時間03分22秒)、渡辺がつくにはリスクが大きすぎるペースだった。11位のオルメド(メキシコ)、12位のカルペッパー(米)、13位の渡辺が第2集団だった。
 もう少し詳しく言うと、渡辺とカルペッパーは5kmでペースアップした第1集団から離れ、2時間8分台を目指すペースで走った。そこに、第1集団から後れたオルメドが30km手前で吸収される。男子は最初の5kmが15分34秒 今年もいい加減だったペースメーカーの記事にも書いたが、渡辺はカルペッパーやオルメドと交替で引っ張り合い、ペースが落ちるのを防ごうとした。
 しかし、今大会の後半は必ずしも、記録を狙うのに適した条件ではなかったようだ。5位のイヴーティ(ケニア)までは2時間7分台。ここまでの選手は力があって、踏みとどまることができた、と見るべきだろう。6位以下は大きくタイムが落ち込んでいる。カルペッパーにいたっては、今大会のアメリカ選手の目玉だった。1万mが27分33秒93と日本記録を上回る白人選手で、2時間08分47秒の“ハヌーシを除くアメリカ最高記録”を出す予定だったのだ。
 第1集団で後れた選手が2時間9〜12分台で、第2集団のトップのオルメドが2時間12分台。これでは、渡辺が自己新記録を出すのは無理だった。

 だが、仮に今回の記録より2〜3分良かったとしても、2時間10〜11分台でしかない。そこが2つめの、渡辺の現状を表している部分だった。
「去年、2時間9分台がポンポンっと出ましたが(シカゴ出場日本選手+ジェンガのマラソン全戦績)、自分なりに頭打ちになっているところも感じました。今年1年は失敗してもいいからと監督とも話し合って、新しいことを試しています」
 具体的には、トレーニングを少し変更した。調整に入る前のメニューを、スピードを上げて練習量を減らしたという。
「今年のびわ湖で20kmから25kmが14分台に上がったところで、対応できなかった。その対策を考えてのことですが、今回、結果に結びつけられませんでした。調整段階でも、設定タイム通りの練習はやっていても、どこか行けそうな雰囲気になりきれなかった。次の段階に進むには、これを越えないといけません」
 渡辺にとって、現状打破への課題が浮き彫りになったレースだったと言えそうだ。

 しかし、収穫がなかったわけでもない。
「第1集団から離れたときにリズムが崩れかかりましたが、修正して最後まで維持できました。そんなに速いペースではありませんでしたが、離れそうになりながらも粘れたと思います。3人で交替して走った後半は、レースを楽しめました」
 こういった感覚的な部分の収穫は、その後につながることもある。逆に、前述の調整段階で上がってこなかったという感覚的なところは、反省材料にできる。11月で29歳(油谷繁や藤田敦史の学年)。いきなり1万mの記録が1分も上がることはないだろう(30秒くらいなら可能かもしれないが)。レース経験を生かすことや、練習の組み立てで勝負をする段階だ。マラソンなら、それで2〜3分の記録短縮ができる。


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